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心不全は退院後も外来で“先手”の心臓リハビリテーションを

心不全は退院後も外来で“先手”の心臓リハビリテーションを
東條 大輝 先生

北里大学北里研究所病院 循環器内科部長

東條 大輝 先生

目次
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脳卒中や心臓病などの循環器病は、死に至ったり要介護状態になったりする大きな原因となります。国は2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)を成立し、循環器病の予防などに取り組むことで健康寿命の延伸や医療・介護の負担軽減を目指しています。その方策の1つとして、良質かつ適切なリハビリテーションの提供が挙げられています。

今回は“心臓リハビリテーション”の取り組みについて、北里大学北里研究所病院 循環器内科部長 東條 大輝(とうじょう たいき)先生にお話を伺いました。

心不全とは、心臓や血管の病気(循環器病)が進行し、心臓のポンプとしてのはたらきが損なわれることでさまざまな臓器に障害が起こり、元気な生活を送れない状態になることです。日本では将来、超高齢社会がますます進行していくなかで心不全患者さんが増えていく“心不全パンデミック”が予想されていますから、脳卒中・循環器病対策基本法が成立したのは非常に意義のあることだと思います。

循環器病の治療は薬物治療だけ、またはカテーテル治療だけすればよいわけではありません。特に心不全の患者さんは、心臓リハビリテーションを行うことで予後がよくなる(再入院や総死亡率を減らせる)ことが分かっています。入院中はもちろん、退院後も外来で心臓リハビリテーションを続けることによって、予後の改善につなげていけると考えています。

心不全の急性期は息が苦しくなったり、心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こして胸が痛くなったりするのですが、治療して症状が落ち着くと、そのことを忘れてリハビリを怠ってしまいがちです。一度イベント(症状の悪化や発作など)を起こしている方は2回目、3回目のイベントを起こす可能性が非常に高いので、心臓リハビリテーションをしっかり続けることは非常に大切です。

心不全患者さんの身体機能がどのようになっていくかを示したグラフがあります。このグラフの縦軸は心機能だけではなく、全身の身体活動度を示しています。オレンジ色の線がところどころ凹んでいる部分は、症状が悪化して入院治療が必要になったことを示しています。

MN作成

このように、心不全は入退院を繰り返すことによって下肢の筋力が低下し、フレイル(心身共に衰えた状態)に陥ってしまう可能性があります。しかし心不全で入院しても早期にリハビリを開始し、退院後もリハビリを続けることによって、このグラフのカーブを緩やかにできると考えています。

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北里大学北里研究所病院の心臓リハビリテーション

当院では2019年より日本心臓リハビリテーション学会が認定する心臓リハビリテーション指導士の資格を有する医師、さらに2020年5月より看護師が参画し、理学療法士など多職種による包括的な心臓リハビリテーションチームが立ち上がりました。2021年からは心臓リハビリテーションセンターとして運用をスタートしています。

リハビリというと足を動かしたり、歩いたりする運動療法を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、心臓リハビリテーションでは運動療法だけではなく「なぜ薬を飲まなければいけないのか」といった服薬指導や、「塩分はこれくらいにしましょう」といった食事指導なども行われます。また、退院後の生活について指導をしたり、患者さんの不安を聞き、地域の医療機関と連携をしたりすることも含まれます。

当院では入院中の心臓リハビリテーションプログラムを用意しています。電子カルテ上でスケジュールが自動的に決められ、入院中に各種指導を受けられるようになっています。

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北里大学北里研究所病院で使用される心不全パス(電子版)

また、退院後に社会的なサポートが必要な高齢の患者さんなどは、入院中の段階からご家族に「退院後の生活がどの程度できるようになるのか」「退院後はどのような準備が必要なのか」をお伝えします。これも心臓リハビリテーションの一環です。

当院の心臓リハビリテーションチームは、基本的に医師1人、看護師1人、理学療法士2人で構成しています。必要に応じて薬剤部や栄養部のスタッフも加わります(2022年4月現在)。

中でも専任の看護師が非常に活発に活動しています。フランクで明るく患者さんに接するように努めており、医師にはなかなか聞けないことを含め、看護師には何でも話しやすいようです。患者さんが抱えている生活上の困りごとや薬にまつわる疑問など、重要な情報をそこで初めてつかめることもあります。これは医師としても助かりますし、患者さんからは「看護師さんの話を聞いて安心した」という声を多くいただいています。また、薬剤師はポリファーマシー(多剤併用)の問題に取り組んでいます。心不全の高齢患者さんは、数多くの種類の薬を飲んでいる方が多いので、心臓リハビリテーションを通じて薬剤師と医師が相談しながら薬剤の取捨選択を行います。入院中はもちろん、外来で相談を受けた際にも検討することができます。これも多職種が集まる心臓リハビリテーションならではの取り組みです。

