高血圧(医学的には高血圧症)とは、持続的に血圧が高い状態であることをいい、その約90%は遺伝的な要素と生活習慣の乱れが原因で生じる“本態性高血圧症”と考えられます。高血圧は自覚症状がほぼありませんが、長く続くと血管がしなやかさを失う“動脈硬化”により、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気につながることがあるほか、心臓に負担がかかって心不全になる恐れもあります。
また、血圧と腎臓は密接な関わりがあり、血圧が高くなると腎臓の機能低下につながるほか、腎臓のはたらきが悪くなると血圧も上昇するといった悪循環が生じる恐れがあります。そのため、症状がなくても高血圧を指摘された場合には放置せず病院を受診することが大切です。
このページでは、高血圧で病院へ行く目安や受診に適した診療科などについてご紹介します。
まず健康診断などで高血圧を指摘された場合には、病院の受診を検討したほうがよいでしょう。そのほか自宅に血圧計がある場合には、測定値が135/85mmHg以上である場合、高血圧の可能性がありますので病院の受診を検討しましょう。
ただし、血圧とは日常の中で変動するものであり、一度高い数値が出たからといって必ず高血圧と診断されるとは限りません。なぜなら、血圧は測定されるときの本人の状態や環境によっても数値が異なるからです。
高血圧では一般的に自覚症状は現れず、症状をきっかけに受診の判断をすることは困難です。血圧がかなり高いときには、頭痛、めまい、肩こりなどの症状が現れることがありますが、ありふれた症状ともいえるため必ずしも高血圧によるものとは限りません。
早期発見のためにも必ず年に1回は健康診断を受診し、異常がみられれば病院の受診につなげましょう。
まず、かかりつけ医へ相談するとよいでしょう。かかりつけ医がいない場合などでは内科や循環器内科の受診を検討しましょう。
このほか、生活習慣病や血圧の異常を専門に診療している病院や、治療に際して管理栄養士が在籍する病院を検討するのもすすめられます。
前述のとおり、血圧は測定されるときの本人の状態や環境によっても数値が異なります。
たとえば、朝起きてから自宅にある血圧計で測ったときは高くても、昼間に診察室で測ったときには正常な値となっているケースがあります(仮面高血圧)。また、病院では緊張してしまうこともあり、診察室で測ると血圧が高くなってしまう人もいます。
このことからも、病院で測定する血圧(診察室血圧)と自宅で測定する血圧(家庭血圧)は数値が異なり、どちらも診断する際には重要な指標になります。
具体的に診察室血圧は140/90mmHg以上、家庭血圧は135/85mmHg以上が基準となり、高血圧と判断します。また、日常生活の中で同じ環境で継続的に測定した血圧は、体の状態を知るうえで非常に有益な情報であるといわれています。自宅に血圧計のある方は継続的に測定し、受診時に医師に示せるようにしておくとよいでしょう。
高血圧では、血圧が高い状態が続くことによる合併症を予防するために治療が行われます。
生活習慣が主な原因となる場合、まず食事療法、運動療法などの生活習慣の改善を行うことが大切です。生活習慣の改善は体の状態などによっても内容が異なるため、医師や管理栄養士の指示に従って行うことが大切です。
これらの治療を行っても十分に血圧が下がらない場合、併せて薬物療法が検討されます。
食事療法において特に大切なことは塩分を控えることです。
塩分の取り過ぎは高血圧の原因となるため、1日6g未満に抑えるようにしましょう。減塩調味料や塩以外の調味料の使用を心がけるほか、塩の多く含まれた加工食品・漬物を控えたり、味噌汁は具だけを食べるようにしたり、塩の瓶を食卓に置かないようにしたりするなど、さまざまな工夫を検討しましょう。
逆に積極的に摂取したい栄養素として、カリウム・マグネシウム・カルシウムといったミネラルが挙げられます。カリウムは野菜や芋、果物、海藻、豆類などに多く含まれ、塩分を体の外へ出すはたらきが期待できます。マグネシウムは海藻、玄米、干しエビ、ごま、ナッツなどに多く含まれ、血管を拡張することで血圧を下げるといわれています。また、小魚や干しエビ、乳製品、豆腐、ごまなどに含まれるカルシウムは不足すると血圧を上昇させてしまうこともあるため、積極的に摂取することが大切です。
加えて、飲酒量を適量にすることも大切です。1日の飲酒量は男性の場合で日本酒1合分、ビール中瓶1本分までが望ましいといわれています。女性はこの半量を目指しましょう。
継続的な運動習慣は心肺機能を高め、高血圧の改善につながるといわれています。ウォーキングやジョギングなど、軽い有酸素運動を1日30分程度を目安に行うとよいでしょう。
高血圧の治療薬にはさまざまな種類があり、それぞれ効果を示す仕組みや副作用など特徴が異なります。そのため、医療機関では患者さんの高血圧の状態やほかの病気があるかどうかなどの背景を確認し、一人ひとりの患者さんに合った治療薬を検討します。
以下では、主な高血圧の治療薬について簡単にご紹介します。
高血圧を放置すると動脈硬化や心臓への負担が強まり、重篤な合併症を引き起こすこともあります。健康診断で血圧が高いといわれた場合や自宅で測定した血圧が高い状態が続く場合には速やかに病院の受診を検討しましょう。
イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
日本内科学会 認定内科医日本腎臓学会 腎臓専門医・腎臓指導医日本抗加齢医学会 抗加齢専門医日本医師会 認定産業医
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。
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