インタビュー

脳卒中の急性期リハビリテーション

脳卒中の急性期リハビリテーション
酒向 正春 先生

医療法人社団健育会 ねりま健育会病院 院長、医療法人社団健育会 ライフサポートねりま 管理者

酒向 正春 先生

この記事の最終更新は2015年07月13日です。

脳卒中における障害をいち早く回復させるためには、リハビリテーションの方法が非常に重要なポイントとなります。リハビリテーションには急性期のリハビリと回復期のリハビリがあり、患者さんがどの段階に該当するかによってリハビリの内容も異なってきます。
では、脳卒中のリハビリテーションとは具体的にどのようなことをしていくのでしょうか。まずは急性期のリハビリについて、医療法人社団健育会 ねりま健育会病院の酒向正春先生にお話をお聞きしました。

脳卒中を起こしてしまったら、リハビリテーションは病態が落ち着き次第できるだけ速やかに始めましょう。病態が落ち着くのは遅くとも48時間以内ですから、脳卒中となってしまってから2日以内にはもうリハビリテーションを開始してよいという計算になります。

具体的な急性期リハビリテーションの方法は、とにかく患者さんを「起こして、動かす」ことです。同じ体勢にしておかないことが重要となってきます。具体的には、まず寝たきりの状態から患者さんを起こして、それから背もたれの無い椅子に、両足をしっかりと地面につけて座っていただきます。それにより体が無意識にバランスを取ろうとして、体の重心を保とうとするからです。これを前述のとおり、48時間(2日)以内にスタートさせることによって、「廃用症候群」(長期間体を安静状態に置くことによって起こる、筋力低下や床ずれなどの様々な障害)というものがかなりの確率で予防できます。

一方、2週間以上寝たきりの状態からリハビリテーションに移ってこられた患者さんは、ほとんどの場合廃用症候群に陥っています。具体的には、健側(麻痺を起していない半身)や麻痺側の筋力低下・関節可動域の低下や拘縮・精神状態の乱れ・起立性低血圧の発症・心肺機能の低下・高次脳機能の低下などが挙げられます。やはり、2週間以内に回復期のリハビリテーションに移れるようにすることが大事だといえるでしょう。

1か月以上経過して、廃用症候群が起こった状態で回復期リハビリテーションに来られる患者さんの場合、そのあと廃用症候群を治療するために1か月以上かかってしまいます。つまり、合わせて2か月以上も急性期リハビリテーションに費やすことになります。この場合、発症して1~2週間で来られた患者さんと比べると、莫大な時間とお金の無駄が生じます。当然、患者さんの時間的負担も金銭的負担も大きくなります。だからこそ、できる限り早く急性期リハビリテーションを開始して、体を動かしていくことが大切なのです。

かつて脳卒中の患者さんに対しては、「脳卒中急性期治療」という治療法がありました。この治療法は、簡潔に言うと「盲目的な安静臥床」です。つまり、「絶対に動かしてはならない。動かすと増悪してしまう。」、ただただ寝かせていることが最適な治療だという方針でした。このような治療を行うと患者さんがどうなってしまうか、前述の説明を見ていただくと予想がつくかと思いますが、褥瘡(床ずれ)・手足や四肢の拘縮(関節の可動域が狭まって固まってしまうこと)・深部静脈血栓症肺塞栓症の合併など、患者さんをますます悪い状態にさせていたのです

これを受けて厚生労働省は、脳卒中の患者さんが急性期病院に入院する日数をできる限り短くして、リハビリテーション病棟へ早く移そうという指標を出しました。これが2000年にできた、「回復期リハビリテーション医療制度」です。この制度の誕生は、脳卒中医療の革命ともいえるでしょう。
この制度ができたおかげで、かつてリハビリテーションに移るまで3か月以上かかっていたものが、今は2か月以内にまで短縮できています。

脳卒中を発症した後、3か月も病態が落ち着かないということは、基本的にありません。
48時間・悪くても一週間あれば、急性期リハビリテーションを開始することが十分に可能です。つまり、初期の急性期症状をしっかりと短期間で治療して、素早くリハビリテーションに回すという連携が取れていることが重要といえるでしょう。この連携がうまくいかないと、廃用症候群や合併症などを起こすリスクが非常に増してくるのです。

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