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公開日 : 2017 年 05 月 26 日
更新日 : 2017 年 05 月 26 日

僧帽弁閉鎖不全症の治療法「僧帽弁手術」とは?心臓外科の名医が解説

目次

心臓の「弁」が狭窄もしくは閉鎖不全を起こして正常に機能しない場合には僧帽弁手術を行います。僧帽弁手術にはいくつかの方法がありますが、それぞれどういった手術方法なのでしょうか。

僧帽弁手術について、海外で数多くの心臓手術を経験し、より負担の少ない(低侵襲な)心臓手術のエキスパートとして数多くの手術実績をもつ明石医療センター 心臓血管外科 心臓血管低侵襲治療センター長の岡本一真先生にお話を伺いました。

僧帽弁手術とは

僧帽弁手術とは

「僧帽弁閉鎖不全症」の患者さんに行われる手術

僧帽弁手術

僧帽弁手術とは、僧帽弁閉鎖不全症の患者さんに行われる手術です。

僧帽弁閉鎖不全症とは心臓の左心房と左心室の間にある弁(僧帽弁)に異常が生じることで、心臓が収縮する際に血液の逆流が起きてしまう疾患です。

正常な心臓は、収縮することで血液を押し出して血液を全身へ循環させます。このとき血液は大動脈に押し出されるため僧帽弁は閉鎖されています。

しかし僧帽弁閉鎖不全症では僧帽弁に異常が生じているため、大動脈から血液が押し出されるときに僧帽弁が完全に閉じません。その結果、僧帽弁が閉じていない部分から血液がもれ、左心室に逆流します。

左心室へ血液が逆流すると左心室の収縮力低下・肥大と拡大、不整脈、心房細動などが生じることがあり、心臓への負担が大きいと判断された場合には治療が必要です。

僧帽弁閉鎖不全症の基本的な治療法は外科療法(心臓手術)です。そして僧帽弁の機能不全を改善する手術を、僧帽弁手術といいます。

「僧帽弁形成術」・「僧帽弁置換術」の2種類がある

僧帽弁手術には主に2つの方法があります。

僧帽弁形成術   患者さん自身の弁を残し、弁やその周囲の形を整える手術

僧帽弁置換術   機能不全が生じた僧帽弁を人工弁に取り替える手術

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僧帽弁手術の方法

僧帽弁形成術や僧帽弁置換術はどのような手術であるか、図を用いながら解説します。

■僧帽弁形成術

僧帽弁形成術は機能不全になった僧帽弁を形成する手術です。僧帽弁の異常は大きく分けて弁輪の拡大後尖の逸脱前尖の逸脱の3つがあります。

僧帽弁手術の形成術と置換術

僧帽弁のどの部分に異常が生じて機能不全が生じているか(血流の逆流が起きているのか)によって手術手法が変わります。僧帽弁形成術では主に下記の手法を使って弁を形成します。それぞれ詳しく説明していきましょう。

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・弁輪形成        :人工弁輪という補強材料を縫着して弁の形状を保てるよう補強する

・弁尖切除    :逸脱した弁の一部を切り取って縫い縮める

・腱索の移植/調整 :腱索(弁を支えている支持組織)を移植・調整する

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【弁輪形成術】

弁輪形成術

弁輪形成術は原則として全例に行われます。

僧帽弁の後尖や前尖が逸脱している場合には弁輪形成術以外の手法を合わせて行いますが、弁輪が拡大している場合は、弁輪形成術のみで弁の機能を回復させることが可能です。

弁輪形成術では、弁の周りがのびて弁輪が拡大している部分に人工弁輪(リング)という補強材をあてて理想的な弁輪の大きさに補正します。リングによって弁の周囲の形を整えることで、弁の機能を回復させることができます。

【弁尖切除】

僧帽弁の後尖が逸脱している場合には、弁輪形成術と弁尖切除という手法を合わせて用いられることが多いです。弁尖切除では弁の逸脱した部分を切除して取り除き、切除部分を縫い縮めることで弁の機能を回復させます。

弁の切除手法には、切除する弁の形によって矩形切除(くけいせつじょ)三角切除砂時計型切除などがあります。

【腱索の移植/調整】

腱索の移植と調整

僧帽弁の前尖が逸脱している場合は、矩形切除が難しく弁形成が困難とされています。そのため、弁の形を整えるのではなく弁と心臓の筋肉を結ぶ、ヒモ状の組織(腱索)を移植・調整する方法で弁の閉鎖不全の改善を図ります。

また僧帽弁前尖の逸脱以外にも、腱索の付け根にある乳頭筋が伸びる腱索が切れることで弁の機能が低下した場合にも腱索の移植・調整が行われます。

腱索の移植・調整を行う手術を人工腱索再建術といいます。人工腱索再建術では腱索の代わりとなる糸(人工腱索)をつかって、弁と乳頭筋をつないでいきます。この手法によって腱索が再建されることで弁が支えられ、弁の機能を回復できます。

どういった形成をするかは患者さんの弁の状態によって異なります。それぞれの弁の異常に合わせた形成を行い、閉鎖不全を改善することで僧帽弁の機能を取り戻すことができます。

