インタビュー

頚椎(頸椎)椎間板ヘルニアは完治しない? 専門医に聞く頚椎ヘルニアの検査と治療

頚椎(頸椎)椎間板ヘルニアは完治しない? 専門医に聞く頚椎ヘルニアの検査と治療
原 徹男 先生

国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大...

原 徹男 先生

この記事の最終更新は2015年06月03日です。

首・肩・腕の痛みの原因となり、ひどくなると日常生活も送れないほどの運動麻痺などを引き起こす頚椎椎間板(けいつい)ヘルニア。今回は頚椎椎間板ヘルニアの検査方法、そして治療によってどこまで治るのかという点について、お伝えします。

 頚椎ヘルニアの検査は、第一にMRI検査です。それに加えて、普通のレントゲン写真も必ず撮影します。特殊な検査として、脊髄造影検査・椎間板造影検査・筋電図などもありますが、入院してから行うことが多く、最初から行う検査ではありません。

上で述べたとおり、頚椎の症状が疑われたらまずMRI検査を行いますが、夜中の救急外来でMRIを直ぐに撮ることができる病院はとても少数です。「脊椎ドック」という頸椎ヘルニアの検診をやろうという試みはありますが、全国的には極めて稀です。検診で見つかるというよりも症状が出てから受診して、はじめて診断されることが普通です。

脊髄の神経細胞が一旦死んでしまうと、現在のところ、それを治療により元に戻すことはできません。このため、手術などにより症状が回復して歩けるようになっても、上手く字が書けなかったり、ワインのコルクが開けられなかったり、といった障害は基本的に一生残ります。脊髄の疾患は軽いものでも、一般的に何らかの後遺症が残る可能性は高いのです。

頚椎ヘルニアになった後、どこまで元の生活に戻れるかどうかは、最初に発症した時(初発時)の症状でだいたい決まります。

初発時の症状の程度は自力で歩行が可能か、筋力の低下がないか、また排尿の障害や失禁などの症状(膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい))がどれほどあるかで判断します。しかし、術後に自力歩行が可能になっても、後遺症としてしびれなどの感覚障害が残ったり、手先の微細な運動が制限される“巧緻運動障害”が残ったりすることはあります。

排尿や排便は、脳からの指示を脊椎の神経が伝達することによって機能しています。膀胱直腸障害とは、事故、脳疾患(脳卒中脳腫瘍)、重度の椎間板ヘルニアなどが原因で脳や脊髄が損傷して神経の伝達が阻害されてしまったため、排尿や排便が思うように機能しなくなってしまった障害のことをいいます。膀胱直腸障害の症状として、尿意が自覚できずに排尿が不便になるというものや、肛門が痺れて締まりがなくなってしまうものなどがあります。

頚椎ヘルニアによる筋力の低下は、手足の筋力テスト(Muscle Manupulation Test, MMT(1))によって測定します。その結果、非常に筋力が弱っている(MMTが0~2)場合は手術を受けなくてはならず、手術を受けたとしてもその後の回復はあまり良くありません。このような場合、一般的にスポーツなどの運動は再開できません。

症状に気付いた時に筋力の低下がそれほどでもない(MMTが3以上)場合は、その後に改善する見込みがあります。少なくとも日常生活は元には戻れることが多いです。具体的には自分で立って歩くことができるようになります。

四肢の筋力の低下が疑われる際に行われる検査のことです。各筋肉(大腿四頭筋や上腕三頭筋など)に対して筋力低下の評価を行います。0〜5の6段階で評価します。評価のポイントは重力に逆らって動かせるかどうかです。始めに3以上か3未満か(重力に逆らって動かせるか)を判定します。

 

MMT(Muscle Manupulation Test)

5(normal)強い抵抗を加えても運動可能

4(good)重力及び中等度の抵抗を加えても関節運動が可能

3(fair)重力に逆らって関節運動が可能であるが、それ以上の抵抗を加えれば運動は不可

2(poor)重力の影響を除去すれば、その筋の収縮によって関節運動が可能

1(trace)筋収縮はみられるが、それによる関節運動はみられない

0(zero)筋収縮が全く見られない

一方で、頚椎ヘルニアからの回復の程度は年齢にも大きく左右されます。例えば、若い人に突然発症したヘルニアでは、手術が迅速に行われた場合(24時間以内)は目立った後遺症もなく、元の日常生活に復帰できることもあります。一般にしびれなどの感覚障害は後遺症として残ることがほとんどですが、症状が神経根の圧迫による腕の痛みだけの場合、手術によってかなりよくなることが多いです。

 

記事1:頚椎椎間板ヘルニアとは。神経を圧迫する20代30代に多い病気
記事2:頚椎椎間板ヘルニアは完治しない?―検査と治療後の回復について
記事3:頚椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?治療の選択肢について
記事4:頚椎椎間板ヘルニアの手術、効果と危険はどのくらい?―合併症と手術後について
記事5:頚椎椎間板ヘルニアの気になる疑問―鍼灸、ストレッチ、マッサージの効果、枕の選び方、頭痛はなぜ起こる?

受診について相談する
  • 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授

    原 徹男 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。
この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

    実績のある医師

    周辺で頚椎椎間板ヘルニアの実績がある医師

    岩井整形外科病院 整形外科 部長

    いしばし かつひこ

    岩井整形外科病院―脊椎脊髄疾患に対し低侵襲な専門的治療を提供する

    低侵襲脊椎手術の発展に貢献し続ける岩井整形外科病院による椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症をテーマにした特集です。

    内科、リウマチ科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、循環器内科、消化器内科

    東京都江戸川区南小岩8丁目17-2

    JR中央・総武線「小岩」南口 徒歩4分

    岩井整形外科病院 整形外科 、岩井FESSクリニック 副院長

    たけばやし けんと

    岩井整形外科病院―脊椎脊髄疾患に対し低侵襲な専門的治療を提供する

    低侵襲脊椎手術の発展に貢献し続ける岩井整形外科病院による椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症をテーマにした特集です。

    内科、リウマチ科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、循環器内科、消化器内科

    東京都江戸川区南小岩8丁目17-2

    JR中央・総武線「小岩」南口 徒歩4分

    岩井整形外科病院 院長補佐

    やなぎさわ かずよし

    岩井整形外科病院―脊椎脊髄疾患に対し低侵襲な専門的治療を提供する

    低侵襲脊椎手術の発展に貢献し続ける岩井整形外科病院による椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症をテーマにした特集です。

    内科、リウマチ科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、循環器内科、消化器内科

    東京都江戸川区南小岩8丁目17-2

    JR中央・総武線「小岩」南口 徒歩4分

    総合東京病院 院長代行/脊椎脊髄センター長

    いとう やすのぶ

    内科、血液内科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、美容外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、ペインクリニック科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、代謝内科、脳神経内科、血管外科、放射線診断科、放射線治療科

    東京都中野区江古田3丁目15-2

    都営大江戸線「新江古田」 徒歩10分、西武新宿線「沼袋」 徒歩15分、JR中央・総武線「中野」関東バス 中27 総合東京病院下車すぐ  京王バス 中92 浄風園前下車 徒歩3分 バス

    品川志匠会病院 所属、新横浜スパインクリニック 所属

    つちや なおと

    整形外科、リハビリテーション科、麻酔科、脳神経外科

    東京都品川区北品川1丁目29-7

    京急本線「北品川」 徒歩5分、JR東海道本線(東京~熱海)「品川」 車5分、りんかい線「天王洲アイル」 車8分

    関連の医療相談が28件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「頚椎椎間板ヘルニア」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app