インタビュー

認知症専門医に求められること

認知症専門医に求められること
上田 諭 先生

東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科教授

上田 諭 先生

認知症有病者の増加とともに、認知症を診る機会が増えた先生も多くいらっしゃるのではないでしょうか。また、認知症の方とのコミュニケーションの課題も出てくることかと思います。今後も増え続けるとされている認知症有病者をしっかりと診るために必要となってくるポイントについて、日本医科大学 精神神経科 講師の上田諭先生にお話しいただきました。

認知症は精神科医療のはざま

認知症診療には、画像所見や検査で認知症を診ることと、ご本人の心理を汲み取る精神療法で診ることの両方が求められます。しかし、そのどちらも行える医者がさほど多くありません。
認知症の専門医と呼ばれる先生は、かつてはその多くが神経病理という学問、認知症で亡くなった方の脳がどのようになっているかを研究している先生でした。この先生方は画像による脳の変化には非常に詳しいのですが、認知症の方(以下、「ご本人」)と話して症状や心理を理解するということを行っていないことがほとんどです。

一方、患者さんの話をしっかり聞くような精神療法を行っている先生には、認知症を専門に診ている先生はほとんどいません。また介護福祉士や認知症ケア専門士の方々は、認知症の方の気持ちを汲み取ること重視し積極的に行える人たちが続々と増えていますが、脳の萎縮などの画像所見や身体的問題の点から認知症をみることは専門外です。つまり、画像所見や検査・ご本人の心理のどちらかに偏った診療や対応がされてしまう傾向があるのです。

今後、高齢化とともに認知症の方に接する機会は増えます。画像所見や身体的問題の観点からもご本人の気持ちの観点からも、両面から認知症を診られる医者が増えることを期待します。

認知症の方とのコミュニケーション

前項で、認知症の方は「何も分かっていない」ということはないと述べました(記事3「認知症の症状を引き起こす原因に目を向ける」)。また、ご家族と病院に来られる方は、そのほとんどが自分の気持ちを言葉にすることができます。
しかし診察室でずっと黙っている認知症の方は多くいらっしゃいます。なぜ話してくれないのでしょうか。それは、聞くべき側が認知症の方の話を聞こうとしないからです。加えて「この人には話してもいい」と思ってもらえなければ話してもらえないのです。

ご本人は、自分自身のことが話題になるとき、周囲の言葉や対応には当然非常に敏感になっています。ですから、ご家族の話しか聞かない、ご本人の話に耳を傾けようとしない医者には自分の気持ちを伝えないのです。まずは、医者自身も「治さず、今のあなたで十分」と捉えること、そしてご本人中心の診療・治療にすることが重要です。