頭痛は、一般的な病態の1つです。日常的に頭痛を経験したことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、なかには、放っておくと命に関わるような病気が原因で生じている頭痛もあります。このような場合には、早期発見と早期治療が重症化を防ぐために大切です。
原因となる病気には、どのようなものがあるのでしょうか。また、どのような頭痛に注意すべきなのでしょうか。今回は、国立国際医療研究センター病院 脳神経外科の原 徹男先生に、見逃してはいけない危険な頭痛の特徴についてお話しいただきました。
頭痛は、大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。
一次性頭痛とは、何らかの器質的な病変を原因とせずに生じる頭痛を指します。一次性頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などが含まれます。
〈主な一次性頭痛の種類と特徴〉
一方、二次性頭痛とは、何らかの器質的な病変を原因として生じる頭痛のことです。後ほど詳しくお話ししますが、頭痛の原因となる病気には、くも膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などがあります。二次性頭痛の場合、原因となる病気によって重症化し、命に関わるケースも少なくありません。
ご説明した頭痛の分類のうち、命に関わる可能性があるため見逃してはいけないものは、二次性頭痛です。二次性頭痛の原因には、主にくも膜下出血、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫があります。
確率的に9割の頭痛は、緊急性も低く積極的な治療を必要としないものであると考えられます。しかし、およそ1割程度に、見逃してはいけない危険な頭痛が含まれています。約1割と頻度が低いために過度に不安になる必要はありませんが、重症化を防ぐためには注意が必要です。
二次性頭痛の原因となる3つの病気と、それぞれの頭痛の特徴についてお話しします。
見逃してはいけない危険な頭痛の原因となる代表的な病気が、くも膜下出血です。くも膜下出血とは、くも膜と脳実質の間のくも膜下腔に出血が起こる病気であり、脳の動脈の一部がコブ状に膨らんだ脳動脈瘤の破裂によって生じることが多いです。
くも膜下出血を発症すると、昏睡状態に陥り、亡くなる可能性もあります。救命されたとしても、半身の麻痺など障害が残ることもあるでしょう。
くも膜下出血では、突然、激しい頭痛が起こる点が特徴です。“ハンマーで叩かれたような痛み”などと形容されることもあるように、今まで経験したことがないような強い痛みが突然生じることが多いとされます。
お話ししたように、くも膜下出血は突然の激しい頭痛で起こりますが、なかには、出血が少量のため軽微な頭痛で発症する場合もあります。
つまり、脳動脈瘤がわずかに破裂し微小の出血が起こると、それほど強くない頭痛が起こったり体がだるかったりすることがあります。これらは、マイナーリークと呼ばれる微小の出血によって現れる症状です。
この微小の出血の段階で脳動脈瘤を発見することができれば、その後の再破裂を防ぐことができるケースもあります。
くも膜下出血と区別すべき病態に“片頭痛”があります。片頭痛も突然の急激な痛みが現れることがあるからです。しかし、片頭痛は時間の経過とともに治ることが多い一方、くも膜下出血による痛みは、適切な処置を受けない限り治ることはありません。
また、マイナーリークによるわずかな頭痛は、風邪症状とよく似ている場合があります。
次に、原因となる病気に脳腫瘍があります。脳腫瘍とは、頭蓋内に生じる腫瘍を指し、頭蓋内に存在するあらゆる組織から発生します。
脳は部位によって司る機能が異なるため、脳腫瘍が生じる場所によって、現れる症状も異なります。運動野に生じると片側の運動麻痺やけいれんを起こしたり、左の頭頂後頭葉にかけての脳腫瘍の場合には、ゲルストマン症候群と呼ばれる症状を起こしたりすることがあります。
〈ゲルストマン症候群の主な症状〉
脳腫瘍では、慢性的な頭痛を生じます。頭痛が起こる頻度は人によって異なりますが、自然に頭痛が治まることはなく、徐々に悪化していく点が特徴です。じわじわとした頭痛が続き、痛みが強くなったときに受診にいたるケースが多いとされます。
このため、慢性的な頭痛があり、徐々に痛みが強くなっていく場合には、注意が必要です。また、脳腫瘍が大きくなった場合、嘔吐や手足の麻痺、けいれんなどを伴うこともあります。
脳腫瘍の場合、朝方に頭痛が起こることが多くなるケースがあります。なぜ朝方に頭痛が起こるかというと、就寝中は呼吸が浅くなるため二酸化炭素が血液中にたまりやすくなり、その結果、朝方に血管が拡張しやすくなるからです。血管がもっとも拡張されるのが朝方であることが多いため、朝方に頭痛が起こることが多いと考えられています。
血管の拡張に伴い脳の血液量も増え、頭蓋内の圧力が高くなり、頭痛が起こるようになります。脳腫瘍があると、それだけで頭蓋内圧は上がるため、少し血管が広がっただけでも頭痛を生じるようになります。
脳腫瘍と区別すべき病態に“片頭痛”があります。しかし、片頭痛は時間の経過とともに治ることが多い一方、脳腫瘍による頭痛は、一時的に治ることがあっても徐々に悪化していく点が特徴です。
徐々に悪化していく慢性的な頭痛があれば、受診のうえ、CTやMRIによる画像検査を受けることをおすすめします。
慢性硬膜下血腫とは、高齢者に多い病気であり、軽い頭部打撲をきっかけに生じることがあります。たとえば、乗り物への乗り降りのときや、自宅で軽度の段差につまずいたときなどに軽く頭をぶつけたことをきっかけに発症することもあります。
頭をぶつけた後、1~2か月の間に、脳を覆っている硬膜と脳の間に徐々に血液がたまっていき、正常脳が圧迫されることによって、頭痛や認知機能の低下などさまざまな症状が現れます。
慢性硬膜下血腫では、じわじわとした頭痛が続く点が特徴でしょう。また、慢性硬膜下血腫になると、頭痛とともに認知機能の低下を生じるようになります。具体的には、計算ができない、自分で服が着られなくなる、道に迷ってしまうなどの症状が現れることがあります。頭部の打撲がきっかけで発症することが多いため、2~3か月以内に頭をぶつけた覚えがないかどうか、記憶をたどることも病気の発見のために有効であると思います。
慢性硬膜下血腫では認知機能の低下による症状が現れるため、認知症と間違われることが多いとされます。認知症と鑑別するためには、CTやMRIによって器質的な病気がないか確認する必要があるでしょう。
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授
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