
従来、心臓の疾患の検査では、カテーテルなどを挿入して血管や心臓全体の検査を行っていました。しかし近年では、画像診断装置の進歩により患者さんに痛みや負担を与えることなく検査を行うことが可能になっています。特筆すべきことは、患者さんの身体的負担が減っただけでなく検査精度が高くなっていることです。この記事では、川崎医科大学付属病院循環器内科教授の上村史朗先生に、最新の虚血性心疾患の検査について解説していただきます。
心エコー図は、超音波を用いて体の表面から心臓の形、働きの異常を検査できる痛みを伴わない代表的な検査です。虚血性心疾患では、障害される冠動脈の部位によって、心臓の動きに局所的な異常が検出されます。最近では、ドブタミン負荷心エコー、スペックルトラッキング法によるストレイン解析(図1)、3次元心エコー検査(図2)などによって、より詳細な病状の把握が可能になっています。
マルチスライスCT (multidetector-row CT: MDCT)という診断装置は、従来のCTに比べ短時間(10秒程度)で動いている心臓全体の情報をスキャンすることが可能です(図3)。
MDCT検査では、造影剤を使いますが、入院の必要や心臓カテーテル検査のような体に対する負担がありません。最新のMDCTを用いた冠動脈病変の検査では、陰性的中率が98~100%と高く、スクリーニング検査として非常に有用だといえます。また、スクリーニング検査だけにとどまらず、冠動脈のステント治療後や冠動脈バイパス手術後の状態に関しても正確に評価できるようになってきました(図4)。
さらに、様々な再構成画像を利用することにより、冠動脈壁や病変部プラークの状態などといった、従来の冠動脈造影では得られなかった新しい情報を得ることも可能となっています。ただし、MDCTも万能ではありません。糖尿病患者さんや透析を受けられている患者さんなどのケースでは心臓の冠動脈に高度の石灰化が存在することがありますが、このような場合には正確な検査ができないことがあります。また、不整脈などで心拍変動が大きい場合も同様です。
さらに最近ではカテーテルによる不整脈治療が行われるようになってきました。心臓CTによって、左心房や肺静脈を仮想内視鏡像を用いて立体的に把握することが可能になり、治療のガイドとして用いられるようになってきています(図5)。
心臓核医学検査とは、放射性同位元素を注射し、心臓に取り込まれた微量の放射線をシンチカメラと呼ばれる特殊なカメラで撮影する検査方法です。従来は困難であった心筋の血流や脂肪酸代謝、心機能、心臓交感神経機能などの検査を行うことができます。
従来、核磁気共鳴(MR)イメージング、脳などの動かない内臓の形態や機能の評価に用いられてきましたが、最近では、動きの大きい心臓への応用が始まっています(図7)。
現在では検査時間がCTに比べてかなり長いという問題点は残されていますが、MRIを用いることによって放射線被ばくの問題がなくなり、さらにCTでは評価困難であった心筋のviability、心筋性状の質的な診断までもが可能となってきました。今後、さらなる改良によって画像分解能が改良されることによって、冠動脈の狭窄、動脈硬化プラークの評価などに用いられることがきたいされます。
このように、「痛みのない診断技術、検査」により多くのことが分かるようになってきました。このような診断技術が進んでいくことがさらに必要です。なぜなら、心筋梗塞を予防するためにも心臓の冠動脈の状態をより正確に把握していくことが重要であるからです。次の記事ではどうして痛みのない診断技術が必要なのか、予防のために重要なのかについてお話ししていきます。
川崎医科大学 医学部循環器内科学教授、川崎医科大学付属病院 循環器内科部長
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