
バセドウ病とは自己免疫疾患の1つで、代謝や成長などに関わる“甲状腺ホルモン”が過剰に分泌されてしまう病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気は“甲状腺機能亢進症”と呼びます。いくつか種類がりますが、中でもバセドウ病はもっとも患者数が多い病気として知られています。
本記事では、バセドウ病の原因や症状、検査法、治療法までを詳しく解説します。
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンの分泌に関わる“TSH受容体”に対する自己抗体が作られてしまうことにより、TSH受容体が刺激され続け、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
日本では1,000人に0.2~3.2人の方がバセドウ病にかかるといわれており、男女比は1:3~5と女性に多いことが知られています。
はっきりとした原因はまだ分かっていません。
ただし、血のつながった家族内で発症する確率が高いことから、かかりやすい体質があると考えられています。また発症のきっかけとして、ウイルス感染や強いストレス、妊娠・出産などが関与していると考えられます。さらに、喫煙はバセドウ病の発症リスクを高めるほか、治療効果を弱め、再発率を高めるといわれているので注意が必要です。
バセドウ病では、甲状腺機能亢進症にみられる以下のような症状が現れることがあります。
など
バセドウ病特有の症状として、眼球が外側に飛び出すことによって外見に変化が生じることが知られています。これを“眼球突出”といいます。眼球突出の症状が強く現れる場合には、まぶたを閉じた際に目が完全に閉じないなどの症状が現れることもあります。
バセドウ病が疑われた際には、まずは血液検査によって甲状腺ホルモン(FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定を行います。FT4が上昇、TSHが低下している場合には、甲状腺機能亢進症が疑われます。
甲状腺機能亢進症にはバセドウ病のほかにもさまざまな種類があるため、より詳しい血液検査や甲状腺エコー(超音波)検査などによって病気の鑑別を行います。
検査の結果バセドウ病の場合には、血液検査でTSH受容体抗体(TRAb)や甲状腺刺激抗体(TSAb)が陽性となることが一般的です。ただし、まれにこれらの抗体が陰性や弱陽性にとどまるバセドウ病もあるため、併せてラジオアイソトープを用いた画像検査(RI検査)が行われることもあります。
そのほか、補助的な検査として胸部X線検査や心電図検査などが行われることもあります。
治療には、薬物治療・手術治療・アイソトープ治療の3つが挙げられます。まず薬物治療が行われ、薬の効果が弱い場合などにそのほかの治療方法が検討されます。
薬物治療では、甲状腺ホルモンの分泌を抑える“抗甲状腺薬”が処方されます。
主な副作用としてかゆみ、肝障害などがみられ、まれに白血球の減少が生じることもあるため、医師の指示に従って服用することが重要です。
手術治療では、甲状腺摘出術が検討されます。一般的には術後の再発を防ぐために全摘が検討されますが、場合によっては甲状腺の一部を残す術式が行われることもあります。
甲状腺摘出術は、バセドウ病の治療の中でもっとも確実に治療効果が得られる手段ですが、甲状腺を全摘した場合には薬で甲状腺ホルモンを補う必要があるほか、手術あとが残ること、手術による合併症が懸念されることなどの注意点もあります。
アイソトープ治療とは、放射性ヨウ素のカプセルを服用することによって、甲状腺を小さくしてホルモンの分泌を抑える治療法です。治療後は、甲状腺ホルモン薬を服用する必要が生じることもあります。
アイソトープ治療は手術と比較すると、入院が不要で術後合併症がないところが特徴です。ただし、妊娠中の方や6歳未満の方には行えないなどの制限があります。また、治療後一時的に眼球突出の症状が強く現れることもあります。
バセドウ病にはさまざまな症状があり、人によって現れる症状の種類や程度が異なるため、本人が異変に気付かないことがあるほか、病院を受診しても見過ごされてしまうこともあります。
しかし、甲状腺ホルモンが過剰に分泌された状態が続くと、感染症やけがなどのダメージを受けた際に臓器が機能低下を起こす“甲状腺クリーゼ”を引き起こし、命に関わるケースもあります。上述のような気になる症状がある場合には、内分泌内科などの受診を検討するとよいでしょう。
医療法人神甲会 隈病院 甲状腺内科顧問
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