インタビュー

心房細動について正しく知ろう!

心房細動について正しく知ろう!
日本心臓財団

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この記事の最終更新は2015年12月08日です。

心房細動は、治療が必要な不整脈のうち最も代表的なものといえるでしょう。2003年に行われた日本循環器学会の疫学調査では、我が国において40歳を超えてからの心房細動の有病率は上昇しており、70 歳代で男性3.44 %・女性1.12%、また80 歳以上では男性4.43%・女性2.19%と報告されました。この結果は、心房細動という病気が決して少なくないことを示唆していると言えます。

また、ひとくちに心房細動といっても様々なタイプがあり、それぞれ診断や治療の方法が異なります。以下ではまず、心房細動とはどのような不整脈なのかおさらいします。その後、二つの切り口から心房細動を分類してみましょう。

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心房細動は、心房の部分部分がまったくばらばらに興奮、収縮する状態、いわば心房が小刻みに震えている状態のことです。このとき、1分間に300〜500回の収縮を起こすように電気刺激が心房の中を駆け巡っています。心房から心室への電気刺激の伝導は通常1:1で、心房と心室がきちんとしたタイミングでずれて収縮するため、心臓はリズム正しく拍動を続けて全身に血液をスムースに送り出します。これを洞リズムといいます。しかし心房細動の状態では心房から心室への規則正しい電気刺激伝導は期待できません。そのため心室の収縮にも規則的なリズムがなくなり、脈拍は間隔も大きさも不規則なものとなります。

心房細動が起きると、心房からの血液の拍出が充分に得られなくなり、心室から全身に送り出す一回の血液の拍出量が30%程度低下するといわれています。そのため心房細動が長く続いたり、特に頻脈になっている際などは心不全の原因となることがあります。したがって、一つにはこの点に留意した管理が必要です。

また、心房細動があっても、それが原因となってただちに生命が脅かされるということはありませんが、心房細動が続くと脳梗塞を起こす危険があることに気をつけなければなりません。

左心房の一部に左心耳と呼ばれる部分があります。ここは、ちょうど顔に耳が付いているような形で心房の一部が耳のような袋になっていることから、このように呼ばれています。左心耳はもともと血液の流れが少ない部分ですが、心房細動になると心房全体の収縮性が低下するため、左心耳内の血流が一層停滞するようになります。すると血液が固まりやすくなって血栓という血の固まりができてしまうのです。この血栓が何かの拍子に剥がれると、血液の流れに乗って心臓の外に飛んでいくことがあります。血栓が左心房→左心室→大動脈→頸動脈→大脳動脈と進み、脳動脈で詰まると、脳梗塞を起こしてしまいます。脳梗塞は命を落とす危険が高く、また寝たきりの原因にもなるので、これを防ぐことが心房細動の重要な治療となります。

心房細動について、まずその原因から考えていきましょう。

心房細動は、原因となる何か他の病気があるために発症することもありますが、そういった原因がなくてストレスや不規則な生活習慣がきっかけとなり起きることもあります。

心房細動をきたす基礎疾患の中で、心臓の病気としては僧帽弁疾患・心不全心筋梗塞がよく知られています。その他、心臓の病気ではないものに高血圧糖尿病甲状腺機能亢進症が挙げられます。

またこれらの要因がないものは、孤立性心房細動と呼ばれます。心房細動は自律神経活動の亢進が誘因となりやすい不整脈でもあります。日中に起きやすい、夜間に起きやすい、食後に起きやすい、飲酒後に起きやすい、運動時に起きやすい、などという場合があって、その典型的なものとされています。

このように、心房細動は以下のふたつに分類することができます。

  • 基礎疾患があり起こった心房細動
  • そうでない孤立性心房細動

また治療方針に関わる分け方として、以下の二つに分類することがあります。

  • 弁膜症性心房細動
  • 非弁膜症性心房細動

弁膜症性心房細動には人工弁置換手術後(機械弁,生体弁ともに)の場合とリウマチ性僧帽弁膜症の場合があります。後述の抗凝固療法を行う際に、薬剤の選択などがこの分類に基づいて規定されることとなります。

