インタビュー

血管性認知症(VD)の症状とは―アルツハイマー型認知症との違いは何なのか?

血管性認知症(VD)の症状とは―アルツハイマー型認知症との違いは何なのか?
板東 邦秋 先生

ばんどうクリニック 院長

板東 邦秋 先生

この記事の最終更新は2015年08月09日です。

認知症はメディアでたびたび取り上げられており、世間でも有名な病気です。認知症のひとつ、血管性認知症脳梗塞などが原因で脳の血管が詰まり、脳へ酸素が運ばれず、その結果神経細胞や神経線維が壊れることが原因となって発症します。それでは、血管性認知症の症状はどのようなものなのでしょうか。脳神経外科専門医でありばんどうクリニック院長の板東邦秋先生にお話をお聞きしました。

アルツハイマー型認知症とよく似た症状も現れますが、症状的には微妙な違いが見受けられます。
初期症状としてまず、物覚えが悪くなり、そこから段々と「今までできていたことができない」「時間や物の名前、においや味がわからない」「妄想が止まらない」など様々な症状が現れ、これらと同時にもしくは先行して、歩行・嚥下・発語の障害などが見受けられます。
人によっては、抑うつ状態になったり、その場の状況に関係ない感情(突然泣き出したり笑い出したりする)を表す方もいます。また、「加速歩行」といったパーキンソン病によく似た症状も出ます(これを脳血管性パーキンソニズムといいます)。

症状が進行すると自分で服が着られなくなったり、家に帰れなくなったりと、自力で生活することが困難になってきます。
血管性認知症(VD)はアルツハイマー病と比較すると記憶障害(認知障害)や人格障害は軽度な傾向にありますが、遂行機能低下と抑うつ症状・感情失禁などの精神症状はより高度だと考えられています。

また、アルツハイマー病は徐々に悪くなるのに対し、血管性認知症(VD)は急激にもしくは段階的に悪くなり、症状に波があるのが特徴です。また、血管性認知症(VD)では片麻痺や構音障害などの神経症状をともなうことが多いです(アルツハイマー病ではこれらは末期にならないと出現しません)。同時に、早期から歩行障害や尿便失禁をきたすこともよく見受けられます。
ただし、血管性認知症(VD)は病態認識がはっきりしており、自分が病気であるという意識は末期まで保たれます。

脳梗塞は脳局所への血流が途絶える病気です。血流が途絶えると脳が低灌流になり、脳細胞の代謝が障害されます。そんななかで一番溜まるのが、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」という異常たんぱくです。これが脳の中に溜まっていきます。
アミロイドβは健康な方の脳細胞の中でもつくられるのですが、健康な方であれば自然に分解され、排泄されるようになっています。排泄は血管の周囲で様々な細胞を介して行われますが、血管自体の流れが悪いとその「排水溝部分」が詰まってしまい、流れていかずにどんどん溜まってしまいます。このことにより、アルツハイマー型認知症を発症するといわれています。

アミロイドβ蛋白は、アミロイド前駆体蛋白(APP)の一部がγセクレターセ、次いでβセクレターゼという酵素により順次切断されることによって生成されます。脳内の低灌流や低酸素などの変化によりβセクレターゼであるBACE1とプレゼニン(PSEN)を活性中心とするγセクレターゼの発現(BASE1-PSEN-APPの調節系)が亢進することにより、アミロイド蛋白の産生が増加します。このアミロイド蛋白は単体では無害ですが、少しずつ集まり(オリゴマー)毒性を発揮するようになります。

したがって、加齢や高血圧糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化が脳の低灌流をきたし、「BASE1-PSEN-APPの調節系」を亢進させてアミロイド蛋白の産生増加を招きます。アルツハイマー型認知症の発症には、このアミロイド蛋白の蓄積に加えて、リン酸化したτ(タウ)蛋白の蓄積も必要だと言われています。

こういった変化は認知症発症の20年以上も前、すなわち壮年期に始まります。もちろん、認知症の中には遺伝性のものもありますし、若年型認知症もありますが、一般的には発症は老年期に入ってからです。

血管性認知症(VD)は、大血管性または小血管性の皮質梗塞や皮質下梗塞、ラクナ梗塞など、梗塞場所が違えば症状のあらわれ方も一定ではないため、一概に「これくらいのスピードで進行する」ということはできません。つまり、原因となる脳卒中の重症度によっても進行スピードが左右されるということです。
速く機能低下が進むケースもあれば、ゆっくりと発症して緩やかに進行するケースもあります。また、途中で症状の進行が停止したり、機能障害にいくらかの改善が見えたりすることもあります。

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