甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は女性に頻度の高い、甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気です。バセドウ病はどのように治療をしていくのでしょうか? 横浜労災病院内分泌代謝科部長の齋藤淳先生にお話を伺いました。
バセドウ病の治療の基本は、抗甲状腺薬です。これにより、甲状腺ホルモンの合成を抑えていきます。
代表的なものはチアマゾールとプロピルチオウラシルです。ほとんどの場合にはチアマゾールが選択されますが、妊娠中に内服すると食道閉鎖症や円形脱毛症が赤ちゃんに起こりやすいと言われています。それゆえ妊娠を考えている方、つまりこどもを産みたいと思っている方の場合は、プロピルチオウラシルが選択されます。
チアマゾールでは、「甲状腺ペルオキシダーゼ」という酵素の働きを阻害することにより、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。この薬が甲状腺機能亢進症の治療には最もよく使われます。
初期のうちはたくさんの量を飲みます。これは、最初のうちに甲状腺機能を安定させるためです。その後少しずつ服薬量を減らしていき、やがて維持療法(再発予防といった観点から低用量の薬を服用し続ける治療法)となります。
具体的には成人の方の場合、最初は1日あたり3錠から始めます。バセドウ病が悪化している状態では後述する無顆粒球症に注意しながら6錠から始めることもあります。症状が治まってきたら、2~4週ごとに少しずつ減らしていきます。維持量の目安は1日5mg(1錠)を1日1回です。順調であればさらに減らしていき、隔日で1錠飲むこともあります。
※これはあくまで目安であり、患者さんの容体や体質次第で変わってきます。
かゆみ、じんま疹などの皮膚症状が3割くらいの割合で出現します。最初から6錠飲む方ではさらに頻度が高くなります。これらの皮膚症状は1週間くらいで少しずつ出現し、ピークは約2~3週間後です。ただし、徐々に薬に慣れてくると痒みもなくなり、自然に良くなっていきますし、薬の数を減らすと症状も減っていきます。ただしあまりにも辛いときには抗アレルギー剤を一緒に飲んでもらいます。
無顆粒球症:1000人に1~2人の割合で起きる非常に稀な副作用ですが、非常に危険な副作用です。顆粒球とは白血球の1つで、体を細菌などの異物から守る働きをしています。つまり、顆粒球がなくなると細菌から体を守れなくなります。見逃さないためにも定期的に血液検査をして、顆粒球が減っていないかチェックをしていきます。
その他:肝機能障害などが起きる可能性があります。
発熱(熱が出る)や咽頭痛(のどが痛い)などの風邪症状が出たら、その時点で血液検査が必要です。病院を受診しましょう。
プロピルチオウラシルでは、チアマゾールと同様に「甲状腺ペルオキシダーゼ」という酵素の働きを阻害することにより、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。前述したように、妊娠を考えている方の場合はプロピルチオウラシルが使用されることが多いです。
チアマゾールと同様に初期のうちはたくさんの量を飲みます。具体的には1日3錠から始めます。そして少しずつ減量し、維持量に入ると1日1~2錠で済みます。
※ただし、これも目安であり、患者さんの容体や体質次第で変わってきます。
チアマゾールと同様で皮膚症状・顆粒球減少症・肝機能障害に注意が必要です。
また、長期に飲み続けるとANCA関連腎炎という腎臓の病気を引き起こすことがあります。このような重大な副作用があるという理由もあり、プロピルチオウラシルは妊娠中の時にだけ一時的に飲む薬とされていて、一般的には長期間飲むことは多くありません。
抗甲状腺薬を飲み初めてから、早い場合には1週間くらいで検査値の改善が見られます。自覚症状は2週間程度で良くなりはじめます。そして3~4か月後には甲状腺ホルモンを正常値に近づけていくことができます。このようにきちんと毎日飲み続ければ、症状もなくなり、普通の方と変わらない日常生活を送ることができます。
ただし、薬を飲まなくなってしまうと再発することがあります。また、自分の判断で勝手に治療を中断してしまうと、前述の甲状腺クリーゼ(参照:「甲状腺機能亢進症の症状と合併症」)を引き起こすリスクがあるため、そのような意味でも薬を飲み続けることが大切です。
バセドウ病症状は多くの場合、抗甲状腺薬の服用で良くなります。また、薬を飲まなくてもOKとなることもあります。それにより、定期的に病院に来なくてよくなることはありますが、20~30年後に再発することもあり、甲状腺機能の定期的なチェックは必要です。また、抗甲状腺薬が効かなかったとしても他の選択肢があります。(参照:「甲状腺機能亢進症の治療―RI治療、手術、日常生活の注意点」)
繰り返しますが、甲状腺機能亢進症は放っておくと甲状腺クリーゼを引き起こすリスクがあるため、放置することは危険です。おかしいと感じたらまずは病院を受診し、医師の診察を受けましょう。
横浜労災病院 内分泌代謝内科部長、 千葉大学医学部 臨床教授
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