それ以外の心房細動は、非弁膜症性となります。

次に、持続時間を切り口として心房細動を考えてみましょう。心房細動には大きく分けて、時々起こる発作性のものと、発作が7日間以上続く持続性とよばれるもの、細動がずっと続いているものの3タイプがあります。

  • 発作性心房細動
  • 持続性心房細動
  • 慢性心房細動

次項ではこのタイプごとに、検査や治療についてご説明します。

初発であったり、頻度の少ない若い方の場合であれば、動悸や違和感などの症状が強く出ることがあります。

発作が出ているときに医療機関を受診し、心電図で「証拠=心房細動を示す波形」を捉えられれば診察できますが、「捉えられてはいないが症状から考えて疑わしい」という場合はホルター心電図(24時間の長時間心電図検査)で症状が出たときの心電図を捉える検査を行います。

ついで、基礎疾患があるかどうか、脳梗塞が起こりやすいかどうかなど危険性がどの程度あるかを考慮して、治療方針を決めていきます。脳梗塞の予防に血液を固まりにくくする薬を服用する抗凝固療法や、不整脈の再発予防のための不整脈治療薬内服治療、発作時に薬を頓服する内服治療(これには脈をゆっくりにする、もしくは心房細動をとめるの二つがあります)、肺静脈にみられる心房細動の原因となるメカニズムから心房を隔離するカテーテルアブレーションという根治術などの治療が行われます。

また特殊な場合では、心房細動が停止した際に、心拍が停止ないし極度に遅くなる、徐脈頻脈症候群と呼ばれる病態があります。心停止は失神や突然死の原因になるため、ペースメーカ植え込みの適応となります。

以前は、脳梗塞予防に血液を固まりにくくする薬を服用(抗凝固療法)した後に、電気ショックや不整脈治療薬を用いて心房細動を止めることが基本の治療でした。もちろん症状が辛い場合には現在もこれを行うことはありますが、大規模臨床試験の結果からは、必ずしも心房細動を止める治療を行うことがよいとはいえないということがわかり、脈の頻度をゆっくり適正な範囲にする治療、あるいは抗凝固療法のみを行うことが勧められるようになりました。もちろん、カテーテルアブレーションによる根治術も行われます。

電気的、または薬物的にも心房細動を止めること(除細動)ができにくい状態です。

高齢者における心房細動は、病気というより老化現象といってよいものです。発作性であったものでも、やがては永続性(慢性)のものになっていきます。永続性であれば通常、動悸や不快感などの症状は自覚されにくくなります。

このようなタイプの心房細動は、健診や、入院時に記録した心電図でたまたま判明することがあります。高齢になるほど永続性となることが多く、脳梗塞を予防するために抗凝固療法が必要となることが多くなります。また、はじめに説明したように心房細動は心不全になる傾向があり、高齢者ほどこの傾向は大きくなります。このため脈が速くなりすぎないようにする薬を内服する治療が一般的です。このような場合は前述のように心房細動を止めることができなかったり、止められる見込みのないものなので、電気ショックを行ったり、心房細動を止める薬物を使用することはあまりありません。

カテーテルアブレーションも行われますが、その効果はやや低くなります。

心房細動とよく似たものに心房粗動があります。これは心房細動に比べて心房の震えるような興奮・収縮がもう少し粗い病態です。脈拍のリズムも心房細動ほど不規則ではありません。心房粗動では、心房細動と違って心房内にやや大きな興奮旋回路が出現するとされています。心房粗動に対しては、薬物治療と興奮旋回路を遮断するためのカテーテルアブレーション治療が行われています。

公益財団法人 日本心臓財団 監修記事〉

 

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