ゆうりさいろきしん

遊離サイロキシン

別名
FT4
甲状腺
血液検査
血液を採取し、その中に含まれる物質などを測定する検査です。
鑑別診断
この検査だけで病名を確定することはできませんが、異常の有無やどのような病気が考えられるかなどを知ることができるものです。検査結果に応じて、さらに検査が追加される場合があります。
フォローアップ
治療の効果や、病気の経過を知るために行われる検査です。定期的に繰り返して実施されることもあります。
スクリーニング
ある特定の病気について、その可能性があるかどうかを広く知るために行われる検査です。具体的な診断をするためにはさらなる検査を必要とします。また、健康診断などで用いられることもあります。
Icon close

基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)

※検査機関・検査方法によって異なる場合があります。

  • 0.90~1.70ng/dL

遊離サイロキシン(FT4)は代謝機能を調節する甲状腺ホルモンの一つです。甲状腺で作られ、体のさまざまな臓器に運ばれることで、代謝を促進し、心拍数や体温を上げるはたらきがあります。

遊離サイロキシンは甲状腺ホルモンの中でも甲状腺からの分泌量が多い物質で、代謝機能の血中の量を測定することで、甲状腺の機能が亢進するバセドウ病や、甲状腺の機能が低下する橋本病など、甲状腺機能の異常に関わる病気の発見に役立てることができます。

サイロキシンは甲状腺で作られ、血中に放出されます。血中のサイロキシンのほとんどは血中のたんぱく質と結合しますが、一部のサイロキシンは「遊離体」として代謝の調節に関わります。遊離サイロキシン以外は代謝機能を調節するはたらきを持たないため、遊離サイロキシンだけを測ることで甲状腺の機能をよりはっきりと調べることができます。

遊離サイロキシンの量が多すぎると、代謝が過剰に促進され疲れやすくなったり、汗をかきやすくなったりします。反対に少なすぎると代謝が上がらず寒さを感じやすくなったり、汗が出ずに乾燥したりします。

甲状腺機能の異常に関わる症状は「ただの疲れ」と見過ごしてしまいがちなものも多いため、これらの症状が続くときは甲状腺の異常を疑い、遊離サイロキシンなどの甲状腺機能を調べる検査が行われることがあります。

遊離サイロキシンは、動悸や体重減少、発汗量の増加、暑がり、眼球突出などの甲状腺機能が亢進する病気が疑われるときや、抑うつ状態や便秘、皮膚の乾燥、体重増加、脱毛症などの甲状腺機能が低下する病気が疑われるときに測られることがあります。

遊離サイロキシンの量に異常がみられたときは、ほかの検査結果と総合して具体的な病気が診断されます。

また、サイロキシンの測定は健康診断のメニューとして行われることもあります。甲状腺疾患は若い女性に頻度が高く、妊娠・出産に影響を及ぼすこともあるため、妊婦検診の中で行う場合もあるようです。

食事や喫煙の影響を受ける検査値ではないため、検査前に注意することはありません。

検査を受けられない/受けるのに注意が必要な人

てんかんを抑える薬を飲んでいる場合は、検査結果に影響を及ぼす場合があります。服用している薬がある場合は、医師に知らせるようにしましょう。

検査前に心がけるとよいこと

血中の遊離サイロキシン量を測るため、採血を行います。腕を出しやすい服装を心がけるとスムーズに検査を受けられるでしょう。

少量の血液で検査が可能ですので、通常であれば短時間で検査が終了します。

針を刺す際に痛みを感じることがありますが、一般的な健康診断時の採血と同程度と考えてよいでしょう。

検査結果は、血液中のホルモン量で表されます。基準範囲は0.90 ng/dL~1.70 ng/dLが一般的です。

ただし、検査方法や病院の測定方法によって基準値が異なる場合もあるため、検査結果については医師の説明をよく聞くようにしましょう。

また、遊離サイロキシンとよく似た検査にサイロキシン(総サイロキシン又はT4)があります。こちらも甲状腺の機能を調べるための検査値ですが、基準範囲が異なりますので、間違えないように注意するようにしましょう。

遊離サイロキシンが基準値より高い場合、バセドウ病、プランマ―病、甲状腺腫瘍、甲状腺炎などの甲状腺の機能が亢進する病気が疑われます。

また、遊離サイロキシンが基準値より低い場合は、橋本病や亜急性甲状腺炎などの甲状腺機能が低下する病気が疑われます。これらの病名は、遊離サイロキシンとほかの甲状腺関連の検査値の結果と、超音波検査やCT・MRIなどの画像検査の結果と総合して判断されます。

また、遊離サイロキシンは、これらの病気の治療を行っている際に、治療効果を推し量る目的で測定されることもあります。この場合、基準範囲外であっても、今の治療効果を医師が認めた場合は、さらなる対処がなされないこともあります。

甲状腺は、私たちの代謝調節に関わる大切な器官です。

遊離サイロキシンの量が基準範囲外であった場合は、甲状腺機能の異常が潜んでいることがあるため、追加検査等で原因を探り、必要な治療を始めることが大切です。

また、すでに病気が分かっている人は、正しい治療を確実に継続する必要があります。どちらの場合も、自己判断で通院や治療をやめることなく、医師の指示にしっかりと従うようにしましょう。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。