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虚血性心疾患を予防するには ~生活習慣の改善やストレスを避けることが予防につながる~

虚血性心疾患を予防するには ~生活習慣の改善やストレスを避けることが予防につながる~
福田 芽森 先生

慶應義塾大学 循環器内科 共同研究員、日本医師会 認定産業医、アイリス株式会社 臨床開発部、京...

福田 芽森 先生

一般社団法人 日本循環器協会

目次
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虚血性心疾患は、心臓を覆う冠動脈という血管が狭くなったり塞がったりする病気の総称です。多くの場合、動脈硬化が進むことによって冠動脈の狭窄(きょうさく)閉塞(へいそく)が起こります。動脈硬化の進行には生活習慣が大きく関わっていることから、虚血性心疾患を予防するには動脈硬化を進行させる生活習慣を避けることが重要となります。

心臓は心筋という分厚い筋肉で構成され、心筋がポンプのように収縮と弛緩を繰り返して全身に血液を送り出しています。心筋がしっかりと動くためには十分な血液(酸素、栄養)が必要であり、心筋に血液を供給する血管が冠動脈です。

この冠動脈が狭くなったり塞がったりする病気を総称して虚血性心疾患といい、冠動脈が狭くなる狭心症と、完全に塞がってしまう心筋梗塞(しんきんこうそく)に分けられます。冠動脈が狭窄・閉塞する原因の多くは動脈硬化によるものと考えられています。

動脈硬化とは、血管の壁が厚くなったり硬くなったりして、はたらきが悪くなった状態のことです。さまざまな刺激によって血管の内側にある内膜の表面を覆う内膜細胞が傷つき、そこにコレステロールなどの脂肪成分(プラーク)が蓄積することで、血管内が狭くなってしまうのです。狭くなった冠動脈にさらに血栓(血液の塊)が詰まると、冠動脈が完全に塞がり心筋梗塞に至ります。

動脈硬化は高血圧脂質異常症糖尿病などの生活習慣病や、喫煙、肥満、精神的ストレスなどによって進行し、これらの危険因子は生活習慣が大きく関わっています。

虚血性心疾患の原因の多くは動脈硬化であり、動脈硬化を進行させる主な生活習慣として喫煙、バランスの悪い食事、運動不足、精神的ストレスが挙げられます。このような生活習慣を見直すことで動脈硬化の進行を防ぎ、虚血性心疾患の予防につなげることができます。

たばこは虚血性心疾患の大きな危険因子で、非喫煙者と比べて喫煙者は虚血性心疾患の発症リスクが男女共に約3倍、心筋梗塞に限ると男性で約4倍高くなるとされています。その一方で、禁煙することによって2年ほどで発症リスクが半分に、5年経つと吸わない人と同程度にまで下がるといわれています。

たばこは虚血性心疾患だけでなく、脳や肺、消化器の病気、がんなど、実にさまざまな病気の発症を促す強力因子でもあり、副流煙によって周りの人にも害が及びます。自分や身近な人の健康のために禁煙に取り組むようにしましょう。

動脈硬化の危険因子となる高血圧脂質異常症糖尿病、肥満は特に食事の影響が強く、塩分・糖分・脂肪分の取りすぎや、偏った食事内容などによって発症・悪化を招きます。そのため、塩分・糖分・脂肪分の取りすぎに注意し、バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。肥満の人においては食事を減らす取り組みも大切です。

軽い運動を持続的に行うことで虚血性心疾患の予防につながります。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週3~4回30分以上、可能であれば毎日行うのがよいでしょう。ただし、早朝や深夜は日中と比べて冠動脈が収縮していることが多いため早朝や深夜の運動は避け、起床後、1時間程度経ってからがよいでしょう。

精神的ストレスが高血圧の下地になるほか、不規則な生活や暴飲暴食など生活習慣にも悪影響を及ぼします。ストレス因子から離れる、周りの人に相談する、気分転換をするなどして、ストレスをため込まないようにしましょう。

虚血性心疾患の危険因子である高血圧脂質異常症糖尿病などの生活習慣病は、かかっていても症状がないことがほとんどです。そのため、罹患していることに気付かない場合や、罹患していても治療を受けない、あるいは治療を中断してしまう人が少なくありません。

生活習慣病は血圧測定や血液検査といった一般的な検査で診断できます。定期的に検査を受けて早期発見に努め、異常が見られた場合には医師の指示に従って治療を続けていくようにしましょう。

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  • 慶應義塾大学 循環器内科 共同研究員、日本医師会 認定産業医、アイリス株式会社 臨床開発部、京都大学公衆衛生大学院 在学中

    日本循環器学会 循環器専門医・COVID-19対策特命チーム・ACLSインストラクター日本内科学会 JMECCインストラクター日本救急医学会 ICLSインストラクター日本心臓病学会 会員日本超音波医学会 会員日本心エコー図学会 会員

    福田 芽森 先生

    東京女子医科大学医学部を卒業後、国立病院機構東京医療センターで初期研修、同院循環器内科を経て、慶應義塾大学循環器内科に入局、助教を務める。臨床を続けながら、2019年からAI医療機器開発スタートアップ企業のアイリス株式会社に参画、臨床開発に従事。また、予防医療やポジティブ心理学を重んじる観点から産業医業務にも従事。医療情報が玉石混交である情報化社会の中で正しく分かりやすい医療情報を伝えたいという思いで、日本循環器学会広報部会委員としての広報活動や、Yahoo!ニュース個人などでサイエンスライティングも行っている。

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