インタビュー

頚椎椎間板ヘルニアの手術、効果と危険はどのくらい?―合併症と手術後について

頚椎椎間板ヘルニアの手術、効果と危険はどのくらい?―合併症と手術後について
原 徹男 先生

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大...

原 徹男 先生

この記事の最終更新は2015年05月30日です。

首・肩・腕の痛みの原因となり、ひどくなると日常生活も送れないほどの運動麻痺を引き起こす頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア。今回は頚椎椎間板ヘルニアの手術に関連して、その効果と合併症・手術後について、ご紹介します。

頚椎ヘルニアで、手術の効果がどのくらいあらわれるかは手術前の状況によります。一般的に、手足の動きは良くなったと感じられることが多いです。しかし治療前の筋力が著しく弱っている場合(足を持ち上げられない、手を上げられないなど)は、手術を行っても劇的な改善は期待できません。それでも、放っておくとさらに症状が悪化していくので、改善があまり期待できなくても手術を行います。手術の大きな目的は、症状を悪化させないことなのです。

一方で、頚椎ヘルニアでも筋力が比較的保たれている場合や年齢が若い場合などは、手足の動きの改善はかなり期待できます。しかし、この場合でも発症前の状態に完全に戻ることは難しく、何らかの運動制限が残ることが多いです。しびれや痛みなどの感覚障害は手術をしてもあまり良くなりません。
症状が痛みだけの場合、手術によってなくなることもありますが、しびれは残ることが多いです。

手術によって起きる可能性のある合併症は、首の前から手術(前方除圧固定)するか後ろから手術(後方除圧)するかによって異なります。首の前面には食道や気管や頚動脈など非常に重要な器官があるので、前方除圧固定の方が手術の難易度は高いです。

前方除圧固定の最も重い合併症として、手足が動かなくなる四肢麻痺が挙げられます。手術中になんらかの力が脊髄に加わって感覚障害が悪化したり、非常に稀ではありますが、場合によっては脊髄を損傷して完全麻痺になったりすることもあります。

また、脊髄の周囲を包んでいる液体(髄液)が外に漏れ出す、髄液漏(ずいえきろう)という合併症もあります。

椎間板の飛び出している部分(ヘルニア)が1か所の場合、全身麻酔下で手術時間は1.5〜2時間、2箇所だと3~4時間かかります。その間、患者さんは動けないので足の血液の流れが悪くなり、血管の中で血液の塊ができることがあります。そして、術後に動こうとした時に、その塊が末梢から中枢へ流れていき、肺の血管につまると肺梗塞(はいこうそく)という合併症が起きてしまいます。
これは、エコノミークラス症候群として知られているものと同じで、最悪の場合死亡することもあります。一般的に、2時間を超える全身麻酔での手術にはこの危険がつきまといます。手術中にふくらはぎを自動的にマッサージするなどの予防策は行われていますが、完全に防ぐことはできません。

他の合併症としては、あらゆる手術に共通するものですが、手術した部位の細菌感染があります。この場合は再手術が必要になります。また、移植した骨やチタン制のインプラントがずれることがあり、数日以内に再手術が必要になる場合もあります。

頚椎ヘルニアの手術を行った場合、通常、手術後3日程度でベッドから起きていただき、1週間後に抜糸を行います。必要な入院期間は普通の経過で2週間くらいですが、症状が残って歩けない場合など、転院してリハビリテーションを続けることもよくあります。

リハビリテーションは頚椎ヘルニア用の特別なメニューがあるわけではなく、通常は3ヶ月程度、筋力の維持、回復を目的とした一般的なリハビリテーションをすることになります。

記事1:頚椎椎間板ヘルニアとは。神経を圧迫する20代30代に多い病気
記事2:頚椎椎間板ヘルニアは完治しない?―検査と治療後の回復について
記事3:頚椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?治療の選択肢について
記事4:頚椎椎間板ヘルニアの手術、効果と危険はどのくらい?―合併症と手術後について
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  • 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授

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