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冠攣縮性狭心症の治療には何が行われるの?~薬物療法のほかに、生活習慣を改善することも重要~

冠攣縮性狭心症の治療には何が行われるの?~薬物療法のほかに、生活習慣を改善することも重要~
藤田 勉 先生

医療法人 札幌ハートセンター 理事長 兼 CMO

藤田 勉 先生

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狭心症は原因や症状によってさまざまな種類がありますが、なかでも冠動脈(心臓を取り巻く血管)が収縮して引き起こされるものを冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)と呼びます。

この病気は一過性の血流障害が生じることによって心筋に必要な血液が一時的に不足してしまうため、胸の痛みや不快感などの症状が起こります。異なる原因で生じる“労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)”では運動したときなどに症状が出やすいのに対して、冠攣縮性狭心症では夜間や早朝の安静時に症状が出ることが多いことが特徴です。

このように狭心症には種類があり、それぞれで適切な治療が異なります。そのため、治療の際には医師の指示に従って検査を行い、診断を受けることが大切です。

冠攣縮性狭心症の場合、発作時以外は心電図などの検査を行っても結果が正常であることが一般的です。そのため、まずは発作時と非発作時の“12誘導心電図”の記録を手がかりとします。

ただし、この発作は夜間や朝方に現れやすく、症状が頻繁に発生していない場合は発作時の心電図の記録が困難となります。そこでもっとも有用な検査として、ホルター心電図が挙げられます。これは携帯型の心電計で病院外でも心電図が記録できるもので、24~48時間程度装着して心電図の記録を行います。また、必要に応じて心臓カテーテル検査が行われることもあります。カテーテルとは体内に入れる細い管状の器具のことで、冠攣縮性狭心症の検査においては冠動脈内にアセチルコリンやエルゴノビンといった物質を投与して撮影を行います。

これらの検査で冠動脈の状態を記録・検査することで、冠攣縮性狭心症かどうかの判断が可能となります。また、狭心症の発作を止めるニトログリセリンの舌下の効果があるか否かも診断の目安になります。

冠攣縮性狭心症との鑑別が難しい病気に、微小血管障害型狭心症があります。これは心臓の血管の微小循環を養う血管の障害で起こる狭心症です。ほかの狭心症と同様に胸痛などの症状を引き起こしますが、ニトログリセリンを服用しても効果を示しにくいという特徴があります。

なお、近年は心臓カテーテル検査など医学の進歩により、診断をつけることが可能になってきています。

冠攣縮性狭心症の治療の基本は薬物療法であり、処方されるのは病気自体の治療や発作予防を目的とした薬と、発作時の症状を改善する薬の2種類に分けられます。また、冠攣縮性狭心症のリスクを高める生活習慣の改善を指導します。

薬物療法で使われる薬には、血管拡張薬(硝酸薬(しょうさんやく)カルシウム拮抗薬)があります。血管拡張薬は冠動脈を広げることで血流をよくし、さらに全身の血管も広げることで心臓の負担が軽くなる効果が期待できます。また、重症型ではビタミンEなどが効果的なこともあります。

このような薬は、発作の起きやすい時間に合わせて処方します。

発作時の症状を改善する薬として、スプレーや舌下錠タイプのニトログリセリンが処方されることが一般的です。

痛みなどの発作が現れた際、これを舌の下に含むと粘膜から成分が吸収されて数分程度で痛みがなくなるとされています。ただし、この薬を5分ごとに3回使用しても症状が改善されない場合は重症発作であり、心筋梗塞の可能性もあるため急ぎの受診が必要となります。

適切な治療を行った場合、冠攣縮性狭心症の予後(病気の経過)は比較的よいといわれています。しかし、症状が繰り返されると急性心筋梗塞などの急性冠症候群へ移行することなどによって突然死を引き起こす危険性があるので、調子がよくなっても内服を継続することを忘れてはいけません。

また、動脈硬化が進んだりすると心筋梗塞につながる可能性もあります。そのため、冠攣縮性狭心症のリスクを高める生活習慣の改善は継続的に実施していくことが大切です。

注意が必要な生活習慣としては喫煙、アルコール、ストレスなどがあるため、これらを避けるように心がけましょう。

特に喫煙は、虚血性心疾患狭心症と心筋梗塞症の総称)のリスクを高めるといわれています。また、禁煙によって虚血性心疾患の罹患率や死亡率が低下するといわれているため、禁煙に取り組むことは非常に重要です。また、アルコールは動脈硬化につながることがあり、ストレスは冠動脈の過度な収縮の原因となることがあるため、注意が必要です。

冠攣縮性狭心症が疑われる場合、まずは心電図や心臓カテーテル検査によって診断を確定したうえで治療が行われます。治療では薬物療法が中心となり、患者の状態によって適切な薬が処方されます。さらに、喫煙や飲酒など、リスク因子となっている生活習慣を改めることも重要であり、これは治療だけでなく再発の予防としても欠かせないポイントとなります。

治療について不安や疑問がある場合は、担当医に相談をし、十分に説明を受けるようにしましょう。

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