インタビュー

甲状腺機能亢進症の治療―RI治療、手術、日常生活の注意点

甲状腺機能亢進症の治療―RI治療、手術、日常生活の注意点
齋藤 淳 先生

横浜労災病院 内分泌代謝内科部長、 千葉大学医学部 臨床教授

齋藤 淳 先生

この記事の最終更新は2015年08月15日です。

甲状腺機能亢進症バセドウ病)は女性に頻度が高い、甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気です。バセドウ病では抗甲状腺薬の内服が基本になりますが、その効果がないときなどは、違う選択肢の治療があります。日常生活における注意点のまとめも含めて、横浜労災病院内分泌代謝科部長の齋藤淳先生にお話を伺いました。

ラジオアイソトープという放射性ヨード(131 I)を飲むことによる治療です。
ラジオアイソトープ治療は、放射線の管理基準が緩和された1998年頃から全国的に増えてきました。

具体的な治療法は、放射性ヨードの入った大きなカプセルを1度飲むだけです。バセドウ病では一生ずっと薬を飲み続けなければいけないことも多々ありますが、RI治療5年後には約4割の方で寛解が得られ、そのまま薬を飲まなくて良くなります。ただし、1/3程度の方は甲状腺機能が下がりすぎてしまう甲状腺機能低下症になります。その際には、逆に甲状腺ホルモンを補充していきます。

この治療を行うには、まず「ヨード制限食」(ヨードを多く含む食品を避ける)という食事制限を最低一週間することが必要になります。これはなかなか大変です。また、放射性ヨードを飲むことにより一定の放射性物質が尿から出ている間(管理基準以上の数値)に関しては、病院で法律に則って処理する必要があります。ただし尿量からの放射性物質の量が減少してきたとき、あるいは元々投与する放射性物質の量が少ない場合には外来でも治療できます。

アイソトープを飲み始めて1~2週間では、甲状腺クリーゼ(参照:「甲状腺機能亢進症の症状と合併症」)に注意が必要です。特に、甲状腺がとても大きく腫れてしまっている人がたくさんのアイソトープを飲むと、甲状腺クリーゼになるリスクが上がります。ですから甲状腺が大きくなっている人には注意が必要です。

また、すぐにでも妊娠したい人も同様、この治療法は適応になりません。RI治療を行った後は、少なくとも1~2年間は妊娠できないからです。

手術療法とは、一部だけ甲状腺を残し、切り取ってしまう方法です。以下3パターンの場合に手術を検討します。

  • 抗甲状腺薬が使用できない
  • 抗甲状腺薬を使っても効果がない

(※多くは上記の場合)

  • ラジオアイソトープ治療効果がない

手術は通常、耳鼻咽喉科や甲状腺外科で行います。また、手術後の合併症としては以下の3つがあります。

まず、抗甲状腺薬を飲んでも良くならないときや、副作用の無顆粒球症が出てしまうときです。このようなときには、アイソトープ治療を行うこともありますが、手術を行うこともしばしばあります。

また、「海外に行くため薬の細かい調整が難しくなるのでなんとか甲状腺機能を安定させたい」という方が手術をしてから行くこともあります。さらに、女性の場合ではあまりに甲状腺が大きくなってしまうと美容的・外見的な問題もあり、手術をすることがあります。

食べ物について、基本的に制限はありません。唯一、ラジオアイソトープ治療を行う場合には、前述したようにヨード制限食を取るようにします。ただし、極端に偏った食事は危険です。大量にヨードをとるような食事(たとえば昆布をたくさん食べたりする)や、イソジンで何度もうがいをすることは避けます。イソジンによるうがいはヨードの摂りすぎにつながり、甲状腺機能に異常を及ぼすことがあるからです。

甲状腺ホルモンが落ち着けば問題なく妊娠は可能です。さらに、妊娠のときにも飲める薬(プロピルチオウラシル:「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療―抗甲状腺薬の内服」参照)はあります。ただし、赤ちゃんに一過性の「新生児バセドウ病」が起こることがあります。ですから、バセドウ病の患者さんが赤ちゃんを生んだときには、赤ちゃんの甲状腺機能もチェックします。

抗甲状腺薬による治療開始直後は体温が上がります。ですから、夏場の熱中症には注意が必要です。十分な水分をとることを心がけ、気温の高いところ(高温多湿環境での肉体労働)での作業は控えましょう。具体的には温室での作業・温泉・サウナ・熱い体育館での運動です。これらの運動は甲状腺機能が安定するまで、または正常化するまではやめたほうがよいでしょう。

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