インタビュー

新規経口抗凝固薬(NOAC)とは-ワルファリンとの比較

新規経口抗凝固薬(NOAC)とは-ワルファリンとの比較
加藤 貴雄 先生

国際医療福祉大学 教授、日本医科大学 名誉教授

加藤 貴雄 先生

この記事の最終更新は2016年03月16日です。

これまで抗凝固療法の主役であったワルファリンの欠点を解消することを目的に、近年新規経口凝固薬(NOAC)が次々と開発されました。現在使われている4種類の薬剤については「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」にも推奨度が記載されています。新規経口抗凝固薬はワルファリンと比べてどのような点が優れているのでしょうか。それぞれの薬剤の特徴などについて、国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター・心臓血管センターの加藤貴雄先生にお話をうかがいました。

現在国内で使用されている新規経口抗凝固薬(Novel Oral AntiCoagulants; NOAC)は次の4種類があります。

  1. ダビガトラン
  2. リバーロキサバン
  3. アピキサバン
  4. エドキサバン

ダビガトランは、血液の凝固を阻害する仕組みが他の三つの新規経口抗凝固薬とは少し異なっています。血液凝固因子のひとつであるトロンビンは、血液凝固の過程で重要なフィブリノーゲンからフィブリンへの変換に関わっていますが、ダビガトランはこのトロンビンを直接阻害して効果を発揮することから、直接トロンビン阻害薬と呼ばれます。これに対して他の3剤は血液凝固過程の第X因子を阻害することから、Xa因子阻害薬あるいは抗Xa薬と呼ばれています。

新規経口抗凝固薬(NOAC)の中では、もっとも早く発売されたダビガトランが多く使われているようですが、この4種類の薬剤には基本的にそれほど大きな違いはありません。それぞれ大規模な臨床試験によって安全性と有効性が確認され、現在治療に使うことができるようになっています。

これらの薬剤は開発された順序で世に出回り、ひとつずつ使われるようになってきたという経緯がありますが、それぞれの薬剤に特徴があり、すべて同じというわけではありません。したがって、今後はその使い分けが必要になってくると考えます。

しかしながら現在のところ、本当の意味でどういった使い分けが望ましいのかということを客観的に明確にするような比較試験は行なわれていません。それぞれの薬剤をワルファリンと比較した試験はありますが、NOAC同士を比較したデータがまだ不足しています。

新規経口抗凝固薬(NOAC)はいずれもビタミンKの代謝とは直接関係しないため、ワルファリンに比べて食物の影響がなく、食事制限の必要がないというメリットがあります。

一番のメリットは、一度用量を決めたらほぼそのままで投薬を継続できるということです。ワルファリンのような不安定さがほとんどないため、抗凝固効果を確認するための定期的な採血による検査が必要ありません。ただし、腎機能や年齢などによって最初の投与量を少なめにするなどの配慮は必要です。

十分な効果を発揮するまでに時間がかかるワルファリンに比べて、すぐに効き始めるという特徴がありますが、その反面、半減期が短いため血中濃度が早く低下します。手術に際して服薬を中止する場合には抗凝固効果をコントロールしやすいというメリットもありますが、十分な効果を維持するためには薬をのみ忘れないよう注意することが必要です。

出血の合併症リスクがまったくないわけではありませんが、脳出血はワルファリンと比べて少ないようです。ただし消化管からの出血は決して少なくありません。それぞれの薬剤ごとに行なわれた大規模試験において調査対象となった患者さんの状況によってデータに違いはありますが、一般的にいえば脳出血発生の頻度はワルファリンより少ないといえるでしょう。

4種類のNOACについては、併用する薬剤の種類によって大きく効果が変わってしまうということはあまりありません。他の薬剤と一緒に使ってもほぼ安定した効果が得られるようです。他剤との相互作用という面でも、やはりワルファリンのほうが使い方は難しいのではないでしょうか。

NOACはいずれも薬価(薬の価格)が高く、ワルファリンと比べて何十倍にもなってしまいます。もちろん一定額は保険でカバーされているとはいえ、こういった薬剤は長期にわたって服用するため、患者さんにとっては負担が大きくなります。実際に、経済的負担の大きさからワルファリンを選択する患者さんも少なくありません。

  • 国際医療福祉大学 教授、日本医科大学 名誉教授

    日本循環器学会 循環器専門医日本内科学会 認定内科医

    加藤 貴雄 先生

    心臓病、特に心電図および不整脈を専門とし、長年第一線の診療・教育・研究に携わっているエキスパート。日本医科大学付属病院においては要職を兼任し、医療体制の構築・実践に取り組んできた。2012年に退任し現在は名誉教授。循環器に関連する数多くの学会・研究会を主催・主導する一方、講演や執筆を通して幅広く社会貢献活動を行っている。

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