インタビュー

頚椎症性脊髄症の治療—保存的治療

頚椎症性脊髄症の治療—保存的治療
國府田 正雄 先生

筑波大学 医学医療系整形外科 准教授

國府田 正雄 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年08月18日です。

年齢を重ねると、頚椎にはさまざまな変化が起こります。その変化自体は誰にでも起こり得ることで、特に病気ではありません。しかし、頚椎が変化していくと、その近くを通る脊髄に影響を及ぼしさまざまな神経症状を引き起こすことがあります。そのことを「頚椎症性脊髄症」といいます。
頚椎症性脊髄症ではどのような治療を行うのでしょうか。この記事では手術以外の治療について、筑波大学医学医療系整形外科 准教授の國府田正雄先生にお話を伺いました。

頚椎症性脊髄症においては、まず手術をしない保存的治療からスタートします。手術治療の記事で詳しく説明しますが(参考:「頚椎症性脊髄症の手術」)、手術をするかどうか決めるための基準(これも手術治療の記事で紹介しますが、点数を付けて決めます)はあるものの、保存的治療を行う期間などの目安はあまりなく、ケースバイケースです。例えば、手の動きが悪いと仕事にならない方の保存的治療はごく短期間で、早い段階で手術治療をすることもあります。

頚椎を安静にする目的で中心となる治療は、下図に示す頚椎カラーによる外固定です。これだけで、軽度な頚椎症脊髄症は改善することもあります。

薬物療法は主に消炎鎮痛剤(ロキソプロフェンなど)のことを指しますが、これは根本的な治療にはなりません。また、これらはしびれには効果がありません。近年新しく発売されたプレガバリンはしびれに対して効果を発揮することもあります。しかし、手足の動きが悪化したときや運動障害がひどくなったときの薬物療法は基本的に効果がないと考えましょう。

先述した頚椎カラーのことをいいます。よく行われる治療であり、これはエビデンスがあります(確立された治療です)。

頚椎カラー 素材提供:PIXTA

よく行われている「間歇牽引療法(かんけつけんいんりょうほう)」はエビデンスがありません。一方で「持続牽引療法」は実はエビデンスがあります。しかし、持続牽引療法は行っている施設があまり多くないのが現状です。具体的な方法としては入院し、頚椎を安静にしながら2kg程度の力で持続的に牽引を行います。

温熱療法に関しても、根本的な治療にはなりません。電気的な治療も肩こりなどには効果的な場合もありますが、頚椎症性脊髄症の根本的治療にはなりません。

頚椎症性脊髄症を悪化させないための日常生活の注意点について述べていきます。

頚椎症性脊髄症では、脊柱管が狭くなるため脊髄損傷を起こしやすくなります。脊髄損傷を起こすと最悪の場合、全身麻痺になることもあります。
脊髄損傷を防ぐためには外から力がかかるのを防ぐことです。特に危険なのはつまずいて転倒することです。転倒を防止するのは難しい話ではありますが、自身でできることは家の環境整備です。段差はできる限りなくし、物を散らかさずに片付けることも大切です。

それに加え、頸を後ろに反らしてはいけません。日常生活には、頸をぐっと反らしてしまうような場面があります。例えば歯医者、美容院や電球を交換するときなどです。しかし、このように頸をぐっと後ろに反らしてしまうような状態はできるだけ避けましょう。

不安定な頚椎を安定させるために頚椎カラーがあります。頚椎症性脊髄症においては、後屈(前項のように頸を後ろに反らすこと)が悪い影響を及ぼすことが多くなります。頚椎カラーを顎に乗せる前にごく軽度の前屈をすると、症状が楽になることが多くなります。このような注意点に基づき、頚椎カラーをきちんと使うことがリスクを減らすことにつながります。

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