私たちの体は、あらゆる臓器の正常な機能によって健康な状態が維持されています。なかでも心臓は全身に張り巡らされた血管とつながっており、体の隅々まで栄養や酸素を送る機能を持っています。心臓の機能が低下すると、体にさまざまな症状が現れ、最悪の場合、心不全(心臓が十分機能しなくなり体に諸症状が生じた状態)となります。心不全を防ぐためには、血圧のコントロールが何よりも大切です。心不全と高血圧の関係、そして血圧コントロールの重要性について、旭川医科大学内科学講座教授の長谷部直幸先生にお話を伺いました。
心臓は、血液を送り出す左心系と、血液を受け取る右心系に機能が分かれている臓器で、体中の血管とつながり、血液を循環させるためのポンプ機能を持っています。心不全とは、このような心臓の機能が何らかの原因によって不十分となり、体にさまざまな症状が現れた状態です。
心不全の症状は多岐にわたります。心不全の原因が左心室にある場合には血液を送り出す機能が低下し、右心室にある場合には血液を受け取る機能が低下します。その主な症状は、以下のように現れます。
〈左心室に心不全の原因がある場合〉
〈右心室に心不全の原因がある場合〉
生命維持に重要な役割を持つ心臓は、体内に血液を循環させるために、1日に10万回ほど拍動しています。これほどのペースで常に動き続けているため、加齢とともに心臓の機能は徐々に低下していきます。これは老化現象ですから避けることができません。誰もが心不全になる可能性があり、長生きすればするほど、必然的に心不全のリスクも高まるということです。
心不全の主な原因は、高血圧・心筋症・心筋梗塞・不整脈などです。なかでも高血圧が進行すると動脈硬化のリスクが高まるため、特に注意する必要があります。
血圧のコントロールは、あらゆる生活習慣病の予防につながり、心臓・血管を保護するためにもっとも基本的かつ重要な対応策です。
血圧は常に一定ではなく、自律神経のはたらきにより1日を通して変化しています。これを「血圧日内リズム」といいます。
通常、血圧は朝に最高値となり、昼から夜になるにつれて徐々に下降し、睡眠中に最低値となります(ディッパー型)。血圧が正常の方であればこのような日内リズムを保ちます。しかし何らかの理由で血圧に異常があると、一定のリズムを取るはずの夜間にも血圧が高いままの場合があります。これをノン・ディッパー型と呼びます。
ノン・ディッパー型の場合、本来血管や臓器を休ませるはずの睡眠中にも高血圧の状態が続きます。その結果、血管や臓器への負担が増加し、動脈硬化や臓器障害が起きるリスクが高まるのです。たとえば、不整脈の一種である心房細動(しんぼうさいどう)は、高血圧による心臓への負荷が一要因として引き起こされます。心房細動の治療で行われるカテーテルアブレーション(不整脈を焼き切る方法)は、対症療法的な役目を果たすだけであって根本的な解決にはなりません。あらゆる病気のリスクを抑制するには、第一に血圧のコントロールが重要です。
マグネシウムは、血圧を下げコントロールをするにあたり非常に重要なはたらきを持っています。マグネシウムのはたらきについては、記事1『心疾患と深い関わりを持つ、マグネシウムの効果とはたらきとは』でお話ししたとおりです。
旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科 教授
旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科 教授
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医日本循環器学会 循環器専門医・指導医日本呼吸器学会 呼吸器専門医・呼吸器指導医日本老年医学会 老年科専門医・老年科指導医日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・気管支鏡指導医
旭川医科大学大学院卒業後、道内を中心に循環器病学の医師として勤めたのちに、米国ハーバード大学研究員として3年間にわたり研究を行う。帰国後、旭川医科大学第一内科助教授を経て、2007年より現職。生命に直結する循環・呼吸・神経・腎の領域を医師キャリア形成の柱として据え、「元気が出る教室」を目指して、後進の教育に力を注ぐ。趣味は、エレベーターを使わずに毎日を過ごすことである。
長谷部 直幸 先生の所属医療機関
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