心房細動は、有名人などが罹患し、医療ドラマでもたびたび取り上げられることなどから、一般の方々にも認知されるようになってきています。耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。心臓は上下でその役割が異なり、上部分を心房、下部分を心室といいます。心房細動は、このうち心房にあらわれる不整脈に分類されています。今回は心房細動の病態と分類について、東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野の池田隆徳先生にお話をお聞きしました。
心臓は、左手を軽く握った程度の大きさで、私たちが生まれてから死ぬまでずっと動き続けている臓器です。もしも心臓が10秒止まってしまえば意識不明に陥り、30秒停止すれば脳死が始まります。これほど、心臓は私たちが生きていくうえで必要不可欠な臓器なのです。
それぞれ右心房、左心房、右心室、左心室と名前がついています。下側に位置する左心室と右心室は体全体に血液を送り出す働きを持つため、心筋が10mm程度と分厚いのが特徴です。
上側に位置する右心房と左心房は心室に血液を送る役割を果たしており、心筋の厚さも2~3mm程度と比較的薄目となっています。また、房室結節は右心房の下部にあり、心室を動かすための刺激伝達系の役目を果たします。房室結節が正常に働くことで、たとえ心房が興奮状態に陥ったとしても、その興奮が心室に伝わらないように調整する機能をもっています。
心房細動はごくありふれた病気(コモン・ディズィーズ)であり、赤ちゃんからお年寄りに至るまで、心房細動の有病率はおよそ1~1.5%、80歳以上の方に限定した場合は5~8%(16~20人に1人)であるといわれます。
一般的に危険性は低く、良性の不整脈として分類されます。ただし、放置しておくと死に至る可能性もあるため、注意しなければなりません。
正常な心臓は通常1分間で60~100回拍動します。しかし、心房細動が起きた状態でその拍動数は1分間で400~600回以上にもおよびます。けいれんするように動いているととらえることもできます。しかし、前述した房室結節が中継地点となります。これが砂時計のように脈拍を間引きするため、実際の脈拍は正常のままである場合があります。
心房細動は症状の程度によって以下の3種類に分類されます。
発作が起こって数秒~7日以内に症状が治まるものの、しばらくすると再び心房細動が起こる状態を発作性心房細動といいます。いったん発作性心房細動になると発作回数が徐々に増えていき、後述する永続性心房細動(慢性心房細動)や持続性心房細動に移行してしまう可能性が出てきます。これは、心房細動によって心房筋(心房の筋肉)が変化し、心房細動を再発しやすい構造に変化してしまうからです。発作時間には幅がありますが、ほとんどの方は数時間程度だといわれています。
持続性心房細動は、症状が7日以上続いて自然に止まることはありません。しかし、薬や電気ショックによって止めることができる段階です。特に、電気ショックによる治療では94%の患者さんが回復するという結果も出ています。
持続性心房細動は再発率が高く、通常の薬物療法を行った場合、1年後に洞調律が維持できている確率は約50%です。また、心房細動が1年以上持続している状態を、長期持続性心房細動と呼びます。
永続性心房細動では、薬や電気ショックなどの治療行為を行っても心房細動の状態を抑えることができない段階です。この場合は心房細動を無理に止める治療は行わず(心房細動の受容といいます)、抗凝固療法を行います。(詳細は『心房細動と脳梗塞の関係。心房細動は脳梗塞を引き起こす可能性がある』)
不整脈は頻脈性のものと徐脈性のものがあります。そのうち、心房細動が分類される頻脈性不整脈は、上室性不整脈と心室性不整脈に分けられます。心房細動は上室性不整脈に分類され、このタイプは一般的に危険性の高いものではありません。
これと似た不整脈に、心房期外収縮という病気があります。心房期外収縮は一発~数発、不規則に不整脈が現れる状態で、ほとんどの方が無症状です。きわめて良性の不整脈であるため、生活に支障が無ければ放置しておいて構いません。
心房粗動の方の心電図を撮ると、細かく揺れるようなのこぎり状の粗い波が映し出されます。心房粗動と心房細動は名前が似ていますが、両者は発生のメカニズムが異なります。
心房粗動は、リエントリーという興奮波が、三尖弁のあたりをぐるぐると回ることによって起こります。一方、心房細動は、そのリエントリーが縦横無尽にあちこちを動き回ることで発生します。双方ともに良性の不整脈ですが、治療対象となります。このように心房粗動と心房細動は発生メカニズムが異なるため、『心房細動と脳梗塞の関係。心房細動は脳梗塞を引き起こす可能性がある』で述べるカテーテルアブレーションでの治療のあり方も異なってきます。
東邦大学 医学部内科学講座循環器内科学分野 教授
池田 隆徳 先生の所属医療機関
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心房細動の再発について
2年前から心房細動と診断されています めまいがきっかけで、3年前に2週間程度入院しましたが、病気がつかめず、ループレコーダーを体内に入れました 2年前に病気が見つかり心房細動と診断されました 2年前にカテーテルアブレーションをしましたが、1年前に再発しました 2回目のアブレーションの時に、1回目の治療をしたところの跡がないと言われました 最近になって体調が悪くなった時があって、病院で心電図をしたところ、心房細動が再発していることが分かりました 3回目のアブレーションは現実的なんでしょうか 通院している病院が、提携している大学病院の専門医が出張でアブレーション治療を行ってくれるのですが、その先生の判断待ちの状態です もし、3回目のアブレーション治療が無かったら、担当医からは薬になるかもしれないと言われました 薬になったら、日常の行動に支障は出ますか もしくは、ほかの治療法はあるのでしょうか 宜しくお願いします
手術について
脳動脈瘤が見つかり、開頭クリッピング術での手術を勧められました。心房細動の持病があり、2月にそれによる脳梗塞、4月に心臓のカテーテルアブレーションの治療をしましたが、再発するようならもう一度しないと・・との診断。最近になって寒さのせいか動悸を感じる事があります。脳外の担当医には伝えてあります。 心房細動を患いながらの開頭クリッピング手術ってのは、危険なのでしょうか?
今後の注意する事は?
2日前に、カテーテルアブレーションの手術しました。悪い所をすぐ、解り、1時間ぐらいで終わり、手術前の検査では、心臓が大きくなっていて、70パーセント完治と言われてましたが、80パーセント完治と言われ安心してます。軽度の、心不全にもなってますが、今後の生活では、注意する事ありますか?お酒は、一口も飲んだら、駄目なんですか?カフェインや、塩分はどうですか?又、この手術によって、心不全が良くなりますか?心不全は、生活習慣や、食事(塩分)の制限したり、薬で、完治しますか?今後、ずっと薬を飲み続ける生活ですか?まだ、54歳で、仕事は、パソコン等デスクワークですが、大丈夫ですか?車の運転はどうですか?今後の生活と、完治について教えてほしいです。
心房細動の手術を受けるかどうか?
2013年に鬱血性心不全で入院。薬をそれから服用し経過観察。今年3月6日に体調異変で翌日かかりつけの病院に行ったら心房細動の診断。薬を変更し経緯を観察中だが、医者からはカテーテル手術を勧められている。手術の失敗確率より、このままにしておいて死ぬ確率の方が高いと言われました。ただ最近は血圧や脈拍も安定して、症状は出ていない。 どうしたら良いか?
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