インタビュー

甲状腺機能亢進症は女性に多い病気―症状が起こる原因や検査・診断について

甲状腺機能亢進症は女性に多い病気―症状が起こる原因や検査・診断について
齋藤 淳 先生

横浜労災病院 内分泌代謝内科部長、 千葉大学医学部 臨床教授

齋藤 淳 先生

この記事の最終更新は2015年08月12日です。

甲状腺機能亢進症バセドウ病)は女性に頻度の高い、甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気です。バセドウ病は具体的にどのような病気なのでしょうか? 原因は何なのでしょうか? どのように検査をしていくのでしょうか? 横浜労災病院内分泌代謝科部長の齋藤淳先生にお話を伺いました。

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが出すぎてしまい、それにより甲状腺腫(甲状腺の腫れ)・頻脈・眼球突出などさまざまな症状が出現する病気です。女性に多く、おおよそ10~20人に1人程度の割合で発症する、それなりに頻度の高い病気です。

厳密に言えば、バセドウ病=甲状腺機能亢進症ではなく、甲状腺機能亢進症のうち80%以上をバセドウ病が占めます(残り20%にはチラージン中毒・TSH産生腫瘍・過機能性甲状腺結節などが含まれます)ただしここでは、甲状腺機能亢進症の中で最も多いバセドウ病についてお話をしていきます。

バセドウ病はさまざまな「抗体」が甲状腺を過剰に刺激してしまい、甲状腺ホルモンが大量に分泌されてしまう(甲状腺が働きすぎてしまう)ことで引き起こされます。

現在甲状腺を刺激する物質として分かっている具体的な抗体は2種類あります。ひとつはTSH受容体抗体(TRAb)と言うものです。記事1「甲状腺とは―甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化させる」で、甲状腺ホルモンはTSHによって調節されていると説明しました。甲状腺にはホルモン分泌調節のために「TSH受容体」というものがあり、TSH受容体にTSHがくっつくことにより、甲状腺ホルモンが出ます。

もうひとつは甲状腺刺激抗体(TSAb)という抗体です。これは直接甲状腺を刺激していきます。しかし、なぜこの抗体が増えるのか、はっきりとした原因はまだ分かっていません。

甲状腺機能亢進症は、喫煙者のほうがかかりやすいということがはっきり分かっています。喫煙している方は治りにくいというデータもあります。

喫煙以外には、はっきりしたリスクはありません。ストレスについても言われることがありますが、千差万別です。そもそもストレスをどう考えるかは難しく、またストレスはあらゆる疾患に関係してくるため、一概に甲状腺機能亢進症(バセドウ病)のみに関わると言い切ることはできません。

基本的には「遺伝はおこらない」と考えて下さい。もちろん、家族歴(親や祖先に有病者がいたか)は考慮する必要があります。つまり、親が甲状腺機能亢進症(バセドウ病)になったら子どももなりやすいか? と言われれば、そうなりやすい素因はあると考えます。しかし、「これが原因遺伝子」とはっきり言える確証はまだ見つかっておらず、遺伝についてはいまだにはっきりしていないのが現状です。

バセドウ病は以下4つの検査を組み合わせながら診断していきます。

喉が柔らかく、痛みやしこりなどはないのが特徴です。触診により甲状腺が腫れて大きい状態であれば、甲状腺機能亢進症が疑われます。

  • 甲状腺ホルモン(T3、T4)値の上昇
  • TSHの低下
  • TSH受容体抗体が陽性になることもある
  • 甲状腺刺激抗体(TSAb)が陽性になることもある
  • コレステロール値の低下(代謝が良くなりすぎることによる)
  • 血液中のカルシウムとALPの上昇
  • 肝機能障害、ASTとALTの上昇

放射性ヨード(123I:カプセル状になっているものが多いです)を飲み、24時間後、甲状腺にどれだけ放射性ヨードが取り込まれているかを見る検査です。甲状腺機能亢進症では放射性ヨードの取り込みが大きくなるため、多く取り込まれているほど症状が重いということになります。なお、この検査は主に確定診断(はっきりその病気であると診断すること)をつけるとき(特にTSH陰性・TSAb陰性のとき)によく行う検査です。

甲状腺の大きさと血流、腫瘍合併の有無について確認します。

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