■僧帽弁置換術

僧帽弁置換術

僧帽弁置換術では僧帽弁を人工弁に取り替えます。人工弁には生体弁機械弁があります。

【生体弁】

生体弁は、ウシの心膜やブタの心臓弁などを加工して作られている弁です。

生体弁の最大のメリットは、血栓ができにくく、抗凝固薬の服薬が短期間である点です。

置換した弁に血液が付いて固まると、血栓(血液の塊)ができてしまいます。血栓は血流によって流され血管に詰まることで、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を引き起こす可能性があります。そのため血栓形成が生じることは非常に危険です。

機械弁の場合、材質が金属であるため弁に血液が付着して凝固する可能性が高く、血栓が形成されやすくなります。そのため機械弁による置換術では手術後に血栓形成を予防するための抗凝固薬を服薬し続ける必要があります。一方、生体弁は弁の材質が生体由来であるため、血液が弁に付着して凝固する可能性が極めて低いです。そのため生体弁では抗凝固薬が必要になるのは手術後の数か月のみで、その後継続的に服薬する必要はありません。抗凝固薬を長期間服薬しなくてよいメリットは非常に大きいといえます。

一方、生体弁のデメリットは機械弁に比べて耐久性が劣るということです。一般的に生体弁は15年前後で硬くなり、動きが悪くなって狭窄や逆流が生じます。そのように弁の機能が低下した場合には再び弁置換の手術が必要になります。生体弁は大動脈弁に使った場合よりも僧帽弁に使った場合のほうが壊れやすいとされているため、生体弁を用いた僧帽弁手術を行う場合には耐久性のデメリットをよく理解することが重要です。

【機械弁】

機械弁は炭素線維やチタンなどを用いて心臓弁と同じように機能するデザインに作られています。

機械弁の最大のメリットは優れた耐久性です。基本的に不具合が生じなければ半永久的に使用し続けることができます。そのため再び弁置換術をしたくないという方は機械弁が推奨されます。

一方で、機械弁には血栓症のリスクがあり、手術後に抗凝固薬を服薬し続けなければいけないというデメリットがあります。抗凝固薬は血栓を形成しにくくすることから出血リスクが高まるため、外傷を受ける可能性が高い仕事に就く方の場合には注意が必要です。また抗凝固薬の効果を適切にコントロールするために、定期的な服薬・受診が必要です。さらに抗凝固薬のなかには催奇形性(妊娠中に服用すると胎児の発育に影響を及ぼす可能性がある性質)を示すものもあり、妊娠の可能性のある女性には推奨されません。こうしたリスクを回避するためには、生体弁を使用することが望ましいでしょう。

生体弁と機械弁、どちらを選ぶべきか

一般的に、若い方は耐久性に優れた機械弁を、高齢者では服薬の負担が軽減される生体弁を選択されることが多いようです。一応の目安としては65歳から70歳より若ければ機械弁、それより年齢が上であれば生体弁をお薦めしていますがこの選択は患者さんの考え方次第で大きく変わるものです。最近は生体弁の耐久性が向上してきたこと、仮に再手術になってもその際のリスクが減ってきたことから、生体弁を使用する年齢はより若くなる傾向にあります。

生体弁と機械弁にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、僧帽弁置換術を行う際には患者さん自身のライフスタイルや希望に合わせて、主治医と相談して決めていきましょう。

僧帽弁置換術と僧帽弁形成術、どちらの手術を行うべきか?

症例にもよりますが、僧帽弁手術のうちの多くは僧帽弁形成手術が行われています。

これまでの僧帽弁手術の歴史を振り返ってみると、以前は僧帽弁形成術よりも、僧帽弁置換手術のほうがより多く行なわれていました。しかし近年では、僧帽弁形成手術のほうが人工弁関連合併症を起こしにくく、左室機能がより維持されることが明らかになり、僧帽弁形成手術の優位性が確立されてきました。こうして現在では僧帽弁手術を行う場合には自己弁温存が可能な限り、僧帽弁形成術を選択するべきだと考えられています。

2014年に発表された日本胸部外科学会学術調査によると、2014年に国家臨床データベースNational Clinical Database(NCD)登録された僧帽弁手術4,851件のうち、僧帽弁形成術と僧帽弁置換術(生体弁・機械弁)のそれぞれの手術件数は、弁形成が3,249件、生体弁918件、機械弁684件であると報告されています。

こうしたデータからもわかるように現在では僧帽弁置換手術よりも、僧帽弁形成術のほうを選択されるケースが非常に多くなってきています。

僧帽弁形成手術は形成手技の熟練度が求められる手術です。そのため僧帽弁形成術は95%以上の確率で弁形成が可能であるという、弁形成の経験が豊富な病院で手術を受けることが望ましいと考えられています。

当院は数多くの僧帽弁形成術をこなす病院であり、僧帽弁形成術に対する豊富な手術経験を持っています。そうした豊富な手術経験により、僧帽弁閉塞不全症に対しては98%以上の確率で僧帽弁形成術を施行しています。当院ではこれからも僧帽弁置換手術よりも優れた面をもち、高確率で弁形成が可能な僧帽弁形成術に積極的に取り組み、よりレベルの高い手術を患者さんへ提供できるよう尽力していきます。

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