腰部脊柱管狭窄症とは、背骨内部の神経や脊髄の通り道である脊柱管が狭くなることによって、腰痛や下肢の痛みやしびれなどさまざまな症状が現れる病気です。
自然治癒が見込めないため、手術が必要となるケースも多いといわれています。手術方法には、どのようなものがあるのでしょうか。今回は、大室整形外科 脊椎・関節クリニックの中野 恵介先生に、腰部脊柱管狭窄症の手術方法や手術の種類についてお話しいただきました。
しびれなどの神経症状が強く現れている場合には、手術の可能性を考慮します。また、近年では、70〜80歳代などの高齢の患者さんであっても、お元気で、旅行やスポーツなどを楽しまれる方もいらっしゃいます。
いつまでも自分の足で歩きたいと望まれる方は多いので、積極的に手術をすることを望まれる方もいます。実際に、70〜80歳代であっても手術するケースも増えてきています。
脊柱管狭窄症の患者さんの中でも、頻尿などの膀胱直腸障害や麻痺症状が現れている場合には、緊急手術になる場合もあります。
脊柱管狭窄症の手術には、除圧術と固定術があります。除圧術とは、切開をして骨を取り除き脊柱管を広げる方法です。従来法の手術では、後方から部分的に骨を切除したり厚くなった靭帯を切除したりすることで、神経の圧迫を取り除きます。椎間板ヘルニアを合併しているような場合には、併せてヘルニアも取り除きます。
一方、固定術は、脊柱管を広げることに加え、脊椎間の不安定さをなくす目的で金属・ボルトを用いて固定する方法です。どちらの方法であっても、内視鏡を用いたり、顕微鏡を使用したりして、患者さんにとって負担の少ない低侵襲な手術を行う場合があります。
手術には、手術用顕微鏡を用いる方法、内視鏡を用いる方法の2種類があります。内視鏡か顕微鏡のどちらを選択するかは、患者さんの状態やご希望などを考慮したうえで決定されます。除圧術では筋肉切開は行わず、約2cmの皮膚切開のみで、神経を圧迫している骨の一部と靭帯を切除していきます。なお、3か所以上の病変に対しては顕微鏡による手術の適応となります。
近年では、固定術の中でも、骨を削る必要のないXLIF(エックスリフ)やOLIF(オーリフ)と呼ばれる手技も登場しています。側腹部からのわずかな傷で手術を行うことができる負担の少ない手術であることが特徴です。
脊柱管狭窄症の手術では、腸管や血管、神経の損傷が起こる可能性があります。特に、固定術は除圧法と比べるとリスクが高くなるといわれています。
脊柱管狭窄症の手術のための入院期間は、除圧術であれば、一般的に約1週間、固定術であれば約2週間になります。
術後、しびれが残ることもありますが、痛みを感じることは少ないでしょう。また、記事3『腰椎椎間板ヘルニアの手術-手術後の生活で気をつけるべきこととは?』でお話ししたように、低侵襲手術であれば、傷が小さいために手術による痛みを感じることも少ないです。
腰部脊柱管狭窄症は、高齢の患者さんが多いために、ほかの病気が見つかることもあります。たとえば、脊柱管狭窄症の手術後に、痛みやしびれが生じて、再発かと思ったらがんの転移だったということもありえます。
同じような症状を現す違う病気の可能性もあるので、術後少なくても半年に一度は受診していただき、また、治療後も2〜3年は経過観察を行うとよいでしょう。
腰部脊柱管狭窄症は、高齢で発症することが多いため、患者さんの中には、さまざまな合併症をかかえる方もいらっしゃいます。腰部脊柱管狭窄症は、健康寿命を短くする危険性があります。私は、この病気によって寝たきりになるような方を少しでも減らしたいと願っています。
近年では、より負担の少ない低侵襲手術も登場しており、負担が少なく早期の社会復帰を期待できるものもあります。下肢のしびれなどの症状が現れた場合には、早期の受診、そして治療によって健康寿命を延ばしていただきたいと思っています。
医療法人社団 大室整形外科 脊椎・関節クリニック 院長
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