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インタビュー

アルツハイマー病の検査と診断

アルツハイマー病の検査と診断
山田 正仁 先生

金沢大学 医薬保健研究域医学系 教授

山田 正仁 先生

近年アルツハイマー病の検査が進歩し、早期診断が可能となりつつあります。アルツハイマー病の確実な診断は特徴的な脳病変、すなわちAβ(老人斑)やタウ蛋白(神経原線維変化)が脳に蓄積していることを検出することです。これらの病変が脳に出現した後に発症しますから、これらの病変を検査で検出できればアルツハイマー病が発症しないよう、先制治療(発症予防)を行うことも可能となります。金沢大学神経内科 大学院医薬保健学総合研究科 脳老化・神経病態学(神経内科学)教授の山田正仁先生は「診断と治療は車の両輪のようにどちらもうまく進むことが重要」とおっしゃっています。本記事では、正確な診断による治療の進歩についてお話しいただきます。

「アルツハイマー病の原因-アルツハイマー病には3つの特徴がある」でご説明したとおり、アルツハイマー病は次のような特徴(原因)があります。

  • 老人斑の出現(アミロイドβ蛋白(Aβ)の凝集・蓄積)
  • 神経原線維変化(リン酸化タウ蛋白の凝集・蓄積)
  • 神経細胞(シナプス)の脱落

アルツハイマー病の検査では、これらを検出します。

アルツハイマー病の進行【画像:金沢大学 山田先生・原図】

アルツハイマー病に特徴的な、Aβの蓄積にはアミロイドPET、リン酸化タウ蛋白の蓄積にはタウPETを用いることで、Aβやタウ蛋白の異常を検査で検出することができます。しかし、タウPETはまだ臨床開発段階ですし、アミロイドPETもまだ保険適用がされていません。PETは費用面の負担が大きいのですが、今後診療で使えるようになることが期待されます。

他には、脳脊髄液を採取しそれらを調べることもできます。脳内にAβやリン酸化タウ蛋白がたまると、それが脳脊髄液中に反映されるのです。しかしこの検査では腰部後ろから、腰椎の間に針を刺し入れて採取するため患者さんの負担も考慮して行う必要があります。脳脊髄液のリン酸化タウ蛋白測定は保険適用されていますが、Aβは保険適用されていません。

多数の神経細胞が死んで脱落しますと脳が萎縮しますので、MRIやCTといった脳の形態(かたち)をみる画像で脳の萎縮をみることができます。また、神経細胞が脱落する前にシナプスが脱落して脳の機能が低下しますので、糖代謝PET(保険適用外)や脳血流SPECTでアルツハイマー病パターンの脳機能低下を検出することも可能です。

通常の認知症の診療では、CTやMRIなどの画像検査が行われます。アルツハイマー病では海馬領域(記憶の中枢)から萎縮が始まりますので、もの忘れ症状から発症します。認知症が進行した段階では、ほとんどの場合海馬領域に明らかな萎縮がみられます。一方、早期の段階では必ずしも萎縮はみられません。そのため早期の診断では、海馬領域(側頭葉内側部)の萎縮がみられないというだけでアルツハイマー病ではないと診断することはできません。早期になればなるほど診断が簡単ではなくなるというのは、脳の萎縮がみられない場合でも脳血流SPECTや糖代謝PETでアルツハイマー病パターンの機能低下がみられれば、アルツハイマー病の診断が支持されます。

アルツハイマー病に特徴的な脳病変のマーカーであるAβやタウ蛋白の異常がPETや脳脊髄液検査で検出されれば、アルツハイマー病の診断の確実度は非常に高くなります。また脳でAβが沈着し、タウ蛋白が蓄積したのちに発症してくるという経過をとりますので、これらのマーカーの検出はアルツハイマー病の発症前診断に可能にすると考えられています。そうしたことから、前述したようなAβやタウ蛋白を検出する検査の開発の推進が期待されるのです。

現在、Aβやタウ蛋白を標的としたアルツハイマー病の根本的治療薬が活発に開発され、数百の薬剤が臨床開発の段階にあります。しかし、たとえばAβを標的とした治療を行う時に、Aβが蓄積していない認知症を間違えてアルツハイマー病と診断されていたらどうなるでしょうか?Aβが沈着していないのですから治療が効くはずはありません。実際これまでに行われたアルツハイマー病の治験で、アミロイドPETで検査してみると対象患者の約20〜30%がアミロイド陰性であった(すなわち、アルツハイマー病ではなかった)というデータがあります。当然のことですが、適切な治療薬開発のためには正確な診断が前提になります。そのため最近では、アミロイドPETなどで診断確実度の高い対象(患者さん)を選んで薬剤の治験が行われるようになっています。

つまり、診断と治療は「車の両輪」のように両方がうまく進むことが重要なのです。診断が正確でなければ適切な治療薬がそれを必要とする患者さんに使用されなかったり、診断だけ行えても治療法がないという状況になってしまいます。どちらかが遅れてもいけないのです。

Aβやタウ蛋白の検査の進歩とともに認知症の早期診断が進んでいます。早期診断によって、発症前(Aβやタウ蛋白の蓄積段階)・MCI(軽度認知障害)・発症後(アルツハイマー型認知症)という段階のうち、発症前やMCIを診断することも可能となってきています。発症前であれば発症予防=先制治療、 MCIであれば早期治療(認知症への進展予防)、アルツハイマー型認知症(症状がでている段階)であれば治療という戦略が立てられます。

これは他の病気では当然のように行われていることです。胃がんを例に挙げます。検診で胃がんが発見されれば症状がなくとも早期に治療を行うでしょう。健康診断でコレステロール値が高い場合、治療せずに狭心症になるまで待つなどということはありません。つまり、症状がないから治療をしないというのは他の病気に置き換えると非現実的な話なのです。アルツハイマー病もようやく他の病気にならび、早期診断・早期治療が可能となりつつあるのです。

 

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