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甲状腺機能亢進症の治療方法 ~病気により薬物療法や手術、アイソトープ治療などさまざま~

甲状腺機能亢進症の治療方法 ~病気により薬物療法や手術、アイソトープ治療などさまざま~
西原 永潤 先生

医療法人神甲会隈病院 診療支援本部 本部長 内科 副科長

西原 永潤 先生

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甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)とは、代謝の活発化や成長の促進などに関与する“甲状腺ホルモン”が正常より多く産生されることによって甲状腺ホルモンのはたらきが過剰になってしまう病気の総称です。

主な病気として、“バセドウ病”“機能性甲状腺結節”“TSH産生下垂体腫瘍(さんせいかすいたいしゅよう)”“妊娠性一過性甲状腺機能亢進症”が挙げられます。代謝が活発になるため汗をかきやすくなる、食べ物をたくさん食べても太らないなどの症状が現れるほか、自律神経への作用によって手が震えたり、下痢が生じやすくなったりすることもあります。

このページでは、主な甲状腺機能亢進症の治療方法を病気別にお伝えします。

甲状腺機能亢進症は、病気の種類によって治療方法が異なります。

自己免疫疾患の1つで、甲状腺を刺激する自己抗体が生じることにより甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが過剰に作られてしまいます。薬物治療・手術治療・アイソトープ治療の中から治療が検討されます。日本では薬物治療を第一選択とすることが一般的で、薬物治療の副作用が出た場合や、服用を継続しても薬を止められる目処が立たないときにそのほかの治療が検討されます。

薬物治療

薬物治療では、甲状腺ホルモンが作られることを抑える“抗甲状腺薬”が処方されます。抗甲状腺薬の副作用としては、かゆみや肝障害、まれに白血球の減少などが見られます。

手術治療

手術治療では、甲状腺摘出術が検討されます。摘出方法にはいくつか種類がありますが、再発を防ぐために甲状腺を全摘出する方法やごく一部を残す方法(準全摘術)が取られることが一般的です。治療後は、甲状腺ホルモン薬の補充療法が必要です。

アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)

アイソトープ治療とは、放射性ヨウ素のカプセルを内服することによって、甲状腺を小さくし、甲状腺ホルモンの産生を抑える治療方法です。治療後は、甲状腺ホルモンの産生量が少なくなるため、甲状腺ホルモン薬の服用が必要な場合があります。

なお、アイソトープ治療は妊娠を早期に希望する女性や若年者の方などには行えないため、注意が必要です。

甲状腺内にしこりのようなもの(腺腫様結節)が生じ、それらが甲状腺ホルモンを過剰に産生することによって生じる病気です。主に手術治療・アイソトープ治療・経皮的エタノール注入療法(PEIT)・薬物療法の中から治療が検討されます。

機能性甲状腺結節の場合、結節が大きい場合や症状が強い場合などには確実に根治できる治療方法として手術方法が検討されることが一般的です。しかし、年齢や全身状態によって手術で生じる体への負担が大きい場合には、アイソトープ治療や経皮的エタノール注入療法、薬物療法などが検討されます。

経皮的エタノール注入療法(PEIT)

経皮的エタノール注入療法とは体の表面から針を刺し、結節にエタノールを注入することによって壊死させる治療方法です。嚢胞性甲状腺結節(のうほうせいこうじょうせんけっせつ)や、機能性甲状腺結節でも結節があまり大きくない場合などに検討される治療方法です。

脳の“下垂体”に生じる良性の腫瘍で、甲状腺ホルモンの産生を促す“甲状腺刺激ホルモン(TSH)”を多く産出するために、甲状腺刺激ホルモンが過剰に産生されてしまう病気です。

TSH産生下垂体腫瘍の場合、脳の腫瘍を取り除くための手術治療が行われることが一般的です。ただし、腫瘍が脳の別の部分に浸潤(しんじゅん)(広がること)している場合など、全摘出が難しい場合には併せて放射線治療(ガンマナイフ)が行われることもあります。また、何らかの理由で手術が行えない場合や手術などで十分な効果が得られなかった場合には、腫瘍を小さくし、症状を緩和させるための薬物療法が検討されます。

妊娠初期に一時的に生じる甲状腺機能亢進症です。妊娠中期に自然治癒する確率が高いものの、早産・死産などのリスクになる可能性がある場合には、必要に応じて抗甲状腺薬による薬物治療が行われることがあります。

甲状腺ホルモンのはたらきが過剰なときはイライラしやすい、疲れやすいなど体が不調を訴えやすいため、ストレスを避けて体を休めることを心がけましょう。

食生活については、抗甲状腺薬を服用している場合には薬の効き目が悪くなってしまうことがあるため、昆布などヨードが多く含まれた食品を取りすぎないようにしましょう。また、代謝がよくなりすぎて体重が減りやすくなることから、食事や水分を十分に取り、ビタミン・ミネラルなどの栄養素を意識的に取ることが大切です。なお、病気が肝機能に影響を及ぼす可能性があるため、飲酒を控えることを心がけましょう。

甲状腺機能亢進症の治療方法は病気の種類によってもさまざまです。また、患者の年齢や全身状態、症状の現れ方などによっても異なりますので、治療について気になることがあれば、医師に相談してみるとよいでしょう。

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