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インタビュー

公開日 : 2016 年 02 月 09 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

4本の肺静脈と左心房の後壁までを広く隔離する「熊谷式BOX隔離術」は心房細動に対する治療法として10年ほど前に考案されました。不整脈ではもっとも多く起こるのが心房細動です。すぐに命にかかわることはないものの、QOL(生活の質)の低下などを来すことがあるため、治療が必要となります。心房細動に対する熊谷式BOX隔離術について、考案者である福岡山王病院ハートリズムセンター長の熊谷浩一郎先生にお話を伺いました。

日本初のカテーテルアブレーションは1998年

不整脈は心臓のリズムに異常を来した状態で、脈が速くなるものを頻脈、逆に遅くなるものを徐脈といいます。放置していても心配ないものもあれば、命に危険を及ぼすものまでさまざまなタイプがあります。

不整脈の中でもっとも多くみられるものが心房細動で、これは頻脈性タイプに分類されます。すぐに命の危険を伴うわけではありませんが、脳梗塞の原因になることが多く、生命予後(病気や治療の見通し)が悪いといわれています。また、心不全や突然死など心臓が原因で亡くなる人が多く、QOL(生活の質)の低下も招くため治療が必要になります。

頻脈性の不整脈に対して行われる非薬物治療のひとつがカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)です。足の付け根からカテーテルという2ミリほどの細い管を心臓まで挿入し、不整脈を起こしている発生部位を熱で焼き切る治療法です。上室性頻脈や特発性の心室頻拍、WPWなどの不整脈に対しては1回の治療でほぼ100%治癒が可能ですが、心房細動に関しては1回で根治することは難しいのが現状です。

心房細動に対するカテーテルアブレーションが行われるようになったのは1998年で、まだ比較的最近のことです。心房細動の発生起源が左心房にある肺静脈であることをフランス人医師のHaissaguerre先生がつきとめたことで、アブレーションが導入されるようになりました。すぐに私も臨床導入を行い、これが日本で最初となる心房細動に対するアブレーション治療となりました。しかし、治療後に再発してくることが判明して、肺静脈隔離術が考案されました。同じくHaissaguerre先生の考案によるものです。

肺静脈隔離術よりさらに高い治療効果を目指してBOX隔離術を考案

肺静脈隔離術は世界中で導入されるようになりました。ですが、肺静脈隔離術を行っても2割程度の方が肺静脈以外のところから再発することがわかってきました。そこで、さらに治療効果を高める目的で私が考案したのが「BOX隔離術」という方法です。

これは、4本の肺静脈に加えて、左房天井と底部のラインを結んで左房後壁も広く隔離する方法です。BOXのように見えるためBOX隔離術と名付けました。

心房細動は、発作がおきても数時間程度で自然に止まる発作性と、1週間以上続く持続性、さらには1年以上も続く永続性の3つに分類されます。発作性の場合は肺静脈から起こりますが、持続性になると肺静脈だけではなく、左心房の後ろの壁や上大静脈などからも起こるようになります。そのため、できるだけ広い面積を囲んで焼灼することで、発生を抑えることが可能となるのです。

BOX隔離術を考えた背景には、肺静脈隔離術における合併症を予防したいという思いがありました。左心房のちょうど真後ろには食道が通っているのですが、 それまでの隔離術では、食道に沿って、縦に焼灼しなければならないため、どうしても食道障害などの合併症を起こすことがあったのです。

そこで、縦ではなく横に焼灼しようと考えたのがBOX隔離術です。ただ、横に焼くといっても、どうしても食道を横断しなければならないため、合併症をゼロにすることはできませんでした。残念ながら、当初考えていた食道障害を予防するという目的には到達しませんでしたが、一方で治療成績を向上させることができたのです。

福岡山王病院での心房細動に対するカテーテルアブレーション治療の実績は2015年の夏に2000例を突破しました。治療における成功率は、発作性の場合、不整脈の薬なしで84%、薬を併用すると93%。持続性ではそれぞれ79%と89%。永続性はそれぞれ72%と85%という結果です。(※下図グラフ参照)

 

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