インタビュー

アルツハイマー病の症状-経過とともに進行する

アルツハイマー病の症状-経過とともに進行する
山田 正仁 先生

国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 院長

山田 正仁 先生

この記事の最終更新は2016年01月18日です。

アルツハイマー病と聞くと、「家族の顔がわからなくなる・何もできなくなる」というイメージばかりが先行してしまいがちです。しかしアルツハイマー病は徐々に進行するものであり、突然そのような症状があらわれるということはありません。本記事では、経過と重症度ごとの症状について九段坂病院 院長 山田 正仁(やまだ まさひと)先生にお話しいただきました。

アルツハイマー病は徐々に進行します。アルツハイマー病は発症後、軽度認知障害(MCI・正常でも認知症でもない中間状態)を経て認知症になり、認知症は軽度、中等度、重度(高度)の段階に分類されます。

近時記憶障害(少し前の出来事を思い出せない)のみの段階です。日常生活にはほぼ支障がありません。

健忘型の軽度認知障害から始まります。近時記憶障害が目立つようになり(数分前に話したことやエピソードを思いだせない)、さらに時間に関する見当識の障害(日付けを思い出せない)や、実行機能障害(段取りをつけて物事を実施できない)、判断力の障害などが出現します。ほかにも自発性減退、うつ気分がみられ、物盗られ妄想が目立つ場合もあります。日常生活に支障がでてくるかどうかが軽度認知障害との境目であり、日常生活に支障がみられます。

中等度になると認知機能全体の低下が著しくなり、時間ばかりでなく場所に関する見当識の障害が現れます。さまざまな高次脳機能の障害(大脳巣症状)がみられ、具体的には次のようなものが現れます。

①失語

  • 語健忘(物の一般名称がうまくでてこない)
  • 錯語(言い間違いや言おうとしていない言葉を言ってしまう)
  • 反響言語(相手の話しかけや問いかけに対して、適切に答えることはなく、おうむ返しにそのまま発言してしまう)
  • 語間代(「こんにちわちわちわ」と言葉の終わりの音節を反復する​)

②失行(運動器に異常がないにもかかわらず、身につけた一連の動作を行う機能が低下すること) 

  • 構成失行
  • 観念運動失行
  • 観念失行
  • 着衣失行

③失認(感覚器に異常がないにもかかわらず、目や鼻などの五感で周りの状況を把握することが低下すること)

  • 視空間失認など

④計算力低下

また、妄想・徘徊・夕暮れ症候群(夕方になると落ち着かなくなり、自宅にいても自分の家に帰りたいと言う)・食行動の異常=何でも食べようとする(口運び傾向・oral tendency)など、認知症の行動・心理症状(behavioral and psychiatric symptoms of dementia: BPSD)*がめだつようになります。これらの症状の有無や程度には個人差があります。中等度の段階ではかなりの手助けが必要になってきます。

重度の認知障害があらわれます。人物に関する見当識障害も出現し、家族などの親しい人間も忘れてしまうことがあります。最終的には何もできない状態になり、全面的な介護が必要となり寝たきりとなります。


*認知症の行動・心理症状(BPSD)について:たとえば、記憶障害によってどこかに置いた財布の存在を忘れてしまい、盗まれたと妄想してしまうことがあります。これは「物盗られ妄想」といい、最も身近にいてお世話をしているご家族(お嫁さんなど)がターゲットにされることが多いのです。この妄想により、ご家族に対して暴言を吐いてしまいます。このような記憶障害や見当識障害などの中核症状に付随するBPSDが起こらないようにすることが大切なのです。ご家族がアルツハイマー病についての知識をもち、デイケアなどの社会的資源を利用し、ご家族が息抜きして余裕をもって認知症の方と接することができるよう環境を整えます。早い段階で正確に診断し環境を整え、BPSDを予防するようにすることが重要です。

アルツハイマー病の進行

アルツハイマー型認知症では前述した症状が約9割であり典型的なものといえるでしょう。しかし、1割のアルツハイマー型認知症に以下のような非典型の症状があります。

  1. 前頭葉の変性が強く行動異常がめだつ例(frontal variant)
  2. 後方大脳皮質の萎縮と視空間機能の異常がめだつ例(posterior cortical atrophy)
  3. 言語障害のみが前景に立つ例など(多くの場合、進行に伴い記憶障害もめだつようになります。)

このように、臨床症状だけでは非典型的なアルツハイマー型認知症を正確に診断することが難しい場合があります。しかし、アルツハイマー病の検査法の進歩により、非典型例でもアルツハイマー病と診断できるようになってきました。(参照:「アルツハイマー病の検査と診断」

受診について相談する
  • 国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 院長

    山田 正仁 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が10件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「アルツハイマー型認知症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    アルツハイマー型認知症

    Icon unfold more
    1問アンケート
    Q1.あなたまたはご家族が、将来認知症になることを不安に思いますか?
    すぐに取り組める認知症の対策予防など
    健康に役立つ情報をお届けします。
    確認用のメールをご確認ください
    上記アドレスに確認用のメールを送信しました。
    メールに記載されたURLから
    登録にお進みください。
    ご登録ありがとうございます
    認知症に関連する情報を
    優先的にお届けします