概要
ラクナ梗塞とは、深部の脳組織に血液を送る直径50~300ミクロン程度の非常に細い“穿通動脈”と呼ばれる血管が詰まることで生じるタイプの脳梗塞です。深部の1本の穿通動脈が詰まると血流が途絶え、壊死する範囲は最大でも直径1.5cm以下とされています。ラクナ(lacune)は小さな湖(lake)を意味し、慢性期の脳梗塞の病理所見からきた言葉です。
原因
ラクナ梗塞を引き起こす最大の原因は高血圧で、圧により穿通動脈に変性が起こって血管が閉塞します。
また糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣なども血管にダメージを与えるためラクナ梗塞の原因となります。穿通動脈に動脈硬化が起こって血管が閉塞することもあります。
症状
ラクナ梗塞は脳梗塞の範囲が1.5cm以下と狭いため、自覚症状がないケースも少なくありません。意識障害など重篤な症状を引き起こすことはほとんどなく、多くは片側の手足の力が入らない(軽度の麻痺)、感覚が鈍い(感覚障害)、言葉が話しにくい(構音障害)など、軽度で比較的限定した神経症状がみられます。
また、ラクナ梗塞は長期間かけて脳深部のさまざまな部位に複数生じることがあり、発症を繰り返して段階的に症状が悪化することがあるのも特徴です。さらに、ラクナ梗塞が多発すると血管性認知症やパーキンソン症候群が現れることも知られています。
検査・診断
ラクナ梗塞が疑われるときは次のような検査が行われます。
画像検査
細い血管が詰まり、小さな脳梗塞が生じていないかを調べるため、画像検査を行う必要があります。
発症からある程度時間が経過していると考えられる場合は、頭部CT検査でラクナ梗塞の有無を調べることができます。しかし、発症してから6時間以内など急性期早期と考えられる場合はCT検査では病変を描出できないことが多く、頭部MRI検査で調べられる急性期病変を検出することが有用です。同時にMR血管撮影で太い血管に異常がないことも確認しラクナ梗塞と診断します。
血液検査
ラクナ梗塞の有無を血液検査で評価することはできませんが、動脈硬化に関係する血糖、LDLコレステロール値、腎機能などを検査します。また、全身状態として貧血、炎症や脱水の有無、肝機能異常の有無などを調べるために一般的な血液検査項目を調べるのが通常です。
治療
ラクナ梗塞の急性期治療は、血液を固まりにくくする抗血小板薬の投与、24時間以内の入院では脳保護薬の投与も行われます。また早期から起座(上半身を起こして座った状態)、立位(立った状態)をとり、リハビリテーションを行います。
症状が落ち着いてからも再発を防ぐために抗血小板薬をはじめとした薬物治療を継続します。
予防
ラクナ梗塞の予防では、高血圧症に対する降圧療法が重要で、さらに糖尿病、脂質異常症の治療のほか、喫煙などの習慣も同時に改善します。
食事や運動などの悪い生活習慣を見直し、特に高血圧症の場合は、支障がなければ家庭血圧(毎日決まった条件のもと自宅で複数回計測する血圧の平均値)130/80mmHg未満を目指します。血圧が高い場合は医師の指示に従って薬物療法を行うなど適切な治療を受けるようにしましょう。
また、喫煙者は禁煙し、自分の意志だけでは禁煙できない場合は禁煙外来などを利用するのも1つの方法です。
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