椎体骨の後ろには後縦靭帯という靭帯があります。その靭帯が骨となり、固くなってしまう難病があります。靭帯が骨になると、脊柱管が狭くなります。それにより、頸椎症性脊髄症と同様にさまざまな神経症状が出現します。
頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)とはどのような病気なのでしょうか。筑波大学医学医療系整形外科 准教授の國府田正雄先生にお話を伺いました。
頸椎後縦靱帯骨化症は、下図のように椎体骨の後ろにある後縦靭帯が骨になって脊柱管を圧迫し、さまざまな神経症状が出現する病気です。この頸椎後縦靭帯骨化症を患っている方は何%ほどいるのでしょうか。骨化が見つかる頻度は難病情報センターのホームページによれば日本国民全体の「1.5%から5.1%、平均3%と報告」と記載されています。
しかし、最近の報告では実は10数%程度に骨化があったという報告があります。このデータは外傷などで運ばれてきた方を撮影した頸のCTからとったものです。実は「骨化自体を起こしている方の頻度は多いかもしれないが、その中には症状が出ない方(無症候性)のパターンも多いのではないか」と推測されています。このように、他の理由でレントゲンを撮影したときに偶然見つかるパターンの骨化は特に病的意義がないこともあります。
また、この骨化が全身に出るパターンもあります。
頸椎後縦靭帯骨化症では骨化が問題となりますが、これがなぜ起きるのかという点についてはまだ分かっていません。ただし、これに関しては難病研究班において遺伝との関連が指摘されており、確定はしていないものの、いくつかの関連する可能性のある遺伝子の候補が挙がっています。
また、重症の骨化症になると頸椎後縦靭帯以外にも全身に骨化ができます。BMIが30程度の方に多く、これは骨化で動けなくなったことによって起こるのか、肥満が原因のひとつなのかは分かっていません。その他、糖尿病と合併することが多いことも指摘されています。これも、動けなくなったことによって起こるのか、糖尿病だとなりやすいのかは分かっていません。
つまり、はっきりしたリスク因子についてはまだ分かっておらず、そのためこれといった予防法も現時点ではないのです。
頸椎後縦靭帯骨化症の原因は、頸椎症性脊髄症と同様に脊髄の圧迫であり、神経の症状が現れます。そのため、以下の例のようにさまざまな症状が出現します。
頸椎症性脊髄症と同様に、頸の痛みがあったとしても、これは頸椎後縦靭帯骨化症の大きな特徴というわけではありませんので、ただちに頸椎後縦靭帯骨化症と断定できるわけではない点に注意してください。
また、代表的な初発症状(最初に起こる症状)はありません。さらに、慢性緩徐進行性といって徐々に症状が進んでいくのが特徴です。
ここでもうひとつ注意が必要なのは、「原因」でも触れたように糖尿病の合併率が高いことです。足のしびれが必ずしも糖尿病が原因というわけではないので、しつこいしびれに対しては必ず痛みの原因を検査する必要があります。
骨化してしまうこと自体は現在の医療では治りません。しかし、手術や頸椎カラーをすることで症状をある程度は改善することは可能になります。
筑波大学 医学医療系整形外科 准教授
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