脊髄腫瘍とは背骨の中にある脊髄(中枢神経)の通り道“脊柱管”に生じる腫瘍の総称です。腫瘍が脊髄を圧迫することによってさまざまな症状が現れます。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)があり、それぞれに症状の進行速度などが異なります。発生頻度は年間10万人に1~2人程度といわれ、比較的珍しい病気といえます。
脊髄腫瘍の治療では、基本的に手術治療が検討されることが一般的です。このページでは、脊髄腫瘍の手術方法や手術治療の注意点、適応となる方の特徴などについてご紹介します。
脊髄腫瘍では腫瘍の切除が可能である限り、手術治療が検討されることが一般的です。特に腫瘍が脊髄を圧迫することによる痛みやしびれなどの症状がすでに現れている方の場合、治療時期が遅れてしまうと治療をしても元の状態に戻らなくなる可能性があるため、速やかな治療が必要となることもあります。
脊髄腫瘍には、前述のとおり良性腫瘍・悪性腫瘍といった分類があるほか、腫瘍が脊髄の外で発生しているのか、脊髄の中に発生しているのかによって分類が異なります。
腫瘍が脊髄を覆う髄膜の外に発生する“硬膜外腫瘍”や、脊髄と髄膜の間に発生している“硬膜内髄外腫瘍”の場合、比較的容易に腫瘍を取り除けることが一般的です。一方で、腫瘍が脊髄の中に生じる“髄内腫瘍”の場合、腫瘍が脊髄の中に埋まっている状態のため、手術の際には神経に傷を付けないよう、よりいっそう注意深く治療を行う必要があります。
髄内腫瘍のうち、成人での発症でもっとも多いとされる“上衣腫”の場合は、腫瘍の上下に高確率でのう胞(空洞)を合併することが多いです。腫瘍と脊髄の境界は明瞭で 通常は全摘出ができるといわれています。残存した場合には放射線を照射することが一般的です。また、小児でもっとも多い “星細胞腫”では、腫瘍との境界が不明瞭で 偏在性を持っています。この場合、全摘出は難しく、また悪性のものも多いといわれています。
脊髄腫瘍の手術治療では、腫瘍を切除することにより症状の改善を期待できる一方、術中・術後の出血や脊髄・神経の損傷、髄液の漏れなど、さまざまな合併症が生じる恐れがあります。治療によって生じ得る合併症は、病気の進行度合いや発生部位、種類などによっても異なるため、手術を受ける前に担当医師にしっかり説明を受けるようにしましょう。
脊髄腫瘍の治療方法は、腫瘍の大きさや広がり、症状、患者の年齢や希望など、さまざまなことを考慮して検討されます。すでに症状があり、手術で腫瘍の摘出が可能と判断された場合には、基本的に手術治療が検討されることが一般的です。
脊髄腫瘍では、放射線治療や抗がん剤による化学療法などが検討されることもあります。たとえば、ほかのがんが転移したことによって生じた脊髄腫瘍では、手術を行わずに放射線治療や化学療法を検討することがあります。また、手術では摘出が困難な腫瘍に対して放射線治療が検討されたり、腫瘍の種類に応じて化学療法が検討されたりすることもあります。そのほか、腫瘍の種類によって手術後に放射線治療や化学療法が併用されることもあります。
近年はMRI検査やCT検査などの画像検査によって、無症状のうちに脊髄腫瘍が見つかることもあります。このようなケースでは、良性腫瘍であることが分かれば、積極的な治療を行わず経過観察が検討されます。時間の経過とともに腫瘍が大きくなったり、症状が現れたりした場合には、その時点で何らかの治療が検討されます。
また症状が軽く進行が遅い、高齢で手術に負担がかかるなどの事情がある場合も、経過観察が検討されることがあります。
脊髄腫瘍は病気の進行度合いや種類、患者の状態、希望などによって治療方針が異なります。そのため、治療を受ける際は自身の状態について詳しく説明を受け、担当医師とよく相談して治療方針を決定することが大切です。病気や治療について分からないことや不安なことがあれば、医師に相談しましょう。
札幌麻生脳神経外科病院 病院長
札幌麻生脳神経外科病院 病院長
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
1981年に北海道大学医学部医学科医学専門課程卒業後、北海道大学医学部附属病院医員として脳神経外科において脳神経外科学についての研究に従事する。1988年からはカリフォルニア大学デイビス校へ客員研究員として留学し、生体NMRスペクトロスコピーの研究に打ち込んだ。帰国後、北海道大学医学部研究生として北大脳神経外科教室にて脊髄・脊椎疾患についての研究に取り組んだのち、1991年に北海道大学医学部附属病院助手、2000年に北海道大学医学部講師をつとめ、助教授、准教授、診療教授を経て、2013年からは札幌麻生脳神経外科病院の病院長に就任した。
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