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60歳から発症頻度が高まる“心房細動”の原因とは?~加齢以外にも、病気や生活習慣が関係していることも~

60歳から発症頻度が高まる“心房細動”の原因とは?~加齢以外にも、病気や生活習慣が関係していることも~
佐橋 勇紀 先生

岐阜大学医学部附属病院 循環器内科 非常勤講師

佐橋 勇紀 先生

一般社団法人 日本循環器協会

目次
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心房細動とは、不整脈(脈が乱れる、遅すぎる、速すぎるなどの異常)の病態の1つです。心臓の中の電気信号が異常をきたし、心房(心臓の部屋の1つ)が不規則に震えることで、脈の乱れや動悸などの症状が現れることがあります。

加齢とともに発症する確率が上がることで知られており、実際に60歳から発症の頻度が高まり、80歳以上の10人に1人程度に心房細動があるとされています。このことからも、心房細動の主な原因の1つには加齢が考えられますが、ほかにも遺伝や病気、生活習慣も関係しているとされています。

本記事では、心房細動の原因や治療について詳しく解説します。

まず、心房細動が生じる仕組みについて解説します。

心臓は通常、洞結節という部位から電気信号が発生し、心房や心室に伝わることによって活動しています。しかし、加齢や心臓などの病気により心臓の筋肉に負担がかかると、筋肉が変質し電気信号が伝わりにくくなる“線維化”を引き起こす場合があります。

すると、電気信号が一部をぐるぐると旋回するようになり、信号が正しく伝わりにくい状態になってしまうのです。このように、心臓の中を電気信号が以上に旋回してしまうことをリエントリー(電気の旋回)といいます。

心臓の筋肉が線維化を引き起こした状態で洞結節以外の部位から電気信号が生じた場合、その電気信号が心房全体へと伝わることでリエントリーが起こり、心房細動が発症すると考えられています。心房細動の局所の電気的興奮の90%は肺静脈から発生するといわれています。

心房細動の原因には、前述の加齢以外にも遺伝的要因や生活習慣、心臓やそのほかの病気が挙げられます。以下では、病気の種類や、具体的な生活習慣について解説します。

高血圧、心血管疾患、甲状腺機能亢進症などの病気が挙げられます。

高血圧は心臓に負荷をかけるため、心臓の筋肉の量が増えたり変性したりして心房細動につながることがあります。また、心臓弁膜症などの心血管疾患も、心臓に負荷がかかり異常な電気信号が起こりやすくなるといわれています。そのほか、甲状腺機能亢進症の場合は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され交感神経が活性化することで、心拍数の増加や心房細動の発生に関与するといわれています。

喫煙や過度の飲酒などの生活習慣も心房細動の原因になるといわれています。ほかにも、運動不足や肥満などは高血圧を発症するリスクになるため、結果として心房細動につながる可能性もあるとされています。

また、心房細動に合併することがある脳梗塞(のうこうそく)は、生活習慣病である心不全や高血圧、糖尿病によってさらにリスクが高まるとされています。そのため、これらの予防のためにも生活習慣の見直しや改善が大切だといえます。

心房細動の治療には、大きく分けて薬剤療法と非薬剤療法の2つがあります。

薬剤療法の中には大きく分けて2つあります。1つは不整脈を抑制・予防するため、心房細動によって乱れた脈のリズムを正常に戻すことや、心拍数をゆっくりにし動悸を起こさないようにする抗不整脈薬が用いられます。

もう1つは血栓を予防する目的で、脳梗塞の原因となる血栓をできにくくする抗凝固薬が用いられます。

非薬物療法には、電気ショックやカテーテルアブレーションなどさまざまな方法があります。

電気ショックは、薬で心房細動が改善されない場合や症状がひどい場合に行われるもので、AEDよりも弱い電気を体に流して心房細動を停止させます。カテーテルアブレーション治療とは、心房細動の原因となる部分を焼く治療法で、多くの症例では心房細動の根治が期待できます。また、脈が遅くなる場合は、ペースメーカーの埋め込みが検討されることもあります。

心房細動では心臓が十分に機能しなくなることによって、動悸や息切れ、めまい、呼吸困難などの症状がみられることがあります。また、患者によっては自覚症状がない場合もあります。心房細動そのものが命に関わる確率は低いものの、心房細動が心不全脳梗塞などを招き命に関わる可能性があるため、早いうちから治療を受けておくことが大切です。

また、心房細動の原因を理解し、予防に努めることが大切です。特に60歳以上で高血圧などの病気がある場合は、心房細動のリスクがあることを覚えておきましょう。ただし、いずれも自己判断せずに、疑問や不安があればまずは医師に相談をして医師の指示に従って生活習慣の見直しや治療、予防策を行うようにしましょう。

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