胸郭出口症候群とは、胸郭出口(首から肩にかけての部分)にある神経や血管が締め付けられることによって、上肢や、肩、腕、肩甲骨の周辺に症状を生じる病気を指します。症状の程度はさまざまですが、人によっては日常生活に支障をきたす場合もあるといいます。これを放置すると治りにくくなるほか、治療が長期化することもあるため、早めに適切な治療を受けることが大切です。
本記事では、胸郭出口症候群の症状から胸郭出口症候群にかかりやすい人の特徴について解説します。
胸郭出口症候群の症状は、腕を上に挙げる動作をする、悪い姿勢で作業する、過度な腕や肩のトレーニングをするなどの動作を行うことによって、上肢にしびれを感じたり、肩や腕、肩甲骨のあたりに痛みを感じたりするのが特徴です。
肘から先の小指側に沿って刺すような痛みやうずくような痛み、しびれなどを感じるほか、握力低下や細かい作業がしにくくなるといった運動麻痺の症状が現れることがあります。さらに、握力低下や運動障害が見られる場合は、手の筋肉が萎縮することで手の甲の骨の間がへこみ、小指の付け根がやせるといった現象も見られます。
ほかにも、胸郭出口症候群の原因の1つである鎖骨下動脈の圧迫がある場合は、上肢の血行が悪化し、腕が白っぽくなって痛みを感じることがあります。また、鎖骨下静脈が圧迫されている場合は、静脈血の戻りが悪くなることで手や腕が青紫色になることもあります。
しびれは日常で起こり得る症状ですが、胸郭出口症候群の場合は一時的ではなく何度も生じることが特徴です。たとえば、寝ているときに腕が圧迫されていると、朝起きたときに腕がしびれていることがあります。これは正座をした際に足がしびれることと同様、神経が圧迫されたり、血行が一時的に悪くなったりしたために生じるもので、しばらく経てば自然に解消されます。
もし一過性ではないしびれや痛みが生じ、胸郭出口症候群を疑った場合は、受診前にその状況や持続時間、頻度などを把握し、医師に伝えられるとよいでしょう。また、胸郭出口症候群と同様の症状が現れる病気には、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症、脊髄腫瘍などさまざまなものがあるため、気になる症状がある場合は整形外科の受診を検討するとよいでしょう。
胸郭出口周辺に負担をかける動作や姿勢の人は胸郭出口症候群を起こしやすい傾向にあるとされています。特に胸郭出口症候群になりやすい人の特徴は以下のとおりです。
胸郭出口症候群の診断方法は触診、さまざまな姿勢で体の変化を見る各種テスト、X線検査などがあります。これらの検査で胸郭出口症候群の特徴が現れ、かつ頚椎椎間板ヘルニアや脊髄腫瘍など、似た症状が現れる病気の可能性を除外できる場合に、胸郭出口症候群と診断されます。それぞれの診断方法の詳細は以下のとおりです。
鎖骨のくぼみあたりを触診し、骨による隆起(もりあがること)が分かる場合は、頚肋による胸郭出口症候群の可能性が高いとされています。頚肋とは胎児のときに存在した肋骨が残ったままになっているもので、これが存在すると、神経や血管がよりいっそう圧迫されやすいといわれています。さらに、首から鎖骨あたりを押すと上肢に広がるような痛みを感じる場合も、胸郭出口症候群の可能性が疑われます。
各種テストには、アドソンテスト、ライトテスト、ルーステスト、エデンテストと呼ばれるものがあります。脈が弱くなる、指の曲げ伸ばしが続けられないなどの場合は胸郭出口症候群の可能性があるといいます。
X線検査では、頚肋の有無や、鎖骨または肋骨の一番上の骨の変形によってその間が狭くなっていないかを確認します。頚肋が存在したり、鎖骨と肋骨の間が狭くなったりしていると、その部分で神経や血管が圧迫されて胸郭出口症候群につながるためです。
以上のような検査によって胸郭出口症候群と診断された場合は、症状に合わせて適切な治療が選択されます。治療内容は主に生活習慣の見直し、リハビリテーション、薬物療法となり、必要に応じて手術が検討されることもあります。
胸郭出口症候群は、上肢や肩、肩甲骨などに痛みやしびれが現れる病気です。しびれや痛みが一過性のものであれば、日常生活で起こり得るしびれ(正座したときに生じるしびれなど)同様で特に問題ありませんが、何度もしびれが現れたり痛みが慢性的になったりした場合は、胸郭出口症候群の可能性も考えられます。放置すると治りにくくなるため、気になる症状がある場合は早めに整形外科医に相談するとよいでしょう。
医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 院長
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