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狭心症の診断で重要な心臓カテーテル検査とは? 治療に向けたさまざまな検査を紹介

狭心症の診断で重要な心臓カテーテル検査とは? 治療に向けたさまざまな検査を紹介
メディカルノート編集部 [医師監修]

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この記事の最終更新は2019年06月28日です。

狭心症の主な症状は胸痛(胸が押しつぶされるような痛み)です。患者さんの多くは、胸痛発作が起こってから病院を受診されます。症状が出ている場合は心電図やCT、心臓カテーテル検査(CAG)など多様な検査を行い、他の病気との鑑別診断をつけていきます。狭心症の検査の流れについて、確定診断のために重要になる心臓カテーテル検査やその補助検査を中心に解説します。

狭心症が疑われる場合、まず行われるべき検査は心電図(運動負荷心電図やホルター心電図など)と冠動脈CTです。

心電図では、心臓の異常の有無をはじめ、虚血の重症度や治療方針などを確認します。労作性狭心症の場合は安静時の心電図のみでは発見しづらいため、運動負荷心電図やホルター心電図(携帯型の心電計を患者さんに装着し、24~48時間にわたり心電図を計測する方法)を行う場合もあります。CTでは比較的低侵襲(身体的負担が少ないこと)に、冠動脈の石灰化や内腔狭窄の程度を評価することができます。

これらの検査の結果、狭心症の可能性が高いと判断された場合は、心臓カテーテル検査(CAG)を行います。

糖尿病高血圧などの基礎疾患をお持ちで通院中の方は動脈硬化をきたすリスクが高いため、当院では無症状の時点から定期的に心臓の状態をチェックしています。

心臓カテーテル検査(CAG)とは、造影剤を用いて冠動脈に流れる血液の様子を映し出し、動脈硬化の生じている箇所を確認する検査です。狭窄の存在と位置を確認できるだけでなく、狭窄の度合い、分布に至るまで、冠動脈全体を評価することができます。

まず、足の付け根にある動脈(大腿動脈)または手首の動脈(橈骨(とうこつ)動脈)から細い管(カテーテル)を挿入し、冠動脈の中まで進めます。次に、レントゲンで確認しながら挿入したカテーテルに向かって造影剤を流し入れ、その状態で撮影を行います。レントゲン撮影によって血流の様子が確認できるので、動脈硬化で狭窄している部分を把握することができます。

心臓カテーテル検査は基本的にCT検査で動脈硬化を確認できた方が適応となります。

ただし、心電図に明らかな異常がみられる場合や、不安定狭心症で安静時にも症状が繰り返される場合は早急な対応が必要と判断し、CT検査を経ずに心臓カテーテル検査を行うことがあります。

心臓カテーテル検査では造影剤(ヨード造影剤)を使用するため、腎機能に障害のある方や造影剤アレルギーの方など、造影剤による負担が大きい方には実施できません。ただし、心臓には腎臓病患者さんへの透析療法のように機能を補充できる機器がないので、緊急性が高い場合は、検査による救命効果と腎機能悪化のリスクを比較検討したうえで心臓カテーテル検査を行う場合があります。

一般的に、心臓カテーテルの検査そのものにかかる時間はおよそ15~30分で、局所麻酔下で行われます。検査後の労作は大量出血につながる恐れがあるので、検査時および検査後は安静にしてきちんと止血することが大事です。

※受付、事前準備、検査後の止血時間を除く

先に述べた通り、検査時・検査後の出血には注意しなければなりません。心臓カテーテル検査では動脈から管を通すため、一度血が噴出してしまった場合、止血しなければショック状態に陥る恐れもあります。

また、腎機能が低い方にカテーテル検査を行った場合は、造影剤による腎臓へのダメージを減らすため検査前後に点滴を行って、可能な限り早く造影剤を体外に排出することを目指します。

心臓カテーテル検査時には、冠血流予備量(FFR)検査を併用する場合があります。FFRとは、冠動脈にかかる内圧を狭窄の手前側・奥側の2か所で測定して狭窄の機能的重症度(どのくらい狭窄が起きているか)を評価することで、その冠動脈狭窄が本当に心筋虚血の原因になっているかを判断する指標です。正常な血管が心筋に送る血流を1.0と定めたとき、たとえばFFRの値が0.9の場合は、正常な血流量の90%が確保できていることになります。

過去の研究では、FFRの結果が0.75以下の場合は機能的に虚血状態であり、カテーテル治療やバイパス術などの血行再建術の適応を検討することが示されています*

*Pijls NHJ, et al. N Engl J Med 1996; 334: 1703-1708

また、厚生労働省では、FFRが0.8以下の場合に機能的虚血の存在を認め、0.75以下の場合にカテーテル治療などの血行再建術を適応することを定めています

※診療報酬上の血行再建術の算定要件は75%以上の狭窄病変

コレステロールは全身に存在する細胞膜構成物質で、人体に欠かせない成分ですが、LDL(悪玉)コレステロールが高い状態は動脈硬化を起こしやすくなります。狭心症の患者さんの場合、一度冠動脈狭窄を治療しても、高コレステロール血症を改善しなければ再び血管狭窄が起こりかねません。

2016年に発表された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では、狭心症などの動脈硬化性疾患の二次予防のために、冠動脈狭窄が認められたハイリスクな患者さんに対してLDLコレステロールの目標値を70 mg/dL以下にすることを定めています。正常な方のLDLコレステロールの基準値は120mg/dL未満(140mg/dL以上で要注意、180mg/dLで異常)ですから、正常の半分強程度までLDLコレステロール値を下げることになります。

コレステロール値のコントロールには、通常スタチン系薬やコレスチラミンなどの薬剤が用いられます。この薬物療法と並行して、食事内容の見直しなど、生活習慣の改善指導を行います。

血管内超音波(IVUS)は、カテーテル治療(PCIなど)によるステント留置を行う際に補助的に用いられる検査です。

カテーテル治療においてステントを置く位置はとても重要で、プラーク(コレステロールやマクロファージが沈着してできる塊。動脈硬化巣)が多く沈着する地点にステントを着地させたり、ステントが血管内でしっかり拡張していないと、再狭窄につながります。血管内超音波を用いてリアルタイムで血管内部の断層を映し出し、血管の端から端までをくまなく観察することで、病変長、血管の狭窄度、プラークの沈着度、ステントの着地点などをより正確に分析することができます。

※ステント:血管を内側から広げる網目構造の筒状の金属

光干渉断層法(OCT)は血管内超音波と同様に、カテーテル治療時に用いられる補助的検査技術です。

前述した血管内超音波は、血管内断層を映すことはできますが、解像度の限界で石灰化や血栓などの細かい病変を評価することはできません。一方で、近赤外線を利用する光干渉断層法は、血管内超音波検査の約10倍という高い解像度を有します。プラークの性状や内容、内膜にできた細かい傷まで、より詳細に冠動脈内組織を観察できるため、血管内超音波ではみつけられなかった血管内の石灰化や血栓も評価が可能です。

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