しんぼうそどう

心房粗動

心臓

目次

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概要

心房粗動とは、心房が1分間に240回以上という通常よりも早いペースで規則的に動いている状態を指します。心房が正常よりも早く電気活動を起こすようになっているため、付随するように心室の動きも速くなることがあります。この場合には、動悸や脈が速くなるといった自覚症状を感じるようになります。

心房粗動は心房の不整脈であるため、心室細動といった心室の不整脈に比べると、生命を左右する危険性は低くなります。しかし、長期間放置してしまうと血液循環が悪くなって死に至ることもあり、準致死性不整脈の一つに数えられることもあります。心房粗動を起こすと、心臓内に血栓が形成されてしまい、脳梗塞を引き起こすこともあります。そのため、心房粗動が発生した場合は注意深い観察と治療が必要になります。

原因

心臓が持つ空間は、大きく分けて「心房」と「心室」の二種類に分けることできます。心房と心室は、それぞれさらに右と左に分けることができます。つまり、心臓は左心房、左心室、右心房、右心室の4つの部屋で構成されているといえます。

心臓は血液を全身や肺から受け取り、それを全身や肺に送る「ポンプ」としての役割を担っています。心臓が適切なポンプ活動を行なうためには、先に挙げた4つの部屋が足並みをそろえながら、規則正しい活動を行わなければなりません。調律された心臓の活動は、電気活動を介して達成されています。右心房に存在する「洞結節」と呼ばれる部位から電気活動は発生しており、順次一方通行的に心房→心室へと電気が伝わっています。

しかし、正常の電気回路とは別の回路が形成されてしまうことがあり、この場合に心房粗動をはじめとした不整脈が生じることがあります。心房粗動は多くの場合、右心房で不適切な電気回路が形成されることにより洞結節が過剰に活動をするようになり、規則正しいながらも早いペースで心房が収縮するようになってしまいます。

心房粗動では心房が通常よりも早いペースで活動をしていますが、すべての電気信号が心室へと伝わるわけではありません。心房の電気活動4回のうちに1回心室に伝わることもあれば(たとえば1分間に心房が240回活動する場合には60回分の信号が心室に伝わります)、2回に1回のペースで伝達されること(心房が240回活動するときに、心室は120回活動します)もあります。最終的に全身に血液を送るのは心室であり、心房がいくら過剰に活動をしているとしても、心室が適切なペースで収縮できるようであれば必ずしも重篤な症状は起こりません。

したがって、心房の活動のうち何回心室に電気活動が伝達されるのか、ということが、直近の症状を決定する重要な要素になります。こうした心房粗動を引き起こす原因の一例としては、加齢や心筋梗塞、甲状腺機能亢進症、リウマチ性心疾患などが挙げられます。

症状

心房粗動の症状は、心房から心室に伝わる電気信号の数によって異なります。心室が長時間早いペースで脈を打つようになると、徐々に心筋に負荷が掛かることになります。もともと心臓病がある場合は、より容易に心不全症状が誘発されるようになります。また、強い動悸を自覚することもあります。

心房細動は、脳梗塞を引き起こすこともあります。心房が過剰に収縮をする結果、左心房のなかに血栓(血のかたまり)ができてしまうことがあり、この血栓が何かの拍子に剥がれると、血液の流れに乗って左心房→左心室→大動脈→頸動脈→大脳動脈へと進みます。そして脳動脈の途中で詰まって、脳梗塞を起こすのです。心房粗動の場合、このようなメカニズムで起こる脳梗塞にも注意が必要です。

検査・診断

心房粗動の診断は、主に心電図検査を用いて行います。心房が規則的に収縮する結果、ある一定の比率で心室も同調して収縮するようになり、「粗動波」や「鋸歯状波(きょしじょうは)」と呼ばれる特徴的な波形を示すようになります。心室への伝導速度が速い場合は、心房粗動以外の波形と類似することもあるため、より診断を明確にする目的で、薬剤を投与して心電図検査を行なうこともあります。

治療

心房粗動の治療は、大きく分けて薬物療法、カテーテルアブレーション、脳梗塞予防、の三つの観点から考えることができます。心房粗動では心室の脈が速くなることから、心不全が引き起こされることもあります。そのため、素早い心拍数調整を目的として、β遮断薬やカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬を使用することがあります。

カテーテルアブレーション治療とは、心房粗動の原因となっている余計な電気回路を遮断する治療です。足の付け根の血管、大腿静脈あるいは動脈からカテーテルという細い管を心臓まで挿入し、心房粗動の発生起源となっている回路を焼灼することで根治を目指す治療法です。

心房粗動により、左心房内に血栓が形成されると、脳梗塞が引き起こされることもあります。心房細動のときと同様に、脳梗塞予防に対しての治療が必要になります。具体的には、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服します。具体的には、ワーファリンや新規経口抗凝固薬(Novel Oral AntiCoagulants; NOAC (ノアック)、Direct Oral Anticoagulants; DOAC (ドアック)などがよく使用されています。