インタビュー

認知症の診断と検査方法

認知症の診断と検査方法
繁田 雅弘 先生

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授、東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科 診療部長

繁田 雅弘 先生

この記事の最終更新は2016年03月26日です。

社会全体の高齢化にともなって認知症に対する関心が高まり、書籍やネットなどさまざまなメディアでも、簡易診断用のチェックリストなどを目にする機会が増えています。実際の診療では、どのような視点から認知症の診断を行なっているのでしょうか。首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科教授の繁田雅弘先生にお話をうかがいました。

もの忘れは認知症を診断するうえで重要な指標ですが、他の病気―たとえば、長期間のアルコール飲用で前頭葉の萎縮(いしゅく)が起こった場合にも、もの忘れ(健忘)が際立って現れる場合があります。そこで、物忘れ以外の失敗があるかどうかということが判断の目安になります。(ただし最近は、診断基準上、物忘れだけでも診断が可能になりました)

  • 会話がスムーズにいかなくなった(失語)
  • 家事や仕事の失敗が増えた(実行機能障害)

このような症状がある場合には、より認知症の可能性が高いとみることができます。

知能指数も元々個人差が大きいものですので、テストの成績(絶対値)で評価できるものではありません。年々進んでいるかどうか、進行のスピードが重要です。たとえば、人一倍優れた記憶力の持ち主であれば、認知症になってから何年か経過しても普通以上の記憶力を持っていることもあります。たとえテストの点数が高得点だとしても、以前なら即座に答えられるような問題を解くのに時間がかかるようになっており、認知症であるとの診断がなされた人もいます。処理能力のキャパシティが落ちてくるというのは、認知症を疑う要因になるのです。

認知症を診断する際には、悪くなっていくスピードが老化を上回っているかどうかという視点で考えます。10年、15年と長い期間をかけてゆっくりとしたペースで落ちているのであれば、それは老化であるととらえることができますが、その変化が1年、2年という単位で起こっているのならば認知症であるということです。落ち方の角度、勾配(こうばい)の問題であると言い換えてもいいでしょう。

ひと口に認知症と言っても、次のようにいつかの異なる疾患があり、それぞれ原因となる脳の障害のされ方が違っています。

認知症の疑いがある、あるいは軽度の認知症ではないかと考えられる段階(軽度認知障害)では、はっきりとした鑑別診断が下せないことが多く、経過をみていく必要があります。症状が軽度であるだけに、どちらとも言いがたい場合があるのです。

しかし病名や診断名がつかなかったからといって、放っておいてもよいということではありません。半年ごと、あるいは年1回など、定期的に医療機関に相談をすることが大切です。認知症が疑われる、もしくは初期・軽度の認知症という早い段階で医療機関につながることができるのは良いことですし、幸運であるともいえます。

認知症の検査には次のようなものがあります。

  • 記憶や言語のテスト(簡単なもの~詳しいもの)
  • その他のテスト
  • 血液検査
  • 脳画像検査(CT、MRI)
  • 脳血流の検査(SPECT)
  • シンチグラム
  • 自律神経検査
  • その他の検査

これらの検査をすべての人が受けるわけではありません。必要な検査は症状と経過によって異なりますが、最低限、簡単な検査を受けて脳の画像を1枚撮っておくとよいでしょう。近くのかかりつけ医のところで先に治療を始めてから脳外科の先生を紹介してもらい、脳の画像検査を受けるだけでも十分です。

軽度の段階で脳の画像を撮るのは、アルツハイマー型やレビー小体型などの認知症の診断をつけることが目的ではありません。くも膜下血腫や水頭症など、認知症以外の別の病気の可能性がないことを調べるために必要なことなのです。MRI(核磁気共鳴画像)でなくても、CT(コンピューター断層撮影)でも構いません。診断が難しい場合には特殊な検査を追加して行なうことがありますが、実際にはそこまで必要としない方のほうが多いのです。

初期の段階では認知症の診断がつかないことがありますが、そのまま放っておかずに半年〜1年後に再受診することが大切です。今の時点では異常がなかったとしても、1年後、2年後もそうだとは限らないからです。同一の検査機械で前回の結果と比較することで判断がしやすくなります。

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    繁田 雅弘 先生

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