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狭心症に対するカテーテル治療「PCI」とは
公開日 2019 年 02 月 04 日 | 更新日 2019 年 02 月 04 日
- 狭心症


医療法人 札幌ハートセンター 理事長 最高経営責任者(CEO)
藤田 勉 先生
目次
- 狭心症に対してPCIが行われるケースとは?
- PCIの流れ―バルーン拡張とステント留置の2段階
- 冠動脈周辺の石灰化が著しい症例に対する応用
- PCIのリスクはどのくらい?
- PCIの治療後、日常生活での注意点
心臓カテーテル治療を中心にした医療を行う札幌心臓血管クリニックでは、狭心症におけるPCI(経皮的冠動脈形成術)を積極的に実施しています。PCIは幅広い狭心症の症例に適応される比較的侵襲性の低い治療法で、ステント留置の導入および器具の進歩により血管の再狭窄の可能性も減ってきているといいます。一方で、技術や機材が進歩する中でも、治療後は自己判断で処方薬を中断しないことも再狭窄を防ぐ上で大切です。狭心症におけるカテーテル治療、PCIや治療後の注意点について、札幌心臓血管クリニック理事長の藤田勉先生にお話しいただきます。
狭心症に対してPCIが行われるケースとは?
PCIは、軽度の狭窄の方から3本全ての冠動脈が障害されている方まで幅広く適応される治療法です。冠動脈の3本全てに狭窄がみられる場合は原則的に冠状動脈バイパス術が適応されますが、PCIのほうがより安全に治療できると見込まれる場合は、後者を選択することがあります。
PCIの流れ―バルーン拡張とステント留置の2段階
札幌心臓血管クリニックでは狭心症の患者さんのほとんどにPCIを実施しています。
手首、肘、太ももの付け根などから挿入したカテーテルを狭窄部まで通し、ガイドワイヤーに沿ってバルーンを病変部まで進めます。バルーンが病変部に到達したら、バルーンを膨らませて血管を拡張させます。拡張に成功した後は、血管内にDES(薬物溶出性ステント:血管の再狭窄を防ぐ薬剤が塗布されたコイル状の金属)を留置することもあります。広げられた血管は拡張したまま内側からステントで支えられる形になるため、再狭窄しにくくなります。
冠動脈周辺の石灰化が著しい症例に対する応用
当院におけるカテーテル治療の特徴は、ロータブレーターやエキシマレーザーなどの機器を積極的に用いていることです。これらの医療機器は、石灰化を起こして通常よりも血管が硬い場合など、複雑な症例にも対応できます。
ロータブレーターとは
ロータブレーターは、石灰化した血管の拡張に有効です。先端には非常に小さなダイヤモンド粒子が付着しており、この部分を冠動脈内で高速回転させることで、石灰化した部分や硬い狭窄病変のみを削り取ることができます。
石灰化で血管が硬くなっている場合、通常のバルーンだけでは十分に血管を拡張させることが困難ですが、ロータブレーターで石灰化した硬い部分を削ると、バルーンがきれいに広がります。バルーンが正しく広がることで治療後の再狭窄も低く抑えることができます。なおロータブレーターは、柔らかい組織を削りにくいように設計されているため、正常な血管を傷つけにくくなっています。
PCIのリスクはどのくらい?
ステントの安全性と再狭窄の可能性
従来のPCIに用いられていたステントには狭窄を防ぐための薬剤が塗布されていなかったため、冠動脈の再狭窄が問題視されていました。しかしDESの導入によって、再狭窄の確率は減少してきています。2011年日本循環器学会発表のガイドラインでは、通常のステント留置を行った場合の再狭窄率が20~30%であるのに対し、DESの再狭窄率は10%以下という結果が明らかにされました。
再狭窄を見極めるポイントは?
しかしながら、まれに冠動脈に再狭窄が生じてしまうケースがあります。再狭窄を見極めるポイントは症状の有無です。狭心症の患者さんでPCIを受ける前と同じように胸の圧迫感や痛みを感じた場合、再び血管が狭くなって心臓に酸素が届いていない可能性があります。少しでも症状を自覚した場合は直ちに病院に連絡してください。
ステント留置における長期的な安全性がわかっていないこと、ステント留置後に抗血小板薬の内服が必要になることなど、PCIによる治療には改善の余地があります。今後はこの問題を解決し、より安全性の高い治療法を導入していく必要があると考えます。
合併症が起こる頻度は着実に減少してきている
個々の症例や病態によっては、心筋梗塞、脳血管障害、末梢血管障害、出血、閉塞、動脈瘤などの重篤な合併症を引き起こす可能性もゼロではありません。しかし、治療技術の進歩に伴い治療後に合併症が起こる頻度は着実に減少しています。
いくら統計的に合併症の頻度が低いといっても、もしも合併症が起こってしまったら、その患者さんにとってはその確率は100%といえるでしょう。合併症対策こそ万全にすべきという考えのもと、当院では症例のデータやエビデンスをもとに入念な対策を講じて、合併症のリスクをできる限り減らすことに努めております。
PCIの治療後、日常生活での注意点
薬の服用を自己判断でやめないこと
治療後、患者さんにお願いしたい注意点は、自己判断で薬の服用を中断・中止しないことです。処方されている薬が合わない、服用が困難などの理由で薬の服用をやめたい場合は、事前に医師に相談してください。自己判断による薬の中断・中止は再狭窄のリスクを伴うためです。
禁煙すること
狭心症の治療には禁煙が必須です。日本循環器学会によれば、喫煙が狭心症を誘発することが明らかにされており、特に冠攣縮性狭心症では禁煙による予防効果が高いとされています。
患者さんご自身が喫煙されている場合は禁煙していただき、ご家族に喫煙者がいる場合は受動喫煙を防ぐためにご協力をお願いする必要があります。
食生活に注意を払うこと
高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症、過度な飲酒も狭心症の発作を招く恐れがあります。食事量と飲酒量に注意して、バランスよく食べることを意識してください。適正体重を維持することが大事です。
上記以外に特別な制限や注意点はなく、普段通りの生活を送っていただけます。
狭心症(藤田 勉先生)の連載記事

医療法人 札幌ハートセンター 理事長 最高経営責任者(CEO)
藤田 勉 先生
旭川医科大学医学部を卒業後、国立循環器病センターや札幌東徳洲会病院で長年、冠動脈疾患におけるカテーテル治療に携わる。2008年に札幌心臓血管クリニックを開業し、「患者さんに負担をかけない、断らない医療」を掲げ、北海道全域から患者さんを受け入れている。若手医師の教育にも力を注いでおり、カテーテル技術・研究の両側面で独自の支援体制を強化し、後進を導く。
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