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心不全とはどんな病気? 原因や症状を知って予防しよう

心不全とはどんな病気? 原因や症状を知って予防しよう
小室 一成 先生

日本循環器協会 代表理事、東京大学院医学系研究科 内科学専攻器官病態内科学講座 循環器内科学 教授

小室 一成 先生

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心不全は、心臓のはたらきが低下して、全身に十分な量の血液を送り出せなくなり、体を動かしたときの息切れや、むくみなどが起こる病気です。ときに命に関わることもあります。実は、心不全の原因にはさまざまなものがあります。心臓の病気だけではなく、高血圧糖尿病などの生活習慣病も、心不全の原因となることがあります。

今回は、心不全とはどのような病気なのか、日本循環器学会 前代表理事の小室一成先生に伺いました。

日本循環器学会と日本心不全学会は、心不全を次のように定義*しています。

「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

心不全を完全に治す方法は見つかっていないため、ひとたび発症すると状態は徐々に悪くなっていき、命に関わってきます。しかし、心不全について非常に重要なことは、発症を予防、または病気の進行を予防できる病気だということです。そのため、心不全とはどのような病気なのか理解したうえで、一人ひとり予防に努めることが大切です。

*一般社団法人日本循環器学会『心不全の定義』記者発表について(2017年10月31日)

心不全は、年を取れば取るほど、発症する確率が高くなります。そのため、高齢の患者さんが多く、「お年寄りは心不全の予備軍」といっても過言ではありません。

また、もともと男性に多くみられる虚血性心疾患心筋梗塞(しんきんこうそく)狭心症)という病気が原因となり、心不全を発症することが多いので、女性よりも男性に多くみられます。しかし、高齢者では女性の心不全患者さんも多くなっていきます。

現在、心不全の患者さんは全国で増え続けています。2005年時点で、日本全体で患者数は約100万人と推計されており、少なくとも2035年までは増え続け、約132万人に達すると予想されています。

あらゆる心臓疾患や循環器疾患が進行して、最後にたどり着く病気が、心不全です。ここでは、心不全の原因となる可能性がある病気について説明します。

虚血性心疾患とは、心筋梗塞狭心症など、心臓に十分に血液が行き渡らなくなる病気の総称です。虚血性心疾患によって亡くなる患者さんもいらっしゃいますが、虚血性心疾患が進行して、心不全を発症する患者さんも多いです。

心不全は、高血圧が原因で発症することがあります。高血圧の患者さんは、治療せずに高い血圧が持続すると、心臓が肥大し拡張機能が低下します。その結果、収縮機能が保たれた心不全“HFpEF(ヘフペフ)”を発症します。さらに長期間高血圧が持続すると収縮機能も低下し、収縮機能が悪い心不全“HFrEF(ヘフレフ)”を発症します。また、高血圧は心房細動や虚血性心疾患、慢性腎臓病の原因にもなるので、最終的に心不全になる可能性があるのです。

糖尿病は、心不全とは直接関係がないように思われるかもしれません。しかし、実は、心不全と密接に関わっている病気です。心不全は、先に述べたように、心臓の拡張機能が悪いHFpEFと、収縮機能が悪いHFrEFという2種類に分けて考えられます。糖尿病の患者さんは、動脈硬化が進みやすいので虚血性心疾患になりやすく、その結果としてHFrEFになります。そして、心臓の拡張機能が悪いことからHFpEFにもなりやすいことが分かっています。

心筋症とは、心臓を構成する筋肉である「心筋」の病気のことです。心臓の肥大が顕著な「肥大型心筋症」と、収縮機能が低下し心臓が拡張する「拡張型心筋症」の2つが主となります。肥大型心筋症は危険な不整脈が起こることのある病気として知られていますが、一部は拡張型心筋症様に移行し、心不全を発症します。拡張型心筋症では重症の心不全になる可能性があるので、早期からの治療が重要です。

弁膜症とは、心臓の中の血液の逆流を防ぐ「弁」に障害が起こる病気です。弁膜症の患者数は推定200万人以上といわれており、とくに高齢者の弁膜症患者数が増加傾向にあります。病気が進行すると、心不全になります。

