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心不全に対する治療の新たな選択肢とは

心不全に対する治療の新たな選択肢とは
廣井 透雄 先生

国立国際医療研究センター病院 理事長特任補佐/循環器内科 科長

廣井 透雄 先生

目次
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心不全の治療では内服薬や心臓の手術など、さまざまな方法が必要となります。特にここ数年の間に、新たな治療薬の開発や認可が急速に進んできています。今回は、注目が集まっている新しい心不全治療薬や、先進的な医療を行う自院での取り組みについて、国立国際医療研究センター病院 循環器内科診療科長の廣井 透雄(ひろい ゆきお)先生にお話を伺いました。

心不全の治療の目的は、症状が出ないように病気の進行を予防することと、症状そのものを和らげることが中心とされています。

実際の治療や予防策は診療ガイドラインをベースにして進められますが、医療技術の進歩に伴って、心不全に関する診療ガイドラインは国内外で更新されています。

ここでは、これからの心不全治療に大きく貢献することが期待される、新たな治療についてご紹介します。

心不全治療で新たな中心となる4つの薬(fantastic four)

これまでの心不全治療では、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、利尿剤などが使われてきました。

それらに加え心不全の患者さんに使うことができる新たな薬として、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)や、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬、HCNチャネル遮断薬が注目されています。

なかでも、β遮断薬・MRA・ARNI・SGLT2阻害薬の4つの薬剤は、これからの心不全治療の中心となる“素晴らしい4剤”という意味を込めて、“fantastic four”と総称されています。

ARNI

サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬:ARNI)は、新しい心不全治療薬として2020年に承認・発売されました。

このARNIは、もともと心不全治療で第一選択とされていたACE阻害薬を使っても効果が十分に得られなかった場合に、ACE阻害薬と切り替えて使用することが推奨されています。

2021年9月からは1回に14日分を超える処方が可能となり、心不全への長期的な効果が明らかとなるのが期待されています。

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬の1つであるダパグリフロジンプロピレングリコール水和物は、もともとは糖尿病への治療薬として開発された薬剤です。しかし近年、心血管死や心不全悪化のリスクを低下させる効果を持つことが明らかにされ、2020年11月に、心不全に対する治療薬としても日本国内で認可されています。従来の薬ではなかなか効果が得られなかった患者さんへの新しい治療方法として、注目を集めている薬です。

さらに新しい話題として、2021年9月に、ベルイシグアト(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤:sGC刺激剤)が国内で発売されています。こちらも従来とはまったく違うアプローチで心不全を治療する新薬です。

心不全に対する新しい薬は立て続けに発売・認可されており、心不全の予防・治療方法は急激に進化しています。さらなる医療の進歩によって、これまでの方法では打つ手がなかった重症な心不全にも、治療の方向性を示していける時代が訪れることが期待されます。

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提供:PIXTA

心不全の患者さんへの診療を行うなかで、当院の診療科全体で特に力を入れている点をご紹介します。

当科は心不全や心筋梗塞(しんきんこうそく)を始めとする心疾患や、急性大動脈解離肺塞栓症(はいそくせんしょう)などの血管疾患、高血圧不整脈といった、さまざまな病気の診療を担っています。心電図・心血管エコー・冠動脈CT・核医学・心臓MRIなどの検査や、心臓カテーテル治療、カテーテルアブレーション、ペースメーカー植込、心不全・弁膜症治療などを行います。緊急を要する患者さんへの対応のため、検査や治療は24時間体制です。また心臓血管外科と良好な協力体制を取り、スムーズに連携しながら診療にあたっています。

当院を受診する患者さんは、地域のかかりつけの先生から紹介されて来ることが多いですが、当院から紹介元の先生へ患者さんと検査結果などの情報をお返しする“逆紹介”を行うことを原則としています。このように地域と連携しながら、患者さんがご自宅近くの病院や診療所で継続的に医療を受けられる体制を整えています。

最近積極的に行っているのが、電線のない小さなカプセル状のペースメーカー(リードレスペースメーカー)を心臓に植え込む治療です。

この方法は、処置にかかる時間が一般的なペースメーカーに比べて短く、入院期間も短縮できるため、患者さんへの負担を軽くすることができます。リードレスペースメーカーの適応となる高齢患者さんへの治療として選択することがあります。

新型コロナウイルス感染症の診療を行っている昨今、新型コロナウイルス患者さんの心臓の機能や肺動脈・大動脈の大きさを検査し重症化との関連を調べたり、心機能への影響といった臨床研究も進めたりしています。また、感染していない方でもリモートワークなど生活習慣の変化により肺塞栓症の発症が増えていることも明らかになりました。

当院の母体である国立国際医療研究センターには、HIV感染、出血が止まりにくくなる病気である血友病、薬害エイズの診療を行うACCという部局が設置されており、我々も連携を図っています。

HIV感染した血友病の患者さんには虚血性心疾患を合併する方が多いという研究報告を行いました。これまでに、血友病の患者さんに対して虚血性心疾患の集団スクリーニング検査を行ったところ、心筋梗塞に至る前に病気が見つかり早期治療につなげられた方もいらっしゃいます。

今は、血友病ではないHIV感染者の方にも集団スクリーニング検査を研究中です。

国立国際医療研究センター内の部局であるメディカルゲノムセンターでは、専門医による遺伝学的検査などが行われています。同センターと連携し、心筋症や重度の不整脈の方など、循環器疾患を持つ方の遺伝子を解析することで病気の原因を突き止め、より的確な治療方法を検討します。遺伝子異常などの病気の原因が分かれば治療方針を立てやすくなり、テーラーメイド医療(個別化医療)に近づけることも期待できます。

心不全の中でも、十分な治療を行っても回復せず心臓の機能が著しく低下する“重症心不全”と呼ばれる状態になると、その先に生き延びることができる生存率は、進行がんよりも悪くなることがあるともいわれます。

心不全が重症化する前に、病気を早期に発見し、早期に症状の予防・治療を行って入院が必要となるのを防ぐことで、健康寿命(日常生活に健康上の制限のない期間)を延ばしていただきたいと思います。

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