バセドウ病とは、代謝や成長などに関わる“甲状腺ホルモン”が過剰に分泌される病気です。主に甲状腺の腫れや動悸、眼球突出などの症状が見られます。バセドウ病の治療法には、薬物療法、手術治療、アイソトープ治療の3つが挙げられ、一般的にはまず薬物療法が行われます。薬物療法で十分な効果が得られなかったり、副作用などで薬物療法を続けられなくなったりした場合には手術治療やアイソトープ治療が検討されます。
本記事では、バセドウ病の薬をテーマに、処方される薬の種類や使用期間、注意点などを詳しく解説します。
バセドウ病の薬物療法では、甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑える“抗甲状腺剤”が処方されます。抗甲状腺剤にはチアマゾールとプロピルチオウラシルがあり、治療開始時には1日に3〜6錠を服用することによって、血液中の甲状腺ホルモン濃度を正常範囲に戻していきます。
甲状腺ホルモン濃度が正常に戻るにつれて、症状も改善されていきます。ただし、脈が速い、動悸がするなど甲状腺機能亢進症の症状が現れている間は、抗甲状腺剤と併せて症状を和らげるための“βブロッカー”と呼ばれる薬が処方されることもあります。
甲状腺ホルモン濃度が正常範囲に近づくと、抗甲状腺剤の服用量を徐々に減らしていきます。最終的には1日おきに1錠まで減らしていき、その状態で6か月以上甲状腺機能が正常範囲であれば、薬の服用の中止が検討されます。ただ、抗TSH受容体抗体が高い状態が続いている、眼球突出があるなど状況によって投薬中止の判断は変わってきます。
バセドウ病の薬物治療では、少なくとも薬を1年半から2年以上服用する必要があります。
また、薬を長く服用しても甲状腺ホルモン濃度が低下しない場合や、服用をやめた後に再発を繰り返してしまう場合には手術治療やアイソトープ治療が検討されます。
抗甲状腺剤の副作用は薬を飲み始めたときに現れることが多いです。そのため、治療開始から3か月程度は特に注意し、こまめに通院・検査をして様子を見ます。いずれも医師の指示に従って薬を使用しましょう。
主な副作用としては、皮膚のかゆみや肝障害が挙げられます。これらの症状が強い場合には、薬の変更や中止が検討されることもあります。
また、ごくまれに白血球が減少する“無顆粒球症*”が生じ、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなることもあります。薬の服用後に発熱やリンパの腫れなどがみられる場合には無顆粒球症が生じている可能性もあるため、薬の服用を中止し、速やかに病院を受診するようにしましょう。
妊娠中・授乳中も医師に相談のうえ、抗甲状腺剤は引き続き飲み続けましょう。
抗甲状腺剤といえば第一選択薬はチアマゾールであることが一般的ですが、チアマゾールを妊娠中に服用するとごくまれに胎児へ影響があると考えられています。そのため、妊娠中・授乳中に服用する抗甲状腺剤としては、プロピルチオウラシルが処方されることが多いですが、実際に処方される薬は状況によって異なりますので、詳しくは担当医から説明を受けるようにしましょう。
*無顆粒球症:血中の白血球の成分のうち顆粒球の量が少なくなる、またはほとんどなくなる病気
アイソトープ治療は“放射性ヨウ素内用療法”とも呼ばれ、放射性ヨウ素のカプセルを内服することによって甲状腺を小さくし、甲状腺ホルモンの分泌を抑える治療法です。
これは前述のとおり、薬物療法で効果が現れなかった場合に検討される治療法です。内服後半年程度かけて甲状腺が破壊され、ホルモン値が下がってきます。半年以上経って効果が不十分であった場合には繰り返し治療を行うことも可能です。
アイソトープ治療は手術治療と違って手術あとが残ることがなく、術後の合併症などを心配せずに治療効果が得られます。一方で、治療によって一時的に甲状腺ホルモン濃度が上昇してしまったり、治療後に甲状腺のはたらきが悪くなり甲状腺ホルモン薬を継続的に服用しなければならなくなったりすることもあります。
また、眼球突出の症状が強い場合には、治療後に目の症状が悪化することがあります。そのため、活動性の高い眼球突出の症状がある方には通常アイソトープ治療はすすめられませんが、やむを得ずアイソトープ治療を行う場合には、併せてステロイド剤を使用することもあります。
アイソトープ治療では放射性ヨウ素を使用するため、治療できる方が限られます。
以下のような方は一般的にアイソトープ治療が受けられない可能性が高いため、薬物治療や手術治療など別の治療方法もあわせて検討することになるでしょう。
※5歳以上18歳未満の方は、ほかの治療法が選択できないなどやむを得ない場合には主治医の判断でアイソトープ治療を行う場合があります。
バセドウ病の薬にはいくつか種類があります。特に妊娠中・授乳中の方は胎児に影響を与える薬もあるため、担当医に相談のうえで薬を服用するようにしましょう。また副作用が生じることもあるため、服用開始時から3か月程度は体の変化に注意しておくとよいでしょう。治療について疑問や気になることがあった場合には、担当医に相談しましょう。
医療法人神甲会隈病院 内科医長
久門 真子 先生の所属医療機関
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