不整脈とは、脈が速くなったり遅くなったりして、心臓が規則正しいリズムで動いていないことを示します。不整脈にはさまざまな種類がありますが、そのほとんどは心配する必要のないものです。しかし、不整脈で命を落とす患者さんや、心不全になる患者さんもいらっしゃいます。とくに、不整脈の中でも「心房細動」は、脳卒中の原因としても知られていますが、それ以上に心不全になることが多いです。心不全の患者さんも不整脈を起こしやすい傾向があり、この2つの病気は密接に関わっています。

赤ちゃんのおよそ100人に1人は、先天性心疾患と呼ばれる心臓に問題を持った状態で生まれてきますが、近年では医学の進歩により、心臓に問題を持って生まれた方でも成人を迎えられることが多くなってきました。しかし、心臓に大きな異常がある場合は完全に治療することが難しく、心不全に進行する患者さんもいらっしゃいます。

がんを治療するために実施した抗がん剤の治療によって、心不全を発症することがあります。ほとんどの抗がん剤には、心臓に悪い影響を及ぼす「心毒性(しんどくせい)」があるからです。近年では医療の進歩により、がんにかかっても長生きできる患者さんが増えた一方、心不全の発症にも注意が必要になっています。

心不全の症状には、さまざまなものがあります。なかには、疲れやすい、眠れないといった、心不全以外の病気でもみられる症状もあります。ここでは、心不全と自覚しやすい主な症状を説明します。

心不全の典型的な症状は、動いたときの息切れです。たとえば、坂道や階段を上っているときに、息切れを起こすことがあります。年を取ると、どなたでも息切れしやすくなるものですが、急に息切れがひどくなったという場合、年齢によるものではなく心不全になっているかもしれません。

重症の心不全の場合、階段や坂道だけでなく、ただ普通に歩いていても息切れが起こります。また、食事中や、横になって寝ているとき、じっとしているときなどにも、息苦しさを感じることがあります。

体重が1週間で2kg以上増えると、心不全の可能性があります。心不全は、心臓のはたらきが低下して血液の流れが悪くなり、体に水分がたまってしまう病気です。そのため、急激な体重の増加がみられたときは、心不全によるものの可能性があります。

高齢者は、食事摂取の増加により急に体重が増えることはほとんどありません。たとえば、70歳代や80歳代といったご高齢の方で、短期間に2~3kg体重が増えたというとき、それは脂肪や筋肉がついたというよりも水分の貯留によるものの可能性が高く、心不全を疑います。

また、体重が減ったからといって、心不全の可能性がないわけではありません。高齢者の場合、心不全になると食欲がなくなり、かえって体重が減る患者さんもいらっしゃいます。

夜、トイレに行くために起きてしまうことも、心不全の特徴です。高齢者は眠りが浅く、夜間に目が覚めるものですが、トイレに何回も行き、そのたびに尿がたくさん出る場合、心不全の可能性があります。心不全になると、昼間のうちに全身にたまった血液が、寝ているときに心臓に返ってきて、腎臓でろ過されて尿として排出されるからです。何回もトイレに行っているのに尿が出にくいという場合は、むしろ心配しなくてよいことが多いです。

心不全がどのような病気なのか、よく知っているという方は少ないと思います。心不全の原因や症状を知って、「もしかして、私は心不全?」「家族は心不全かも?」と気付いていただくことが重要です。もし、気になる症状があるときは、近所の医療機関にかかって医師の診察を受けるようにしてください。

医療機関では、心不全の可能性が考えられる場合、問診や聴診、レントゲン検査などを行います。さらに、血液検査を行い、心臓から分泌されるホルモンであるBNPの数値を測定します。BNPは、心臓のはたらきが低下すると数値が上昇します。血液検査の結果、BNPの数値が正常の範囲内であれば、心不全を発症していないと考えることができます。

ご高齢の方や、糖尿病高血圧のある方で、「階段を上ったら息苦しくなった」などの症状に気付いたり、ご家族が息苦しさを訴えられていたりしたら、心不全かどうかを調べるためにも、医療機関で医師の診察を受けてください。

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