1人ひとりの患者さんに多くのスタッフが関わりますので、情報共有は密にしています。毎日、心臓リハビリテーションチームでカンファレンスを行っていますし、月に1回は関係者が全員集まって報告する会議をしています。また、心臓リハビリテーションの成果を学会などで発表する学術活動も行っています。以前、心臓リハビリテーションで身体機能だけでなく、認知機能の低下も予防することができるという発表を行いました。

当院では、外来でも心臓リハビリテーションを提供しています。入院中と同じ心臓リハビリテーションチームが退院後も外来で一貫して対応します。

先ほどご説明したとおり、心不全は症状が悪化し、入院するたびに身体活動度が下がりますから、なるべく入院しないことが重要です。症状が悪くなる前に打てる手を打っておく、その“先手”の策が外来での心臓リハビリテーションです。

外来の心臓リハビリテーションの意義は、患者さんの細かな変化に気付いて対応できることです。たとえば、しばらく状態がよかったのに、冬になったら急に悪くなった患者さんがいらっしゃり、話を聞くと鍋物をよく食べたために水分摂取量が多くなっていた、ということがありました。このような変化は、数か月に1回の外来のみではなかなか感知が難しいものです。

外来の心臓リハビリテーションに通うことによって、体を動かすだけではなく多方面からの指導を受けることができ、心臓が悪くなるのを防ぐことができます。実際、外来での心臓リハビリテーションを続けていただいている患者さんは、再入院を予防できていると感じています。

当院の外来の心臓リハビリテーションは、基本的に週1回通っていただき、1回あたり30~40分程度行われます。定期的に呼気ガス分析ができるマスクをつけて自転車をこいでいただき、どの程度の有酸素運動をすればよいのか、個別に負荷量を設定します。適切な運動量を覚えていただいて、次回までその運動を日常生活で続けていただくようにお伝えしています。

運動以外にも、その患者さんの状態に合わせた指導を行います。体重が増えているときは水分や塩分の摂取量をあらためて指導しますし、食事の味付けに自信がないようなら管理栄養士と相談していただきます。薬については薬剤師から説明しています。

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北里大学北里研究所病院の心臓リハビリテーション

心不全や循環器病は、入院やカテーテル治療、服薬だけで解決するものではありませんので、外来で心臓リハビリテーションを続けていただくことが大切です。

しかし、退院後も外来でリハビリを続けてくださる方は決して多くはありません。またリハビリを始めても、長続きしない方も少なくありません。仕事や家事がある、自宅から病院が遠いなど、さまざまな理由があるのでしょう。また、外来の心臓リハビリテーションを実施している医療機関はまだ少ないために、患者さんの認知度や理解度が低いことも影響しているかもしれません。

当院では月に1回だけでもよいので、心臓リハビリテーションを続けることをおすすめします。もし疑問や不安なことがあれば、それを一緒に解決できるようサポートに努めています。

外来での心臓リハビリテーションのほか、当院では循環器予防外来を設置しています。

当院では、退院後半年から1年ぐらい外来に通っていただき、状態が落ち着いてきたら、患者さんの自宅近くのクリニックを紹介することがあります。ただ患者さんの中には、クリニックでは専門的な検査や診療ができないのではないかと不安に思われる方もいらっしゃいます。そういった場合に活用いただけるのが、循環器予防外来です。

普段はクリニックを受診し、当院では年に1~2回のペースで必要な検査を行って状態を確認します。そのうえで、クリニックの先生に結果をフィードバックするシステムです。

心不全だけでなく高血圧症脂質異常症の患者さんに対しても同様に、動脈硬化の専門的な検査などを行い、フィードバックをしています。

また当院では心不全外来を設置しています。心不全外来は、特に入退院を繰り返すような重症の心不全の方や、通常とは異なる特殊な心不全の患者さんに対する特殊外来です。しっかり集中して診ていくことで、症状悪化や再入院の防止に貢献したいと考えています。

当院は心臓リハビリテーション専門のスタッフによるチームを作り、入院中のみならず外来でもリハビリを提供できるように取り組んできました。経験を重ねたスタッフが対応しますので、安心して通っていただけるのではないかと考えています。外来での心臓リハビリテーションにご興味がある方は、ぜひ気軽にご相談いただけると幸いです。

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