インタビュー

睡眠時無呼吸症候群と認知症

睡眠時無呼吸症候群と認知症
山田  尚登 先生

滋賀医科大学 副学長・ 理事(教育・広報・渉外等)(兼務)精神医学講座教授

山田  尚登 先生

この記事の最終更新は2016年04月18日です。

認知症の患者には、高い確率で睡眠時無呼吸症候群がみられることがわかっています。認知症の予防には睡眠時無呼吸症候群の治療が有効であると説く滋賀医科大学精神医学講座教授の山田尚登先生に、そのかかわりやメカニズムについてお話を伺いました。

5年ほど前、滋賀県内の病院とクリニックの協力を得て、111人の認知症患者を対象に調べたところ、約9割に睡眠時無呼吸症候群があることがわかりました。またRDI(Respiratory Disturbance Index=呼吸障害指数、検査中にカウントされた無呼吸、低呼吸の総回数を記録時間で割った値。1時間あたりに換算し、5回未満であれば正常)の数値が悪化しているほど認知症の症状が重いこともわかりました。とくに80歳以下では、RDIと認知機能の低下の関連が強く、これは年齢の若い認知症患者でよりRDIが認知機能の悪化と関連していることを示しています。このことは、認知機能の低下の初期の段階で睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことが予防や進行を遅らせるために重要であることを示しています。

アルツハイマー病の原因はまだ分かっていませんが、臨床上明らかになっているところでは、脳内でアミロイドβタンパク質(Aβ:アルツハイマー病の原因因子の1つ)が凝集した後に老人斑(アミロイド斑)として沈着し、しばらくして神経細胞が死滅することから、アルツハイマー病はAβが原因だというアミロイド仮説が有力となっています。

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸状態が続くと肺での換気が十分にできず、血液中の二酸化炭素が溜まり、酸素が減少する低酸素状態になります。アメリカにおける研究報告では、低酸素ストレスを与えると脳内にアミロイドβタンパク質が増えるといわれています。睡眠時無呼吸症候群の患者が認知症に移行しやすいということは、こうしたデータからも裏付けられています。ちなみに睡眠時無呼吸症候群と心血管疾患とのかかわりについても、心筋への血流量が不足(虚血)した状態になると心筋が酸素欠乏に陥ってその働きが阻害されることで説明がつきます。

2020年には、日本では80歳代以上の約1割が認知症になると予測されており、その約7割がアルツハイマー病と推定されています。睡眠時無呼吸症候群の患者が認知症へ移行しやすいという数々のデータからも、認知症患者のうち睡眠時無呼吸症候群が認められる方に対してはCPAP治療が有効ではないかと考えています。また、認知症になっていないとしても睡眠時無呼吸症候群が認められる場合、早期にCPAP治療を行っておくことで、認知症の予防になると考えています。アメリカにおける、睡眠時無呼吸症候群に対してCPAPによる治療を継続したところ、認知機能が改善したとの報告が数多くなされています。

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