概要
拡張型心筋症とは、心臓が通常よりも大きくなってしまい、血液を適切に全身に送ることができなくなってしまう病気です。発症すると、少しの運動での疲れ・手足の冷え・むくみなどを自覚するようになり、重症になると日常生活を送ることもままならなくなります。
拡張型心筋症は遺伝子異常に関連したものや、ウイルス疾患に関連したものなどさまざまです。同じ拡張型心筋症であっても原因や病気の進行度は異なり、治療方法もそれに伴って変わります。心臓移植といった大きな治療を要することもあれば、内服薬やペースメーカーの使用などでコントロールすることが可能な場合もあります。
原因
拡張型心筋症の原因は、分かっていない部分が多々あります。現時点では、遺伝子の異常・ウイルス感染・自己免疫性疾患などが関与していると考えられています。特に、小児期に発症する拡張型心筋症は、遺伝子の異常が原因となっているケースが多いと考えられており、一般的に予後は不良といわれています。このような背景もあるため、特に小児の拡張型心筋症の場合は、専門家の指導のもとで早期に対応することが望ましいといわれています。
症状
ごく初期の場合には自覚症状がないこともあります。しかし、病状が進行すると、倦怠感や動悸、少しの歩行や階段の上り下りでの息切れ、むくみや食欲低下などを自覚します。そのほか、夜間就寝中に症状が悪くなる傾向があり、夜間に呼吸困難や咳などがでます。
さらに、全身の臓器障害によって、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や尿量の減少といった症状が出ることもあります。心臓の中に血栓(血液の塊)が形成されてしまい、それに関連した脳梗塞を起こすこともあります。
検査・診断
血液検査から画像検査、カテーテル検査などさまざまな検査が行われます。
血液検査
BNPと呼ばれる項目を測定し、心不全の状態を評価します。また、臓器障害を評価するために腎機能や肝機能項目のチェックも重要です。さらに、心臓拡張の原因となりうる糖尿病などの代謝疾患や中毒などの評価も検討されます。
レントゲン写真・心エコー・CT・MRIなどの画像検査
レントゲン写真では心臓の大きさや肺のうっ血具合、胸水の評価などを行うことができます。心エコーでは心収縮機能の低下を評価することができるほか、逆流が生じていないか、血栓が心臓の中に形成されていないかなども評価できます。
CTやMRIはさらに詳細に心臓の状態を確認することができ、長期的な予後の予測にも有益な検査です。
心電図検査
不整脈を評価するために心電図による検査も行われます。短期間の記録に留まらず、ホルター心電図や、イベント心電図、植え込み型心電計を用いて長期間(1日から数年)心臓の脈を観察することもあります。
さらに、心臓のカテーテル検査が行われることもあります。この検査では心臓の機能や血行動態(心臓が送り出す血液の量とその流れ方)を細かく評価することができ、冠状動脈(心臓に血液を供給する血管)の評価も同時に行うことができます。また、心筋生検(心筋細胞を採取して、その細胞を調べる検査)を行い、心臓の形態評価を通して予後の予想に役立てることができます。
運動負荷検査を行い、日常生活における重症度を評価することもあります。そのほかにも遺伝性疾患として発症していることもあるため、遺伝子検査を行うこともあります。
治療
内服薬や体内に固定するデバイス、心臓移植などがありますが、症状や病態に応じて治療方法が選択されます。
内服薬としては、β遮断薬やACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬が中心となり心不全の軽減に効果を発揮します。そのほか、むくみや不整脈などの症状に対応するために、利尿剤や抗不整脈薬が使用されることもあります。
ペースメーカーや除細動器といったデバイスを体内に留置することもあります。CRT(ペースメーカーの一種)も急速に普及しつつあります。これらの治療で改善しない場合に、心臓移植が検討されることになります。心臓移植の際には、移植までの生命維持のため、人工心臓が使用されることもあります。
拡張型心筋症では予後を予測しながら、治療・経過観察を行うことが重要です。適切な治療方法を決定するためにも、拡張型心筋症の患者さんはできる限り専門家の指導のもと、適切な診断と治療を受けることが望ましいです。
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不整脈が気になるので病院に行こうと思います
不整脈が気になって自分で循環器科に行く場合(救急車とかではなく) 最悪のケースってどの辺まで想定しておけばいいでしょうか 父が拡張型心筋症なので遺伝も心配で… 来月の旅行とか引っ越しとかの計画がダメになっちゃうかなとか これから仕事どうしようかなとか 子供産めないなら彼氏とも別れなきゃとか 考えれば考えるほどどんどん不安になってしまいます ちなみに症状は 失神とかめまいはなく、数拍おきに脈がピョコッピョコッっと飛んで、胸騒ぎがします。 数えられないくらいの回数ですが、おそらく多分10000発あるかないかじゃないかなぁと推測します。
拡張型心筋症について教えてください
拡張型心筋症についてです 患者数は1万人あたり1〜2人というのをネットで検索して見たのですが、 血縁者に拡張型心筋症の患者がいる場合の罹患する確率ってどれくらいになるのでしょうか。 また、例えばくも膜下出血だと、事前に検査して脳血管の手術をして予防することもできると聞きましたが、 拡張型心筋症にはそのような予防法とかはありませんか?? 父が拡張型心筋症です。 私は不安神経症を持っているため、私はいつ発症するのだろうと恐怖で頭がおかしくなりそうです。 (発症したら根治はない病気だと聞いているので、早期発見できたからラッキーとは思えません…)
拡張型心筋症の遺伝について
父が拡張型心筋症です 現在67歳で、15年ほど前に入院して以来は特に入院などはせず、 自宅で服薬しながら生活をしています。 拡張型心筋症は予後が悪い病気だと知りました。 父のことももちろん心配ですが、私も遺伝するのでは、と、とても不安になっていますが、まさか当事者の父がいる場でそれを言うこともできず… 不安神経症もあるため、怖くて怖くて仕方ありません。 遺伝しやすいものなら、私自身の結婚や出産も諦めようかなと思ってしまいます。 どれくらいのリスクを覚悟したりすればいいでしょうか。 また、具体的な予防法などあるのでしょうか、
治療方法、方向性、何か出来る事、した方が良い事を教えて頂きたいです。
約4ヶ月前の夜中に動悸と息苦しさで目が覚める所から始まり、病院へ行き、心エコーや心臓カテーテルなどの検査を経て、心臓の肥大やEFが30前後、ということで拡張型心筋症の疑いで現在に至っております、(心筋を取ってくる検査?はしてないのであくまで疑いということだと思います。) 症状?異変?が出てからの治療という事もあるかと思いますが始めの1、2ヶ月は体調が良くない日が多く、その後はまずまず調子が良い日もあったり悪い日が4、5日続いたりと不安定な日々を過ごし、家族や職場仲間にも迷惑をかけてる現状です。ここ数日も軽い息苦しさや動悸やしんどさがあるので毎日不安で不安でいっぱいです。同じ病気の方の中にも、無理をしなければほぼ普通の状態で生活されてる方も多数おられるようで…、4ヶ月経ちまだ症状が落ち着かないのが今後半年、一年と経てば症状出なくて普通に過ごせる日が来る可能性があるのか、薬を飲む以外に何か出来る事はないのか、そもそも今の薬は体に合ってるのか、今日のようにしんどさや動悸がある時に飲むような即効性のある薬なないのか、など小さな事でも結構ですので何かアドバイスしていただける事があればご教授お願い致します。
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