インタビュー

脳梗塞予防の代表的な薬・ワルファリンとは-効果と副作用

脳梗塞予防の代表的な薬・ワルファリンとは-効果と副作用
加藤 貴雄 先生

国際医療福祉大学 教授、日本医科大学 名誉教授

加藤 貴雄 先生

この記事の最終更新は2016年03月14日です。

心房細動を管理し、脳梗塞を予防するためには、抗凝固薬・抗血栓薬と呼ばれる薬剤を継続的に服用する「抗凝固療法」を行う必要があります。代表的な薬剤として長く使われてきたワルファリンの特徴について、国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター・心臓血管センターの加藤貴雄先生にお話をうかがいました。

CHADS2スコアとは、以下に示した脳梗塞のリスク要因がある場合、それぞれに1点ないし2点を付与し、合計の点数で脳梗塞の発症リスクを評価する指標です。心不全糖尿病までの4項目は各1点、脳梗塞の既往が2点となっており、トータルで6点がもっとも高いスコアです。

C

心不全(Congestive heart failure)

1点

H

高血圧(Hypertension)

1点

A

年齢75歳以上(Age≧75)

1点

D

糖尿病(Diabetes mellitus)

1点

S

脳梗塞(Stroke)の発作を過去に起こしたことがある

2点

Gage BF et al:JAMA 285, 2864-2870, 2001

以前はCHADS2のスコアが2点以上で、比較的リスクの高い方に対して抗凝固療法を行なうことが考慮されていましたが、最近はそのスコアが低くても治療をしたほうがよいという考え方があります。したがって、現在はまず2点以上は確実に抗凝固療法を行い、1点でも推奨するという形になっています。ただし0点であれば、心房細動が起きても様子を見て個別に判断することになります。

実は心房細動があってもCHADSスコアが0点という方は少なくありません。たとえば若い方では深酒をした後などに、迷走神経緊張型の心房細動がしばしば起こります。多量の飲酒をした後、夜中に心房細動が起きて、朝起きたときに心臓がドキドキしているというパターンです。しかし普通に仕事をしているうちに自然に治ってしまうということも多く、CHADS2スコアは0点ということがしばしばあります。こうしたケースでは少し様子をみてから判断しますが、心房細動が再発する場合は抗凝固療法を開始することになります。

ワルファリンは、血液凝固因子のうちビタミンKが関わる仕組みを阻害することで血液を固まりにくくする薬です。脳梗塞発症の抑制に高い効果があることが多くの試験によって証明され、代表的な抗凝固薬として長く使われてきました。

art RG, et al: Ann Intern Med 2007; 146: 857-867

一方で、食品に含まれるビタミンKがワルファリンの効果を妨げるため、納豆やブロッコリーなどビタミンKを多く含む食品を避ける必要があることがよく知られています。その他にもワルファリンには以下のような使用上の注意点、問題点があります。

  • 治療域/安全域が狭い
  • INR(抗凝固作用を表す指標)の定期的なチェックが必要
  • 目標INRを目指した細かい用量調整が必要
  • 必要投与量に個人差がある
  • 食事制限が必要(納豆・青汁・ブロッコリー・小松菜など)
  • 薬物相互作用がある
  • 副作用がある
  • 治療域到達までに時間がかかる
  • 効果消失に時間がかかる
  • 国際医療福祉大学 教授、日本医科大学 名誉教授

    日本循環器学会 循環器専門医日本内科学会 認定内科医

    加藤 貴雄 先生

    心臓病、特に心電図および不整脈を専門とし、長年第一線の診療・教育・研究に携わっているエキスパート。日本医科大学付属病院においては要職を兼任し、医療体制の構築・実践に取り組んできた。2012年に退任し現在は名誉教授。循環器に関連する数多くの学会・研究会を主催・主導する一方、講演や執筆を通して幅広く社会貢献活動を行っている。

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