インタビュー

不眠症が増えている原因とは

不眠症が増えている原因とは
山田  尚登 先生

滋賀医科大学 副学長・ 理事(教育・広報・渉外等)(兼務) 滋賀医科大学 精神医学講座教授

山田  尚登 先生

近年、不眠症に悩む人が増えています。不眠症は本来の体のリズムが乱れることが原因の一つですが、乱れそのものを引き起こす要因を考えるとまさに現代病ともいえることがわかります。不眠症が増えている原因と、不眠症がもたらすさまざまな障害ついて、滋賀医科大学精神医学講座教授の山田尚登先生にお話を伺いました。

夜型社会が不眠症の一因

不眠症はさまざまな要因で起こります

要因の一つとして多くの店が深夜営業、終夜営業になるなど社会そのものが夜型になったことが挙げられるでしょう。また、不規則な働き方の問題もあります。看護師さんや24時間稼動している工場での勤務は、昼夜関係無い勤務の繰り返しになり、体のリズムが狂ってしまいます。社会生活を送っていく上でのストレスも不眠症には影響しているでしょう。

体のリズムをつかさどる体内時計

目の神経が交叉(こうさ)する位置の少し上の視床下部に位置する視交叉上核に体内時計はあります

ヒトの体内時計は、1日25時間でリズムを刻んでいます。たとえば私たちが時間の手がかりを得られない真っ暗な洞窟で生活をしたとすると、1日1時間ずつ後ろにずれていきます。人は早く寝たり、起きたりするのは苦手で、どうしても遅く寝たり、遅く起きたりしたいと思うのも、体内時計が後ろにずれていくという理由があるので、自然なことなのです。

そこで私たちは毎日25時間のサイクルで回る体内時計を、24時間に近づけて生活しています。その方法のひとつが「光」です。たとえば朝に太陽光を浴びると起床できるのがその一例です。光には2500ルクス以上の照度が必要だといわれています。この「光」の情報が体にフィードバックされ、体内時計の周期を短くするのです。

一方、夕方や夜に強い光を浴びると体内時計が後ろにずれてしまうので、睡眠障害が起こりやすくなります。夜中にコンビニに行ったり、布団の中でスマートフォンを触ったりするのがその顕著な例です。光だけではなく、生活のリズム、たとえば同じ時間に学校や仕事へ行ったり、人と話をしたり、食事をしたりすることも体内時計に関する手がかりになります。また、「個食」といって一人でご飯を食べる人の割合が増えています。1人で食べると食事をする時間がばらばらになり、やはりリズムを乱すことになります。

「寝る子は育つ」

アメリカの研究では、睡眠時間が短くなればなるほど、学校の成績が悪くなるという報告も出されています

記憶は一時的に海馬(記憶にとても深く関係している部位)にためられて、寝ている間に大脳皮質(精神活動の中枢)に移り、固定するといわれているので、記憶力の低下や学力の低下につながっていると考えられます。

また、睡眠不足と家庭内暴力の関係を調べた研究報告もあり、その因果関係が指摘されています。睡眠不足になるとイライラしやすい、突然怒りやすいためです。「寝る子は育つ」といいますが、睡眠時間を十分取って体の成長だけでなく、「頭も健やかに、学業も順調で、情緒も安定した子どもにしたい」という意味も込められているのだと思います。