甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は女性に頻度が高い、甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気です。バセドウ病では抗甲状腺薬の内服が基本になりますが、その効果がないときなどは、違う選択肢の治療があります。日常生活における注意点のまとめも含めて、横浜労災病院内分泌代謝科部長の齋藤淳先生にお話を伺いました。
ラジオアイソトープという放射性ヨード(131 I)を飲むことによる治療です。
ラジオアイソトープ治療は、放射線の管理基準が緩和された1998年頃から全国的に増えてきました。
具体的な治療法は、放射性ヨードの入った大きなカプセルを1度飲むだけです。バセドウ病では一生ずっと薬を飲み続けなければいけないことも多々ありますが、RI治療5年後には約4割の方で寛解が得られ、そのまま薬を飲まなくて良くなります。ただし、1/3程度の方は甲状腺機能が下がりすぎてしまう甲状腺機能低下症になります。その際には、逆に甲状腺ホルモンを補充していきます。
この治療を行うには、まず「ヨード制限食」(ヨードを多く含む食品を避ける)という食事制限を最低一週間することが必要になります。これはなかなか大変です。また、放射性ヨードを飲むことにより一定の放射性物質が尿から出ている間(管理基準以上の数値)に関しては、病院で法律に則って処理する必要があります。ただし尿量からの放射性物質の量が減少してきたとき、あるいは元々投与する放射性物質の量が少ない場合には外来でも治療できます。
アイソトープを飲み始めて1~2週間では、甲状腺クリーゼ(参照:「甲状腺機能亢進症の症状と合併症」)に注意が必要です。特に、甲状腺がとても大きく腫れてしまっている人がたくさんのアイソトープを飲むと、甲状腺クリーゼになるリスクが上がります。ですから甲状腺が大きくなっている人には注意が必要です。
また、すぐにでも妊娠したい人も同様、この治療法は適応になりません。RI治療を行った後は、少なくとも1~2年間は妊娠できないからです。
手術療法とは、一部だけ甲状腺を残し、切り取ってしまう方法です。以下3パターンの場合に手術を検討します。
(※多くは上記の場合)
手術は通常、耳鼻咽喉科や甲状腺外科で行います。また、手術後の合併症としては以下の3つがあります。
まず、抗甲状腺薬を飲んでも良くならないときや、副作用の無顆粒球症が出てしまうときです。このようなときには、アイソトープ治療を行うこともありますが、手術を行うこともしばしばあります。
また、「海外に行くため薬の細かい調整が難しくなるのでなんとか甲状腺機能を安定させたい」という方が手術をしてから行くこともあります。さらに、女性の場合ではあまりに甲状腺が大きくなってしまうと美容的・外見的な問題もあり、手術をすることがあります。
食べ物について、基本的に制限はありません。唯一、ラジオアイソトープ治療を行う場合には、前述したようにヨード制限食を取るようにします。ただし、極端に偏った食事は危険です。大量にヨードをとるような食事(たとえば昆布をたくさん食べたりする)や、イソジンで何度もうがいをすることは避けます。イソジンによるうがいはヨードの摂りすぎにつながり、甲状腺機能に異常を及ぼすことがあるからです。
甲状腺ホルモンが落ち着けば問題なく妊娠は可能です。さらに、妊娠のときにも飲める薬(プロピルチオウラシル:「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療―抗甲状腺薬の内服」参照)はあります。ただし、赤ちゃんに一過性の「新生児バセドウ病」が起こることがあります。ですから、バセドウ病の患者さんが赤ちゃんを生んだときには、赤ちゃんの甲状腺機能もチェックします。
抗甲状腺薬による治療開始直後は体温が上がります。ですから、夏場の熱中症には注意が必要です。十分な水分をとることを心がけ、気温の高いところ(高温多湿環境での肉体労働)での作業は控えましょう。具体的には温室での作業・温泉・サウナ・熱い体育館での運動です。これらの運動は甲状腺機能が安定するまで、または正常化するまではやめたほうがよいでしょう。
横浜労災病院 内分泌代謝内科部長、 千葉大学医学部 臨床教授
関連の医療相談が28件あります
甲状腺機能亢進症
質問よろしくお願いします。 最近頻脈と体重減少が気になり検査してもらって甲状腺機能亢進症と診断されました。今産後3ヶ月で、一人目の出産の時も一時的に甲状腺のホルモンが過剰分泌しました。3ヶ月程度で薬も飲まなくて良くなりました。今回も同じかな?と思ったのですが、昨日の診断から顎から首にかけてのところが痛いまではいかなくても違和感?があります。口が大きくあきにくいような、、あと、右耳下のあたりが風船を膨らました時のような感じがします。甲状腺と関係あるのでしょうか??違和感が気になります。よろしくお願いします。
3か月前から胸の痛み
こんばんは。20歳です。 3か月前に健康診断を受け甲状腺が腫れていると言われ病院に行き、バセドウ病と診断されました。 今、通院しています。 最近アイソトープ治療を受けました。 健康診断を受けた後ぐらいから右の胸の方が深呼吸(息を吸う)や仕事をしていて疲れてくると圧迫感や息苦しさ動悸があります。 それが、1か月前ぐらいから左の胸の方が深呼吸(息を吐く)や疲れてくると圧迫感や息苦しさ、動悸、腕の付け根の痛みがあります。 主治医に相談したのですがバセドウ病とは関係ないと言われました。 レントゲンも何回かとったのですが異常はなかったです。 毎日痛くなるのでとても辛く原因がわからないので不安です。 何かの病気なのでしょうか。 可能性のある病気や何科にかかるのが良いのか知りたいです。 よろしくお願いします。
バセドウ病 アイソトープの2回目をするか全摘出をするか
16歳の娘は3年程前バセドウ病と診断され薬物療法を開始しましたがすぐに蕁麻疹が出てしまい他のお薬に。 3年間投薬しましたが副作用が出てしまいこのまま投薬は無理とゆうことで全摘出かアイソトープかとゆうことになりアイソトープを選びました。 しかしアイソトープ後半年で数値が上がってしまい再度アイソトープをするか全摘出をするかと担当医師から言われました。 知り合いの方は同じバセドウ病で投薬治療していましたが橋本病に反転してしまいとても辛いと聞いたのでどうしようかと家族で何度も話し合いましたがまだ結果が出ず…。 主人のいとこもバセドウ病で全摘出ではなく少量残したと聞きました。 良いアドバイスがあれば宜しくお願いいたします。
16歳の娘がバセドウ病と診断
娘が昨日 エコーと血液検査の結果 バセドウ病と診断され、メルカゾールの服用を始めました。まだ 16歳なので 副作用の出る可能性のある薬の服用が心配です。 まだまだ先の事ですが、服用中は妊娠も出来ないと聞いた事があります。(それまでに治れば良いのですが…) 若年層のバセドウ病に対しての最適な治療方法と どのような事に注意していったらいいのか 教えてください。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「甲状腺機能亢進症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。