心房細動を管理し、脳梗塞を予防するためには、抗凝固薬・抗血栓薬と呼ばれる薬剤を継続的に服用する「抗凝固療法」を行う必要があります。代表的な薬剤として長く使われてきたワルファリンの特徴について、国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター・心臓血管センターの加藤貴雄先生にお話をうかがいました。
CHADS2スコアとは、以下に示した脳梗塞のリスク要因がある場合、それぞれに1点ないし2点を付与し、合計の点数で脳梗塞の発症リスクを評価する指標です。心不全〜糖尿病までの4項目は各1点、脳梗塞の既往が2点となっており、トータルで6点がもっとも高いスコアです。
C |
心不全(Congestive heart failure) |
1点 |
H |
高血圧(Hypertension) |
1点 |
A |
年齢75歳以上(Age≧75) |
1点 |
D |
糖尿病(Diabetes mellitus) |
1点 |
S |
脳梗塞(Stroke)の発作を過去に起こしたことがある |
2点 |
以前はCHADS2のスコアが2点以上で、比較的リスクの高い方に対して抗凝固療法を行なうことが考慮されていましたが、最近はそのスコアが低くても治療をしたほうがよいという考え方があります。したがって、現在はまず2点以上は確実に抗凝固療法を行い、1点でも推奨するという形になっています。ただし0点であれば、心房細動が起きても様子を見て個別に判断することになります。
実は心房細動があってもCHADSスコアが0点という方は少なくありません。たとえば若い方では深酒をした後などに、迷走神経緊張型の心房細動がしばしば起こります。多量の飲酒をした後、夜中に心房細動が起きて、朝起きたときに心臓がドキドキしているというパターンです。しかし普通に仕事をしているうちに自然に治ってしまうということも多く、CHADS2スコアは0点ということがしばしばあります。こうしたケースでは少し様子をみてから判断しますが、心房細動が再発する場合は抗凝固療法を開始することになります。
ワルファリンは、血液凝固因子のうちビタミンKが関わる仕組みを阻害することで血液を固まりにくくする薬です。脳梗塞発症の抑制に高い効果があることが多くの試験によって証明され、代表的な抗凝固薬として長く使われてきました。
一方で、食品に含まれるビタミンKがワルファリンの効果を妨げるため、納豆やブロッコリーなどビタミンKを多く含む食品を避ける必要があることがよく知られています。その他にもワルファリンには以下のような使用上の注意点、問題点があります。