頭痛は、私たちにとって身近な病態の1つです。しかし、なかには、くも膜下出血や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫など、放っておくと命に関わるような病気が原因で生じる頭痛もあります。重症化を防ぐためには、これらの病気の早期発見が大切です。
今回は、国立国際医療研究センター病院 脳神経外科の原 徹男先生に、頭痛に隠された重症化しやすい病気を早期発見するための受診のタイミングや、早期発見のために受けるべき検査について、お話しいただきました。
頭痛の原因となる病気の1つであるくも膜下出血*では、突然、強い痛みを生じます。そのため、これまで経験したことのないような急激な痛みがあれば、受診していただきたいと思います。
自分で受診することができるようであれば、脳神経外科を受診し、検査を受けて原因を特定することが重要です。意識障害や、強い痛みによって自分で受診することができない状態であれば、救急車を呼んでいただきたいと思います。現実的には、くも膜下出血を発症した場合、救急車で搬送されることがほとんどです。
*くも膜下出血:くも膜下腔に出血が起こる病気であり、脳動脈の一部がコブ状に膨らんだ脳動脈瘤の破裂によって生じることが多い。
脳腫瘍や慢性硬膜下血腫*によって生じる頭痛のように、慢性的に継続する頭痛が現れている場合にも受診していただきたいと思います。頭痛がどれくらいの期間継続したときに受診すればよいのかを明確にお伝えすることは難しいですが、徐々に悪化していくなど、いつもと違う慢性的な頭痛があれば、早めに脳神経外科や脳神経内科、総合診療科などを受診していただきたいと思います。
CTやMRIなどによる画像診断を受けることができれば、原因が特定されるケースも多いので、可能であれば神経系を専門とする医師がいるクリニックを受診してください。
また、頭痛とともに、手足のしびれなどほかの症状を伴っているような場合には、それがきっかけで別の病気が発見されるケースもあります。そのため、頭痛に伴って現れている症状がある場合には、医師へ正確に伝えていただくことが病気の早期発見につながるでしょう。
*慢性硬膜下血腫:軽い頭部打撲などをきっかけに脳を覆っている硬膜と脳の間に徐々に血液がたまっていき、頭痛や認知機能の低下などさまざまな症状が現れる病気。
くも膜下出血の多くは脳動脈瘤*の破裂によって起こります。そのため、くも膜下出血を未然に防ぐために未破裂の脳動脈瘤を発見し治療することもあります。脳動脈瘤はMRA**やCTA***によって診断が可能であるため、これらの検査が早期発見につながります。
*脳動脈瘤:脳動脈の一部がコブ状になった状態であり、破裂するとくも膜下出血が起こる。
**MRA:MRI装置を使用して行う血管撮影の検査。
***CTA:CT装置を使用して行う血管撮影の検査。
脳腫瘍による頭痛は、徐々に痛みが強くなっていきます。さらに、以下のような症状を伴う場合には、脳腫瘍の可能性が高いため注意が必要です。
〈脳腫瘍で現れる主な症状〉
など
また、腫瘍が生じた脳の部位によっては、性格が変化してしまうこともあります。そのため、ご家族など身近な方から“性格が変わってきている”などという理由で受診にいたるケースもあります。
この場合も、CTやMRIを用いた画像検査が診断として有用です。
慢性硬膜下血腫では、頭痛とともに手足の麻痺や、認知機能の低下に伴う症状が現れます。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。
〈慢性硬膜下血腫で現れる主な認知機能低下の症状〉
など
慢性硬膜下血腫はCTによる診断が容易であるため、上記の症状があれば受診していただくことをおすすめします。
また、慢性硬膜下血腫は頭部の打撲がきっかけで発症することが多いため、数か月以内に頭をぶつけた覚えがあるかどうか、記憶をたどることも有効であると思います。
慢性硬膜下血腫は、自然に改善することはほとんどありませんが、治療による改善が可能です。局所麻酔で100円玉くらいの小さな穴をあけ、脳を覆っている硬膜と脳の間にたまった血液を洗い流す治療が基本となります。しかし、発症から時間が経過しているなどの理由で重症化している場合には、脳の内部が石灰化してしまい、開頭による手術が必要となるケースもあります。
このような重症化を防ぐためにも、気になる症状があれば早期発見による治療が大切であるといえます。
“頭痛”は身近な病態ですが、命に関わる重症化しやすい病気が隠れている場合もあります。
慢性的な痛みが継続することの多い脳腫瘍や慢性硬膜下血腫の場合には、単なる頭痛と間違えやすいことが考えられます。しかし、放っておくことで重症化する可能性があるため、頭痛が長引く場合や、徐々に悪化していくような場合には、ぜひ一度医療機関を受診していただきたいと思います。
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 元副院長・元脳卒中センター長・非常勤、順天堂大学大学院 医学研究科客員教授
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