高血圧症とは、血圧が正常時より高い状態が続く病気で、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などを引き起こす可能性があります。
高血圧症の薬(降圧薬)は副作用があるというイメージがあり、飲みたくないと考える方もいます。しかし、実は降圧薬に限らず、全ての薬は治療薬としての効果を持つ反面、副作用が生じる可能性があり、その副作用を把握したうえで薬剤として認可されています。本記事では、高血圧症の薬(降圧薬)の種類や副作用、服用時の注意点などについてお伝えします。
高血圧症の薬(降圧薬)は、高血圧症によって起こる脳卒中・心臓病などのリスクは降圧薬を飲むことによって確実に下げることができると証明されていていて、服用しないことでかえって体に悪影響が及ぶ可能性があります。また、副作用が出る頻度は少なく、万が一、副作用が出た場合でも降圧薬は種類が多いため、他の降圧薬に切り替えることが可能です。そのため、副作用を怖がりすぎず、医師の指示に従って降圧薬を服用しましょう。もし気になることがあれば、その都度、医師に相談するとよいでしょう。
高血圧症と診断された場合、薬が処方されるより先に食事や運動など生活習慣の改善について指導されることがあります。これは、塩分の取りすぎや肥満などが血圧を上げる重要な原因となるためです。しかし、生活習慣の改善による治療には限界があることから、生活習慣を改善しても血圧が下がらなかった場合、降圧薬による薬物治療が開始されます。降圧薬による薬物治療は、基本的にひとつの薬剤を少量処方されることから始まり、その後は血圧の数値や副作用の状態を見ながら、徐々に服用する降圧薬の追加を検討します。
また、薬物治療開始後も、生活習慣の改善は継続して意識していく必要があります。生活習慣の改善を継続的に続けていくことによって、一度薬物治療を開始した場合でも、降圧薬の減量や服用をやめることが可能になる人もいます。
高血圧症を治療する降圧薬には、さまざまな種類があります。以下では、一般的に用いられる降圧薬の一覧と効果の出る仕組み、副作用などについてお伝えします。この3種類の降圧薬の組み合わせでも十分な効果が得られない場合は、これら以外の降圧薬など高血圧専門医による治療が必要です。
血管を広げることによって血圧を下げます。動悸、顔のほてり、足のむくみ、歯茎の腫れなどの副作用が出ることがあります。
血管を縮める物質の作用を阻害することによって血圧を下げます。ARB阻害薬(アンジオテンシン受容体拮抗薬)は副作用が非常に少なく、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は咳の副作用が出ることがありますが、その際はACE阻害薬に切り替えを検討します。
血管内や腎臓の塩分や水分を取り除くことで血圧を下げます。ほかの降圧薬の効果を強める作用もあるため、併用されることがあります。薬の種類によってさまざまな副作用が出ることがあります。
高血圧症の薬物治療を行う際は、その人の症状や重症度に合わせて降圧薬が処方されます。ただし、持病のある人の場合、服用できない降圧薬がある可能性もあります。そのため、病院を受診した際は、高血圧症以外に自分がかかっている病気についても医師に伝えるようにしましょう。
高血圧症を治療する降圧薬は、医師や薬剤師の指示に従い服用するようにしましょう。“血圧が下がってきたから”、“副作用が怖いから”といった理由などによって自己判断で降圧薬の服用を中断することは控え、服用中に気になることがあれば医師や薬剤師に相談するようにしましょう。また、飲み忘れがあった場合の対応についても降圧薬の種類や血圧の数値によって異なるため、事前に医師や薬剤師に相談しておくとよいでしょう。
降圧薬の一種であるカルシウム拮抗薬の中には、服用している間にグレープフルーツを食べると、薬の作用が増強されて血圧が下がりすぎてしまう種類があります。近年の薬では改善されつつありますが、カルシウム拮抗薬を処方されているときは、グレープフルーツは控えめにしましょう。このほかにも、薬の種類によっては、食事や併用する薬に注意しなければならないこともあります。そのため、薬を処方された際は、医師や薬剤師の説明を聞き注意事項を守るようにしましょう。
高血圧症の治療では、さまざまな降圧薬を処方される可能性があります。医師や薬剤師の指示に従い、正しく服用することを心がけましょう。副作用が不安な場合や降圧薬について、あるいは他の内服薬との飲み合わせなど疑問点がある場合は自己判断で服用を中止せず、医師や薬剤師に相談しましょう。
国際医療福祉大学 大学院医学研究科(循環器内科学)教授、国際医療福祉大学 福岡薬学部 教授、医療法人社団 高邦会 高木病院 院長補佐、高血圧・心不全センター外来担当
心不全・高血圧治療におけるオピニオンリーダー
九州大学医学部を卒業後、同大学循環器内科学に入局。九州大学循環器病未来医療研究センター部門長を経て、現在は国際医療福祉大学大学院医学研究科(循環器内科学)および福岡薬学部にて教授を務める。循環器内科、特に高血圧や心不全を専門とし、国内ならびに国際学会で評議員やフェローを務め、ガイドライン作成や委員会活動に携わっている。多臓器連関循環動態恒常性維持システムを脳機能から紐解く研究も行っている。
岸 拓弥 先生の所属医療機関
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