インタビュー

特発性拡張型心筋症の原因や症状とは?

特発性拡張型心筋症の原因や症状とは?
北風 政史 先生

阪和第二泉北病院 院長

北風 政史 先生

この記事の最終更新は2017年11月08日です。

心臓は、全身に血液を送り出す役割を担っています。特発性拡張型心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)の収縮する力が弱まることによって、心臓が拡張してしまう疾患を指します。

10万人あたり7〜14名程度(出典元:1999年の厚生省の全国調査)と発症頻度は多くありませんが、その一方、心臓移植適応症例の80〜90%を占めることなど、重症化しやすいという特徴があります。

今回は、国立循環器病研究センターで厚生労働省の「特発性心筋症に関する調査研究班」班長を6年間務められた北風 政史先生に、特発性拡張型心筋症の原因や症状についてお話しいただきました。

心臓の働きが不十分であるために浮腫(ふしゅ)や呼吸困難など全身の症状が現れる状態を心不全と呼びますが、特発性拡張型心筋症は心不全の状態を呈する疾患の一つです。

心臓は、収縮と拡張を繰り返しながら全身に血液を送り出し、全身の恒常性を維持します。特発性拡張型心筋症とは、この心臓の筋肉(心筋)の収縮する力が弱まることによって、心臓が拡張してしまう疾患を指します。心臓の左心室と右心室のうち、特に左心室に拡張がみられるケースが多いですが、右心不全を有することもまれではありません。

主な症状は疾患の進行に伴い変化していきますが、主に易疲労感(通常労作でも疲れやすく感じること)や動悸、呼吸困難、浮腫や不整脈などの症状が現れることがわかっています。心臓

特発性拡張型心筋症の発生頻度は、人口10万人あたり7〜14名程度といわれています。これは、心不全の状態を呈する心疾患のなかの10〜20%程度であり、発生頻度としては少ないと考えられています。

しかし、その一方、特発性拡張型心筋症は心臓移植の適応症例の80〜90%を占めており、重症化しやすい疾患であるといえるでしょう。

1999年の厚生省の全国調査では、特発性拡張型心筋症の患者さんは全国で1万7,700名と報告されています。しかし、医療機関を受診されていないため正確な診断がついていない患者さんも少なからず存在しており、実際の患者数はもっと多いことが見込まれています。

特発性拡張型心筋症は、幅広い年齢層で発症する可能性があります。5〜10歳の小児の時期に発症するケースもありますし、10〜20代の若年期に発症する方もいます。さらに、60歳以上の高齢で発症される患者さんも少なくありません。

私は、このように幅広い発症年齢は、特発性拡張型心筋症の原因が多岐に渡ることを意味していると考えています。これは推測になりますが、たとえば、Aという原因であれば若年期に発症しやすく、Bという原因であれば高齢になってから発症しやすい、というように原因によって発症年齢が異なるのではないでしょうか。遺伝的な因子が関与することも報告されており、異なる遺伝子異常により発症年齢が異なる可能性も考えられます。

また、特発性拡張型心筋症の患者さんには、男性がやや多いといわれています。しかし、男性に特有の遺伝子が関与しているなど男性のほうが多い理由は明らかになっていません。

このため現状では、男性のほうが社会進出している割合が高いために健康診断などで発見されやすいことや、体力を使う場面が多いために症状が現れやすいなどの要因が推測されています。

特発性拡張型心筋症の原因は、未だ明らかになっていません。しかし、何らかの遺伝的因子が関係するケースがあることはわかっており、遺伝子に関連した発症が3割、遺伝子に関連していない発症が7割といわれています。

また、原因の一つとして、ウイルス感染が関与するケースがあることがわかってきています。これは、拡張型心筋症の患者さんの心筋細胞の遺伝子を解析すると、遺伝子の中にコクサッキーウイルスやインフルエンザウイルスなど、ウイルスの成分が組み込まれているケースがあるからです。しかし、これはあくまで推測に過ぎず、疾患の原因であるかどうかまではよくわかっていません。

ほかにも、免疫担当細胞であるT細胞やB細胞の異常など、免疫システムの異常によって発症するという説や、代謝の異常によって生じるという説もあります。

心臓は左室と右室に分かれていますが、このうち特発性拡張型心筋症の患者さんが障害されるものは主に左室です。左室が障害されると、全身に十分な血液を送り届けることができなくなった結果、全身症状が現れます。

全身症状の例として、発症の初期には、易疲労感や、動悸、呼吸困難感などが現れるでしょう。

また、全身の血液を心臓に集める働きを持つ右室も障害されてくると、浮腫が起こります。全身がむくみ、水分が溜まるために1日に2〜3キロほど体重が増加するケースもあるといわれています。

ペイレス

NYHA(New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)分類とは、自覚症状から心不全の重症度を分類した指標です。ここでは、NYHA分類に沿って、特発性拡張型心筋症の進行とそれに伴う症状について、さらに詳しくお話しします。

Ⅰ度

I度は、心臓の拡張など疾患は進行しているものの何も症状は現れない段階を指します。

Ⅱ度

Ⅱ度は比較的軽症のⅡSと重症のⅡMに分けられます。ⅡSになると、運動をした際に疲労感を感じるようになります。たとえば、それまで1時間運動してもそこまで疲労感を感じることがなかったような方が、30分運動するだけで息が切れてしまうような状態を指します。ⅡMになると、階段を上っただけで息切れするようになったり、より短時間の運動で疲労を感じるようになります。

Ⅲ度

Ⅲ度になると、日常生活の作業で疲労を感じたり、動悸や呼吸困難が現れるようになります。たとえば、入浴や階段の上り降りすら辛く感じてしまいます。

Ⅳ度

重症のⅣ度になると、安静時にも疲労や動悸、呼吸困難、胸痛などの症状が現れるようになります。

自覚症状は、日常生活に支障が出てくるNYHA分類のⅡ度やⅢ度で現れることが多いので、Ⅱ度やⅢ度で病院を受診される方が多いかもしれません。

しかし、特発性拡張型心筋症の進行には個人差が大きく、なかには数か月でI度からIV度に悪化してしまう方も存在します。そのため、重症化のリスクを防ぐためには早期発見・早期治療が何よりも重要になります。

最初は、かかりつけの先生でも構いません。疲れやすさや動悸など異常を感じることがあれば、なるべく早期に病院を受診していただくことが重要になります。

特発性拡張型心筋症の治療法確立を目指す取り組みに関しては、記事2『特発性拡張型心筋症の治療法確立を目指して』をご覧ください。

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