高血圧とは、血圧(血管内の圧力)が正常な範囲を超えて高い状態を指します。高血圧の状態がつづくと、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血など、重症化しやすい病気につながる可能性があります。
このような病気を防ぐためには、高血圧の治療が大切になります。高血圧の治療の基本は、生活習慣の改善です。今回は、福岡山王病院の横井 宏佳先生に、高血圧の治療についてお話しいただきました。
高血圧の発生メカニズムについては記事1『高血圧の発生メカニズムとは?』をご覧ください。
高血圧の治療の基本は、生活習慣の改善です。特に原因が特定されない本態性高血圧の方には、有効であるでしょう。
主に、禁煙や禁酒、食事制限や運動、十分な睡眠が改善につながると考えられています。
なかでも、塩分の過剰摂取が高血圧につながるケースが多いため、減塩を中心とした食生活の改善が大切です。
また、禁煙や禁酒、運動や十分な睡眠も血圧を下げるために有効であるといわれています。
記事1『高血圧の発生メカニズムとは?』でお話ししたような、高血圧になりやすい素因(その病気になりやすい体質)がある場合でも、生活習慣を改善することで高血圧を治療することは可能でしょう。
高血圧の治療では、お話ししたような生活習慣の改善と合わせて、薬を服用するケースも多いでしょう。たとえば、降圧剤と呼ばれる血圧を下げる薬を飲む方が多いといわれています。
服用する薬は患者さんの状態によってさまざまです。1種類の薬から複数の薬を服用する方までいるでしょう。
高血圧の患者さんの状態は、患者さんの年齢や症状によってさまざまです。
たとえば、病院で血圧を測定するときだけ、緊張によって血圧が上がってしまう方がいます。このような方を白衣高血圧と呼びます。
白衣高血圧の可能性が考えられる方には、自宅で血圧を測定してもらうことがあります。血圧を記入する血圧手帳をわたし、起床後や就寝前に自宅で測定してもらうのです。
また、24時間血圧計という検査が行われることもあるでしょう。これは、血圧計を巻き1時間ごとに機械が自動的に血圧を測定してくれる検査法です。この検査によって、1日の血圧の変動を知ることが可能になります。
このように、高血圧診療では、正しい数値を測定できるような工夫が行われています。
記事1『高血圧の発生メカニズムとは?』でお話ししたように何らかの病気が高血圧の原因となっている二次生高血圧の場合には、原因である病気の治療が高血圧の改善につながるでしょう。
以下は、高血圧の原因となりうる病気と、その治療法の概要です。
腎動脈狭窄症とは、腎臓に血液を送る腎動脈が狭くなってしまう病気です。
高齢の方であると、動脈硬化が原因となり、腎動脈狭窄症を発症するケースが多いでしょう。特に、コレステロールが高い方や運動不足の方に起こることが多いため、注意が必要です。
また、若い方であると、線維性過形成(血管の壁の一部が繊維化することで血管内が狭くなる状態)が原因となり腎動脈狭窄症を発症することが多いといわれています。
腎動脈狭窄症は超音波検査によって調べることができます。突然、血圧が下がらなくなってきたという方は、検査を受けることが病気の発見につながるかもしれません。
腎動脈狭窄症の患者さんに対しては、バルーンやステント(血管を広げるために用いられる医療器具)によって、血管の狭くなった部分を拡張する治療が行われることが多いでしょう。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に断続的に呼吸が止まってしまう病気です。
睡眠時無呼吸症候群の方は、呼吸が停止するために深い睡眠に入ることができず、睡眠中も交感神経が緊張をし続けるために、高血圧の状態になりやすいといわれています。
睡眠時無呼吸症候群の方は、シーパップと呼ばれる治療用のマスクを睡眠時に着用することが改善につながるケースが多いでしょう。
原発性アルドステロン症とは、腎臓の上の副腎と呼ばれるホルモンを分泌する臓器が腫れ、アルドステロンホルモンが過剰に分泌される病気です。
原発性アルドステロン症の患者さんは、アルドステロンホルモンが過剰に分泌されることによって血圧が高くなります。
原発性アルドステロン症は、CT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)や血液検査によって診断が可能です。治療では腹腔鏡(腹部の表皮から腹部の内臓がおさまっている所に入れる内視鏡器具)を用いた手術によって副腎を摘出する治療が行わることが多いでしょう。
高血圧の治療では近年、腎交感神経焼灼術(腎デナベーション)という新たな治療法が注目され、日本でも臨床試験(新しい薬や治療法を開発するために、人で効果や安全性を調べる試験)が行われています。この腎交感神経焼灼術は、ヨーロッパではすでに高血圧治療のガイドライン(その病気の診断方法や治療方法を定めた指針)に掲載されている治療法です。
腎交感神経焼灼術とは、カテーテルによって腎動脈の外膜にある交感神経(主に体を活動させるときに機能する神経)を焼灼する治療法を指します。焼灼によって交感神経の活動が抑えられ、血圧の低下につながると考えられています。
日本でも2018年2月現在、高血圧の新たな治療法として、臨床試験が行われています。
高血圧の治療では、生活習慣の改善が基本になります。減塩など食生活の改善や運動、禁煙などが高血圧の治療につながるでしょう。また、高血圧の原因が何らかの病気である二次性高血圧であれば、原因となっている病気の治療が大切です。
高血圧の患者さんには、一人で悩むことなく、相談に来ていただきたいと考えています。高血圧に対して抱えている不安や疑問を話してくれるだけでも構いません。
昔と比べて、高血圧の治療は進化していると感じます。一緒に改善の方法を模索したいと思います。
横井先生に直接相談
福岡山王病院 病院長/循環器センター長、高木病院 循環器センター長 、国際医療福祉大学 教授
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福岡山王病院 病院長/循環器センター長、高木病院 循環器センター長 、国際医療福祉大学 教授
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日本循環器学会 会員日本内科学会 会員
前病院では心臓のカテーテル治療を年間500件、心臓以外の血管(頸動脈、腎動脈、大動脈瘤、下肢動脈)のカテーテル治療を年間500件行い、通算のカテーテル治療件数は1万例を超える。また、動脈硬化予防のために心臓リハビリテーションを通じて患者の禁煙、運動、食事、睡眠の生活習慣改善と高血圧、脂質異常、糖尿病、慢性腎臓病に対する薬物療法に積極的に取り組む。現病院ではカテーテル治療と生活習慣改善、薬物療法を組み合わせた、心血管イベント抑制のための包括的全身血管診療に取り組んでいる。
横井 宏佳 先生の所属医療機関
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