腹痛は日常的によく起こりますが、痛みが治まればそのまま放っておく方がほとんどではないでしょうか。しかし、なかには思わぬ病気が背景にあることもあり、そのまま放っておくと知らないうちに重症化して入院治療が必要になることもあります。
この記事では、腹痛の原因、症状別に考えられる病気、対処法についてお伝えしていきます。
腹痛とは、“お腹が痛い”という症状全般のことを指します。その原因はさまざまですが、原因となる病気によって痛みの部位や痛み方などは異なり、当然ながら治療法も異なります。
このため、お腹が痛いときには原因を調べるため、問診のほかにさまざまな検査を行います。検査内容は疑われる病気によって異なりますが、血液検査、X線やCT、MRI、超音波検査、内視鏡検査などの画像検査が必要に応じて行われます。
過敏性腸症候群は、日本を含む先進国に多い病気で、20〜40代の働き盛りの世代で多く見られます。詳しい原因は分かっていませんが、精神的なストレスが生じた時に症状(お腹が痛くなり下痢をする)が悪化しやすいといわれています。
また、下痢だけでなく、時には便秘になったり、便秘と下痢を繰り返したりすることもあります。
急性腸炎とは、腸の粘膜に炎症を起こしている状態をいいます。発熱、吐き気、嘔吐を伴う場合もあり、下痢は水のような便(水様便)であることが多いです。
原因は、感染によるものとそうでないものに分けられます。感染性腸炎は、細菌またはウイルスが腸の粘膜に感染することにより、炎症を起こすものです。腸での水分の吸収がうまく行えなくなるため、水様便が出るようになります。また、発熱を伴うこともあります。
細菌性腸炎は、赤痢菌、大腸菌、コレラ、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどの感染が原因となります。ウイルス性腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染が原因となり、インフルエンザなどと同じように大流行する時期があります。
そのほかにも、アルコールの暴飲、特定の食物によるアレルギー、抗生物質などの薬剤などが原因で引き起こされることもあります。
胃の粘膜が急に炎症を起こした状態のことをいいます。多くは胃酸の過剰分泌が原因で引き起こされますが、アルコール、コーヒー、辛い食べ物などの刺激物、空腹での服薬、急激なストレスなどが原因となることもあります。
また、ピロリ菌感染、アニサキス症(アニサキスは寄生虫の仲間で、この幼虫が寄生した魚介類を、生または生に近い状態で食べると、アニサキスがお腹の中で胃の壁に突き刺さり激しい腹痛を起こす)による感染などによっても急性胃炎を生じることがあります。
胆管や胆嚢内で細菌が増殖し炎症を引き起こすことで、高熱、右上腹部の痛み、吐き気、嘔吐などが生じます。胆石が原因になることが多いとされています。
痛みは非常に強く、ひどくなると黄疸や肝機能の低下も見られ、命に関わることもあります。
原因は腸内ガス過剰型と腸内ガス排泄低下型に分けられます。
腸内ガス過剰型は、食事中に話し込んでいたり早食いしたりすることで空気を飲み込みすぎてしまうことが原因として考えられます。また、腸内環境の悪化や便秘も、ガスを産生しやすくします。さらに、甘いもの、米、パン、イモ類などのでんぷん質である食品を摂りすぎることも、腸内にガスを産生しやすくなる原因のひとつです。
一方、腸内ガス排泄低下型は、暴飲暴食やストレスが主な原因です。腸の動きが悪くなるため、うまくガスを排出できず腸内にたまりやすくなるのです。
消化管の動きが悪くなったり、消化管の一部が詰まったりすることで、お腹の張り、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状を引き起こす病気です。
原因はさまざまで、お腹の手術を受けたことがある人は発症しやすいとされていますが、種々の原因による腹膜炎やがんなどが原因で発症することもあります。
胃酸が食道に逆流することによって、食道と胃の境目にある粘膜が炎症を起こす病気です。食後に喉のつかえ感、胸やけ、お腹の上部の痛みが生じたり、寝ていると酸っぱい液体が喉元まで上がってきたりするのが特徴です。
もっとも多い原因は加齢による胃の入口のしまりの緩みですが、食べすぎや肥満など過度な腹圧がかかることが原因で、若い人に発症することもあります。
“ディスペプシア”とは、みぞおちの痛み、胃もたれ、吐き気など、腹部に生じる不快な症状を総称した名称です。
ありふれた症状なのですが、以下のいずれも該当する場合はこの病気が疑われます。
機能性ディスペプシアは、胃の機能低下、ピロリ菌感染、過剰な胃酸分泌、ストレス、遺伝、乱れた食生活など、様々な要因が発症に関与していると考えられています。
胆嚢内に石のようなものができる病気です。普段は症状がありませんが、食後に胆嚢が収縮すると、胆嚢壁が胆石に刺激されて強い痛みを引き起こします。
特に脂肪分の多い食事をした後、30分から1時間ほどで起こることが多く、右上腹部から、みぞおちのあたりにかけて差し込むように痛みます。
大腸と小腸の境目付近、つまり右下腹部に存在する虫垂に炎症が生じる病気です。最初は上腹部が痛み、時間と共に右下腹部が強く痛み出します。痛みが増すにつれて発熱も現れ、食欲の低下および嘔吐が見られることもあります。
虫垂内部に便や粘液が詰まると、大腸菌などの腸内細菌が増殖して炎症を起こし発症します。
診断が遅れると重症化して腹膜炎を起こし、最悪の場合、死に至るケースもあります。
激しい腹痛の場合、胆石、腸閉塞、腹部の動脈塞栓症、消化管穿孔、アニサキス症、尿管結石、急性膵炎、大動脈解離、などが病気として考えられます。なかには命にかかわる危険な病気の可能性もあるため、すぐに受診が必要となることもあります。
症状や病気により異なりますが、激痛を伴う場合は緊急の手術や入院が必要なこともあるので、急ぎの受診を検討しましょう。また、発熱や嘔吐などの症状が同時に現れたり、急に痛みが襲うものではないものの繰り返し腹痛が起きたり、下痢を頻繁にしたりする場合も症状を放置せず、早めの受診を検討しましょう。
河北総合病院 副院長・消化器内科部長
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