インタビュー

頚椎椎間板ヘルニアの気になる疑問―鍼灸、ストレッチ、マッサージの効果、枕の選び方、頭痛はなぜ起こる?

頚椎椎間板ヘルニアの気になる疑問―鍼灸、ストレッチ、マッサージの効果、枕の選び方、頭痛はなぜ起こる?
原 徹男 先生

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大...

原 徹男 先生

この記事の最終更新は2015年05月26日です。

首・肩・腕の痛みの原因となり、ひどくなると日常生活も送れないほどの運動麻痺を引き起こす頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア。今回は鍼灸やストレッチ、枕の選び方、頭痛など、頚椎椎間板ヘルニアとの関係が気になる疑問について、うかがいました。

頚椎ヘルニアによる肩こりや重だるさに対して鍼灸を行うことについて、私は反対はしていません。鍼灸を病院で治療として行うことはあまりありませんが、肩まわりの筋肉の血流を増やして、緊張を和らげる目的でよく行われています。患者さんが鍼を打ってもらって気持ちがよいのであれば、受けていただいても大丈夫です。実際に効果があると感じる患者さんもいらっしゃいます。

頚椎ヘルニアにより症状があるのであれば、治療の基本は安静なので首のストレッチは原則行ってはいけません。特に、一般に頚椎は首を前に倒す(前屈)運動は大丈夫ですが、首を後ろに反らせる(後屈)運動は危険です。

首に痛みなどがあるとストレッチをしてしまう患者さんは多いですが、もし症状の原因が頚椎ヘルニアだったら、症状は悪化します。むやみに動かすのではなく安静にして、早めに整形外科や脳神経外科、あるいは神経内科を受診されることを勧めます。

枕については、基本的にはストレッチの時と同じで、首が後ろに反るような姿勢になるものは使わない方がよいでしょう。首が後ろに傾かない程度の高さがあるものがいいです。人間は寝ている時も動いているので、夜中に首に負担がかかる姿勢になると朝方症状が悪化することになります。

理想は寝ているときも首を動かさないことですが、これは無理なので、できるだけ動かさないようにナイトカラー(寝る時にだけつける首のコルセット)を勧めることがあります。ただし、持続的な頚椎カラー装着については、首の筋力の低下を心配して反対する声もあります。かならず、医師の指示にしたがって、適切に行いましょう。

夏場で暑くてナイトカラーをつけられない時などは、頭の周りに布団や枕を並べて、なるべく頭が動かないようにして寝ることも、何もしないよりは効果があります。

首の筋肉を鍛えることは確かに大切ですが、やり方を間違うと頚椎ヘルニアの症状の悪化を招く危険性があります。首を鍛えるにしても、首を動かすような筋肉トレーニングよりも、壁押しなどの静的な筋肉トレーニングの方が望ましいでしょう。

マッサージも、首そのものを動かすのはよくありません。肩周りや腕の筋肉をほぐすためのマッサージであれば、血流が増加して多少なりとも症状が改善する傾向にあるので、楽になるようであれば受けてください。温泉やぬるま湯で肩を温めることも効果的で、症状が良くなったと感じる患者さんも多いです。

頚椎ヘルニアで首の後ろが張って筋肉が収縮すると頭痛がおこります。頭痛がおこると気分も不快にもなってくるので、イライラするなどの精神的な症状も出てきます。

頚椎ヘルニアや頚椎症の患者さんのうち、症状がそこまで重くなく、肩こりがひどいだけの方には、一般的に筋肉の緊張を和らげる薬と気分を和らげる鎮静剤や抗不安薬などを処方することもあります。

頚椎ヘルニアの重症度は筋力のテスト(MMT)と排便・排尿の障害(膀胱直腸障害)により決まります。一般には脊髄そのものではなく、神経や神経根が圧迫されて痛みがでますが、基本的には前述の2つで判断します。

しかし、ヘルニアがそれほど重くなくても、痛みが強い場合は日常生活が困難になるので、患者さんと相談して手術する場合もあります。痛みと重症度はあまり関係がなく、椎間板が正中で脊髄方向に大きく飛び出しているのにあまり痛くないということもあれば、神経や神経根のわずかな圧迫のために非常に痛いということもあります。
 
脊髄関係の病気は完全に良くなることはなかなか少ないです。患者さんと医師が良好な関係を築き、一生をかけて病気と付き合っていくことが大切です。

記事1:頚椎椎間板ヘルニアとは。神経を圧迫する20代30代に多い病気
記事2:頚椎椎間板ヘルニアは完治しない?―検査と治療後の回復について
記事3:頚椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?治療の選択肢について
記事4:頚椎椎間板ヘルニアの手術、効果と危険はどのくらい?―合併症と手術後について
記事5:頚椎椎間板ヘルニアの気になる疑問―鍼灸、ストレッチ、マッサージの効果、枕の選び方、頭痛はなぜ起こる?

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  • 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授

    原 徹男 先生

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