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心不全とは? 息切れやむくみなどの症状について

心不全とは? 息切れやむくみなどの症状について
廣井 透雄 先生

国立国際医療研究センター病院 理事長特任補佐/循環器内科 科長

廣井 透雄 先生

目次
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心臓の異常が原因で起こる心不全は、悪化すると死に至る危険性もある病気です。早いうちに症状や体からのサインを発見することで、病気が進行する前に治療を受けることができます。動いたときの息切れや脚のむくみなどに気付いたら、医師に相談することが大切です。今回は心不全の特徴や症状について、国立国際医療研究センター病院 循環器内科診療科長の廣井 透雄(ひろい ゆきお)先生にお話を伺いました。

2017年に発表された日本循環器学会と日本心不全学会の定義によると、心不全は“心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気”です。

つまり心臓の異常が原因となり、動いたときに息切れや動悸が起こったり、足がむくんだりといった症状が現れることを特徴として、時には死に至ることもある病態だということです。

心不全は心臓の病気や異常が悪化した先の、最終的な状態であるといえます。心不全の原因としては次のようなものが知られています。

高血圧

代表的な原因は高血圧です。血圧が上がり心臓が肥大した結果、心不全へ至ることがあります。

心臓弁膜症

大動脈弁や僧帽弁という、心臓の中にある弁の異常が心不全の原因となります。

心房細動

心房細動により脈が遅くなる(徐脈)、速くなる(頻脈)などの不整脈が起こった結果、心不全となることがあります。

心筋の異常

心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こした方や、心筋拡張症により心臓が大きくなり収縮が上手くいかない方など、心臓の壁である心筋に異常がある場合も、心不全の原因となります。

抗がん剤治療の副作用

抗がん剤治療の副作用によって心機能が影響を受け、心不全を引き起こす場合もあることが分かっています。

心不全の発症リスクが高い方に共通する特徴として、まず高齢であるということが挙げられます。また糖尿病脂質異常症、不整脈といった基礎疾患を持つ方や、生まれつき心臓に病気を抱える方は、特に心不全になりやすいといわれています。そして、普段から医師の診察を受ける機会が少ない方や定期的な健康診断を受けない方が、心不全の発見の遅れにより突然発症して救急車で搬送されるということも少なくありません。

心不全になると、動いたときの息切れや動悸が起こりやすくなります。寝るときに体を水平にすると息が苦しくなるという方もいますし、足のむくみが現れることもよくあります。

こうした症状は心不全の悪化に伴って現れ、病状の進行とともに重症化していきます。

心不全の進行度は、次の図のとおりステージごとに分類されています。

MN作成

ステージA 器質的心疾患のないリスクステージ

ステージAはまだ症状は出ておらず、高血圧糖尿病など心不全になるリスクだけがある状態です。

症状が現れる前から危険因子をコントロールし、重症化を防ぐことが重要であるため、この状態も心不全と定義されています。

ステージB 器質的心疾患のあるリスクステージ

ステージBは、まだ具体的な症状は現れていないものの、心臓に何らかの異常がある段階です。

ここでいう心臓の異常とは、心筋梗塞により心臓の一部に動かない部分がある、心臓の弁が狭くなっている、心臓の壁が厚くなっているなどの状態を指します。実際の症状はないにもかかわらず、時として突然死が起こる場合があるステージです。この段階で、いかに症状を起こさず心不全の悪化を予防できるかが、その後の状態に大きく影響を与えます。

ステージC 心不全ステージ

ステージCは、ステージBと同じように心臓の異常があり、なおかつ心不全の症状が出たことがある場合を指します。

このステージになると多くの場合、入院して酸素吸入を行ったり利尿薬や血圧の薬といった内服治療を行ったりするなど、積極的な治療が必要になります。

ステージD 治療抵抗性心不全ステージ

ステージDは、心不全による入院を年に2回以上繰り返し、あらゆる治療を行っても体の機能が改善しない状態を指します。

この場合は寝たきりに近い状態になり、補助人工心臓や心臓移植などの特別な治療や、人生の最終段階における医療(終末期医療:病気で余命がわずかになった方に対して行う、痛みや不安、ストレスを緩和するための医療)が必要になります。

症状が進行したら体は元に戻らない

心不全が進行して体の機能が下がると、最初の状態まで回復することはありません。特にステージC以降は、一度症状が現れて身体機能が落ちてしまうと体の状態は元に戻ることはなく、入院を繰り返す間隔もどんどん短くなっていきます。

そのため、入院しなくて済むように体の状態を保つことや入院の繰り返しを防ぐことにより、健康寿命をできるだけ長く延ばすことが心不全の治療全体の目標となります。

心不全と併せて起こりやすい病気としては、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症といった心不全のリスク因子となるものが挙げられます。

肺の状態が悪い方や腎臓が悪く透析治療を受けている方は、心臓へかかる負荷が大きくなるため心不全が併せて起こることもあります。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)尿路感染症といった感染症になると、心不全がより悪化しやすくなります。感染により高熱などの症状が出ると、食事ができなくなったり水が飲めなくなったりして、心不全治療をスムーズに進めることができません。

高齢の方の場合は認知症との関連にも気を付ける必要があります。心不全では全身の血流に悪影響が及ぶため、脳への血流が妨げられると、認知機能が普段より下がる方も多くいらっしゃいます。

心不全の診断は、複数の検査を組み合わせて行います。検査には次のような種類があります。

  • 診察……症状、既往歴(今までに患った病気)、家族歴(遺伝性の心疾患がないか)
  • 心電図……心筋梗塞不整脈がないか
  • 胸部のX線(レントゲン)撮影……心臓の大きさ、肺に水がたまっていないか、など
  • 血液検査……心臓にかかっている負荷の大きさ(BNP:脳性ナトリウム利尿ペプチドまたはNT-proBNP:BNP前駆体N端フラグメント)、体内に血栓ができていないか(Dダイマー
  • 心エコー検査(超音波検査)……心臓の動きが保たれているか
  • 造影CT、MRI、核医学検査……上記の検査で確定診断できない場合など
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先述したように、心不全は自覚症状が現れるときには病気が進行しており、そこから元の状態に戻ることは期待できません。心不全のリスクとなる基礎疾患がある方や高齢の方は、病気の存在を早い段階で見つけるため、以下のような症状に普段から注意しておくことが大切です。

坂道や階段の上り下りなどの日常的な動きでこれまで感じなかった息切れや動悸がないか、体の変化を普段から意識しましょう。

心不全により体内に水がたまると、脚がむくんだり体重が急に増えたりすることがあります。小まめにチェックしましょう。

血圧がいつもより低い、脈が弱く速い、酸素飽和度が低いなどのサインが出ていないか注意しましょう。自宅に血圧計やパルスオキシメーターがある場合は、日常的に測定ができます。また歩数、脈拍数、血中酸素濃度などを測定できるスマートウォッチ(活動量計)のような電子機器を補助的に利用してもよいでしょう。

心不全は症状が進行してしまうと、治療をしても元の状態まで戻ることはありません。悪化した状態で病気が見つかって入院することになれば、治療とリハビリテーションを行っても入院前のように動けるようになるのは難しいものです。さらに現在は、感染症予防のために面会制限が行われている病院も多く、入院生活自体が大変なものになっています(2021年9月時点)。

外来の検査と内服治療で症状をコントロールできるように、できるだけ早いうちに循環器疾患を発見し、良好に管理することが重要です。

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